健康長寿学:WIZ-DOG

イヌと長く豊かな時間を共有するためには、ヒトもイヌも健康長寿であることが必須です。 W…

健康長寿学:WIZ-DOG

イヌと長く豊かな時間を共有するためには、ヒトもイヌも健康長寿であることが必須です。 WIZ-DOGは、イヌたちが健康で長生きできるためにヒトができることを追究してまいります。

最近の記事

26.視覚と運動能

ヒトもイヌも、加齢とともに眼や耳、鼻など感覚器の機能が衰えてきます。感覚器の機能の衰えは運動能の低下につながると思います。 今回は、わたしの愛犬の視覚と運動能について書きます。科学的なエビデンスは一切なく、他のイヌのケースを検証したわけでもない、私の観察と憶測に基づく浮草のようなお話しであることを、事前にお断りしておきます。 愛犬が15歳過ぎたころ、車での移動中に眼をパチパチとする眼瞼けいれんのような症状が出始め、その後右眼の目やにがひどくなってきました。検査したところ、

    • 25.意欲を保つ大切さ

      私たちが、イヌの運動機能の維持対策として有効に利用できると考えているのが「リハビリテーション」です。通常、リハビリテーションは棄損した健康を回復する目的で施されるものですが、それは、加齢に伴って衰えている機能を維持するためにも大いに参考になります。 健康長寿というと、身体リハビリテーションの知見を利用して、カラダの健康、つまり運動機能/身体機能を維持することがまず頭に浮かぶのですが、私たちは、思考力や記憶力、注意力、意欲といった精神機能を維持することもきわめて大切だと考えて

      • 24.不老の研究

        現在、世界中の各国で「不老」の研究が活発に行われています。 「老いる」という現象は、細胞分裂しなくなった「老化細胞」がカギを握っています。この「老化細胞」が除去されないことが老化問題の根源だと。 以下引用です。 「老化細胞」というのは、細胞分裂せず増殖をやめてしまった細胞のことです。その老化細胞が、死ぬことなく生き延びていることで、私たちの肉体はさまざまな形で老化していくということがわかってきました。この老化細胞を生き延びさせている酵素(GLS-1酵素)をブロックするこ

        • 23.たばことがん

          ずいぶん昔の話ですが、とある獣医から、「飼い主がたばこを吸っていると、イヌがメラノーマになる」と聞かされたことがあります。当時、メラノーマという病気の名前さえ知りませんでしたが、なぜかそのフレーズだけはずっと頭の隅っこにこびりついていました。メラノーマというのは皮膚や粘膜にできるがんの一種です。 ここ2,3年の間に知り合いのイヌが、どちらもラブラドールですが、鼻の奥にできたメラノーマで亡くなりました。2頭の飼い主はどちらも愛煙家でした。 ヒトもイヌも、鼻の奥に「嗅上皮(き

        26.視覚と運動能

          22.高齢犬の後肢機能強化

          今、WIZ-DOGで「老犬の後肢は鍛えられるのか?」と題した実験を行っています。開始したのは2023年10月、今月12月半ばに会社のインスタで結果を発表する予定です。 開始時年月齢13歳7カ月のキャバリアと15歳5か月のゴールデンレトリーバーが被験犬となっています。2頭ともスタッフの愛犬で、普通に歩き、普通に走り、食欲旺盛で元気いっぱいのイヌです。 実験内容は下記の通りです。 ① 散歩中に階段を上らせる。 ② ホエイプロテインを与える。 ③ 毎日の散歩では連続して歩かせる

          22.高齢犬の後肢機能強化

          21.給餌法の注意点

          「17.健康長寿をもたらす栄養」の回で、イヌの栄養については、必要な栄養素を過不足なく与えつづけることおよび健康を損なうおそれのある添加成分の給与を避けることが、必要であると書きました。 今回は栄養素ではなく、給餌の方法に焦点をおいて、イヌの食事で気をつけたいことを書きます。 まず重要なことは、食べさせること。食べないことには健康を維持できませんが、食の細いイヌに手こずっている飼い主は案外多いようです。 イヌもヒト同様、脳(間脳)にある視床下部でお腹が空いたか満腹になった

          21.給餌法の注意点

          20.病は気から

          気持ちを強く持てたから、快刺激のシャワーを浴びたから、だから病気が治る……冷たい話ですけど、カラダの異変はそう簡単に正常に戻るものではないでしょう。でも、気持ちが病気に影響を与えることは当然あるのだろうと考えています。 最近は脳科学分野でいろいろなことが解明され、「恐怖」「怒り」「悲しみ」「幸せ」「驚き」「嫌悪」といった6つの感情は、脳の中の神経伝達物質の種類と量、およびその滞留場所それにその物質に惹起される電位が決めるものだということがわかってきました。また、記憶も、実は

          19.コグニサイズ(ながら運動)

          イヌにも認知症が確認されていて、高齢犬の介護において、しばしば、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)同様、大きな問題となります。 理学療法で、同時に行わせる二つの作業を「デュアルタスク(二重課題)」と言い、頭を使う作業を「認知課題」、カラダを使う作業を「運動課題」と言います。この認知課題と運動課題を同時に行わせるデュアルタスク・トレーニングを「コグニサイズ」と言います。「cognition(認知)」と「exercise(運動)」を合体させた造語で、「国立研究開発法人国立

          19.コグニサイズ(ながら運動)

          18.廃用症候群

          イヌも歳をとると、ヒトと同じで、どうしても活動量が減ります。「動かないと動けなくなる」のは、これまたヒトも犬も同じですので、高齢となった愛犬をどう動かしてやるのがいいのか、これは飼い主の悩みのタネになります。 不活動によるカラダの機能低下現象のことを廃用症候群と言います。 骨は適度な圧が加えられないと、骨芽細胞が活性化せず、どんどん骨密度が下がってきます。 筋肉は動かさないと細胞外基質の保水成分などが減ってしまい、残ったコラーゲン線維が近接して癒着してしまいます。コラー

          17.健康長寿をもたらす栄養

          20年ほど前から犬の栄養について学びと思考を重ねてきました。その間、多くの「もっともらしい知見や意見」に惑わされ続けてきましたが、何となく見えてきたことがあります。 手作り食だろうが市販のドライフードだろうが、その違いそのものがイヌの寿命に影響を与えるという科学的な実証データは存在しないのだろう、ということ。 特定の栄養素の摂取不足もしくは過剰摂取あるいは特定の添加成分の継続摂取はイヌの寿命に大きく影響する可能性が高いのだろう、ということ。 棄損した健康を回復させる「薬

          17.健康長寿をもたらす栄養

          16.中枢神経の促通

          以前、イヌの再歩行リハビリテーション事業を生業としていた頃、後肢が動かないイヌの神経促通について特殊な運動療法を試行したことがあります。結果、時の経過とともに動かなかった後肢が動くようになったケースが数件ありました。もちろん、どのケースにおいても、脊髄の神経促通機能が一部残っていたのか完全に喪失していたのか、などはっきり検査していたわけではありませんので、私たちのリハビリで中枢神経の完全喪失症状が回復した、などと断言するつもりはありません。ただ、運動療法などを施す努力をしたと

          16.中枢神経の促通

          15.バランス運動

          イヌの再歩行リハビリテーションでは、立てるようになったら、プロプリオセプティブトレーニングを兼ねたバランス運動を行います。さまざまな方向からの圧に対して自分の肢で踏ん張れるようにすることを目的とする運動で、その後、踏ん張れるようになってから、四肢の協調性を伴った本格的な歩行訓練に入ります(協調性の記憶を取り戻す他動的運動は立位保持運動と並行して行います)。 今回はそのバランス運動のお話です。 感覚神経からの信号を受け取ったプロプリオセプター(固有受容感覚器)というセンサー

          14.アミノ酸サプリメント

          WDA(WIZ-DOG ACADEMY)が行っているWIZ-DOG LABOでは、老犬の後肢機能の維持プロジェクトを実施していて、その中でたんぱく質合成のためのサプリメント2種類を試しています。 以前も書きましたが、基本的にイヌの健康維持にサプリメントは必要ないと考えてはいるものの、高齢犬になったらたんぱく質を合成する細胞の力も衰えてくるのではないか、との強迫観念から、サプリメントの加勢に期待しているものです。 プロジェクトで使用しているアミノ酸サプリメントは「明日も走ろ

          14.アミノ酸サプリメント

          13.骨のトレーニング

          今回は骨のトレーニングです。 骨のトレーニングとは、ひとえに「骨密度を高める」トレーニングです。 骨はコラーゲンの土台にカルシウムやマグネシウム、リンといったミネラルが付着してできあがります。土台となるコラーゲンは食事で摂取するたんぱく質が体内で分解・再合成されてできあがりますので、材料となるたんぱく質やミネラルを経口摂取することが必要です。また、いくらたんぱく質やミネラルを摂取したところで、それが骨形成につながるためには、ビタミンや各種ミネラルなど触媒となる栄養成分やホ

          13.骨のトレーニング

          12.筋肉のトレーニング

          今回は、カラダの重要な運動器パーツである「筋肉」を強くする方法について書きます。 筋肉の鍛え方には大きく分けて2つの道筋があります。1つは筋力を増強させるトレーニング、もう一つは筋持久力を増強させるトレーニング。速筋線維と呼ばれる大きな力を発揮する筋線維が多い白筋(速筋)を太くするトレーニングが筋力強化トレーニングで、遅筋線維と呼ばれる持久力をもたらす筋線維が多い赤筋(遅筋)周辺の毛細血管を増やすトレーニングが筋持久力強化トレーニングです。 まずは筋力を強化/維持するため

          12.筋肉のトレーニング

          11.運動の重要性

          免疫学を学ぶことも栄養学を学ぶことも、イヌの健康長寿を考える上での必要条件ではあります。しかし、WDA(WIZ-DOG ACADEMY)が考える、健康寿命を延ばすためにもっとも重要な条件は「運動」だと考えています。 健康維持に寄与する食材あるは健康を毀損する食材は諸々あれど、それらの食材を摂取すればあるいは摂取しなければ健康が維持できる、というわけではありません。必要な栄養素を必要なだけ摂取することはきわめて重要なことではありますが、運動の重要性を軽視していては健康を維持す