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【ミクロ-14:不動産鑑定士試験のための経済学】 外部不経済と部分均衡分析 をわかりやすく(余剰分析)


1. 外部不経済

外部不経済とは、ある経済主体の行動が他の経済主体に対して悪影響を及ぼす場合に発生する現象を指します。具体的には、ある企業や個人の生産・消費活動により、他の企業や個人に不利益が生じる場合に言われます。
外部不経済は主に金銭的外部不経済と技術的外部不経済の2つに分類されます。それぞれの特徴と違いについて詳しく見ていきましょう。

1.1. 金銭的外部不経済とは

金銭的外部不経済は、ある経済主体の行動が市場を経由して他の経済主体に影響を及ぼす現象を指します。例えば、ある企業が製品を大量に生産し、その結果市場価格が低下する場合、他の企業にとっては不利益となります。
このような市場価格の変動は、経済の効率性に影響を与える可能性があります。特に、価格が真の生産コストを反映していない場合、リソースの適切な配分が妨げられることがあります。

1.2. 技術的外部不経済とは

技術的外部不経済は、ある経済主体の行動が市場を経由して他の経済主体に影響を及ぼす現象を指します。具体的には、公害の発生や資源の過度な消費などがこれに該当します。
このような技術的外部不経済は、社会全体の福祉を低下させる可能性があるため、適切な対策や制度の整備が求められます。公害対策や環境保護法など、政府が介入して解決を図るケースも多いです。

2. 個人間の外部不経済

個人間の外部不経済とは、ある個人の行動が他の個人に対して悪影響を及ぼす場合に発生する現象を指します。この場合も、金銭的または技術的な影響が考えられます。
個人間の外部不経済を理解するためには、余剰分析やコースの定理について知ることが重要です。これにより、外部不経済が社会全体に及ぼす影響を詳しく学ぶことができます。

2.1. 余剰分析

外部不経済が発生すると、それが市場の効率性にどのような影響を与えるのかを理解するために、余剰分析が用いられます。具体的には、消費者余剰や生産者余剰がどのように変化するかを評価することで、外部不経済の影響を明らかにすることができます。
この余剰分析を用いることで、外部不経済の影響によって権利がどの主体に与えられるかによって、どのような結果が生じるのかを具体的に把握することができます。

2.1.1. 個人Aに権利が与えられる場合

個人Aに権利が与えられる場合、個人Aはその権利を持って行動することができます。この結果、個人Bがその影響を受けることとなり、個人Bは個人Aに対して補償金を支払うことでその影響を取り除くか、または和らげることを求めるでしょう。
この時の補償金の範囲は、個人Bが受ける不利益の程度や、どれだけその影響を和らげたいかによって決まります。

2.1.2. 個人Bに権利が与えられる場合

一方、個人Bに権利が与えられる場合、個人Aはその影響を避けるために、個人Bに対して補償金を支払うことを求めるかもしれません。
この場合の補償金の範囲も、個人Aが受ける不利益の程度や、どれだけその影響を和らげたいかによって決まります。

2.2. コースの定理

コースの定理は、外部不経済や外部経済の問題において、私的取引が最適な資源の配分を達成できるという考えを提唱しています。この考え方は、市場の効率性や外部不経済を矯正する方法についての議論に影響を与えてきました。特に、外部不経済の問題を解決するための政策手段や取引の形成に関して、多くの研究や議論がなされてきました。

2.2.1. コースの定理とは

コースの定理は、経済学者ロナルド・コースによって提唱されたもので、外部不経済の存在下でも、政府の介入を必要とせず、市場の効率性が確保されるというものです。
具体的には、外部不経済の発生原因が所有権の不確定性や取引コストの存在にあるとし、これらの障壁が取り除かれれば、当事者間の交渉によって最適な資源の配分が可能となるという考え方です。

2.2.2. コースの定理の成立要件

コースの定理が成立するための主要な要件は二つです。一つは、取引コストがゼロであること。これにより、所有権の移転や交渉が円滑に行われることが保証されます。
もう一つは、私的所有権が明確に確立されていること。これにより、各経済主体が自らの利益を最大化する行動を取ることができ、市場の効率性が確保されます。

3. 企業が引き起こす外部不経済

企業活動に伴う外部不経済は、公害や資源の過度な利用など、社会全体に影響を及ぼす場合が多いです。このような外部不経済が発生する場合、市場の効率性が損なわれる可能性があります。
企業が引き起こす外部不経済に対する対策として、政府の規制や税制の導入が考えられます。特に、ピグー的課税は、外部不経済を矯正するための有効な手段として知られています。

3.1. 課税前の余剰分析

外部不経済の存在下での余剰分析は、市場の効率性や福祉の評価において重要な役割を果たします。外部不経済が存在する場合、消費者余剰や生産者余剰、社会的総余剰が変動する可能性があります。
これらの余剰の変動を通じて、外部不経済の影響を具体的に把握することができます。また、死荷重の発生や過剰供給の問題も考察することができます。

3.1.1. 課税前の消費者余剰

外部不経済の存在下での消費者余剰は、通常よりも低下することが考えられます。これは、外部不経済により商品やサービスの実際のコストが市場価格を上回るためです。
消費者は、外部不経済の存在を考慮せずに購入判断を行うため、過剰な消費が生じる可能性があります。この結果、消費者の福祉が損なわれることが考えられます。

3.1.2. 課税前の生産者余剰

外部不経済の存在下での生産者余剰も、通常よりも低下することが考えられます。生産者は外部不経済のコストを考慮せずに生産を続けるため、社会的なコストが生産者の収益を上回る可能性があります。
これにより、生産者の利益が減少するとともに、市場の効率性も損なわれることが考えられます。

3.1.3. 課税前の社会的総余剰

外部不経済の存在下での社会的総余剰は、消費者余剰と生産者余剰の和からを外部不経済による損失を控除して計算します。外部不経済の影響を受け、社会的総余剰は低下します。
特に、外部不経済のコストが大きい場合、社会全体の福祉が大きく損なわれることが考えられます。このような状況を改善するためには、適切な政策対策が必要となります。

3.1.4. 死荷重の発生と過剰供給

外部不経済の存在下では、死荷重という市場の非効率が発生する可能性があります。死荷重は、市場の効率的な均衡点と実際の均衡点との間に生じる損失を指します。
外部不経済が原因で商品の価格が歪むと、供給量と需要量のバランスが崩れることが考えられます。この結果、過剰供給が発生し、市場の効率性が低下します。

3.2. ピグー的課税と余剰分析

ピグー的課税とは、外部不経済を矯正するための政策手段の一つです。外部不経済のコストを反映するように税金を課すことで、市場の効率性を回復させることを目的としています。ピグー税は、社会的に最適な供給量における限界損失と一致するように課されます。
この課税を導入することで、消費者余剰や生産者余剰、社会的総余剰の変動が生じます。これらの余剰の変動を通じて、ピグー的課税の効果を評価することができます。

3.2.1. ピグー税とは

ピグー税は、イギリスの経済学者アーサー・ピグーに由来する税制の一つです。外部不経済に関連する商品やサービスに特定の税金を課すことで、その商品の価格を真の社会的コストに近づけることを目的としています。
この税制を導入することで、外部不経済の影響を受ける市場の非効率性を矯正することが期待されます。具体的には、公害や資源の過度な利用などの問題を解消することを目指しています。

3.2.2. 課税後の消費者余剰

ピグー税の導入により、商品の価格が上昇することが考えられます。この結果、消費者の購入量が減少し、消費者余剰も低下する可能性があります。
しかし、この価格上昇は外部不経済のコストを反映したものであるため、市場の効率性は向上します。消費者は、真の社会的コストを考慮した価格で商品を購入することとなります。

3.2.3. 課税後の生産者余剰

ピグー税の導入により、生産者は税金の負担を受けることとなります。これにより、生産量が減少し、生産者余剰も低下する可能性があります。
しかし、この税制の目的は外部不経済の矯正であるため、市場の効率性の向上を目指しています。生産者も真の社会的コストを考慮した価格で商品を提供することとなります。

3.2.4. 課税後の社会的総余剰

社会的総余剰は、消費者余剰と生産者余剰の和からを外部不経済による損失を控除して税収を加算して計算します。ピグー税の導入により、社会的総余剰の観点からは最適な資源配分を実現することができます。
外部不経済の影響を受けた非効率な均衡から、効率的な均衡へと移行することで、社会全体の福祉が向上します。このように、ピグー的課税は外部不経済の矯正を通じて市場の効率性を回復させる効果が期待されます。

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