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『スカーレット』でたこ焼きを作りたかったことを思い出した

 4月の最初の週の話。新しい朝ドラ『エール』が始まってるのに前作『スカーレット』の録画が溜まっていたので急いで最終回まで観た結果、たこ焼き器を買ってたこ焼きを食べました。
 スカーレットとたこ焼き器の間に「風が吹けば桶屋が儲かる」的な面白い連鎖反応があったわけではなく、ドラマの中で家庭用たこ焼き器が出てきたからです。関係ないけど「風が吹けば」から「桶屋が儲かる」に繋がる物語には現代社会から見たらなかなかの偏見と不道徳が詰まってると思う。それはさておきたこやき。

 ドラマの中では主人公(戸田恵梨香)の息子(伊藤健太郎)が一人暮らしのアパートに女の子(松田るか)を連れ込んで、というか女の子のほうが積極的に、ウチ信楽一たこ焼き焼くの上手やねん!みたいなことを言って押し掛けるんだけどいざ焼かせてみたらド下手でぐちゃぐちゃになってしまい、そこへタイミングよく(悪く?)現れた戸田恵梨香がまんまるのきれいなたこ焼きを焼く、というシーンがありました。信楽一上手だと豪語したのは家に上がる口実だったんだろうけど、それにしても練習してきた様子もなく下手なのがバレても一切動揺せずに開き直って笑う女の子が可愛かった。それはさておきたこやき。

 不要不急の外出は自粛せよとの命令、もとい要請が出されたのだから家の中を充実させるべし。という旗印のもと、たこ焼き器を買おうと妻に提案すると、前に私が欲しがったときは却下したのにどういう風の吹き回しかと驚かれたので、こっちこそ驚いた。なにしろドラマの中のたこ焼き器を見て、そうだった俺はたこ焼き器が欲しかったんだ!と思い出したつもりでいたから。ずっと欲しかったのに、なんで忘れてたんだ!と。どうやら無かったことを思い出していたらしい。それはさておきたこやきき。たこ焼き器。

 早速たこ焼き器をネットで購入したとツイッターに投稿したら、友人からリプライが来ました。曰く、たこ焼き器を処分したのを忘れたまま材料の準備をしてしまい、夜にイオンまで買いに行ったことがあるのだそう。たこ焼きに関して、彼が思い出したこと。
 電気のが売り切れだったからカセットコンロで焼けばいいやと鉄板タイプを買って帰ったら家にガスボンベが無くて恋人からぶーぶー言われながらキッチンで二人並んでたこ焼きを焼く、みたいなシーンを勝手に妄想してリプライを返したら、職業病だと言われました。
「小説を書くというのは、起こらなかったことを思い出すこと」という小説家シリ・ハストヴェットさんの言葉を今年知ったばかりなので、友人のありもしない思い出を作り出したことや、たこ焼き器を欲しがっていたという無かった感情を思い出したことは物書きとして合格かも、などと思ってみたけれど、そういうことじゃないな。

 たこ焼きは美味しく焼けました。

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