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【ミクロ-13:不動産鑑定士試験のための経済学】 費用逓減産業 をわかりやすく(余剰分析)


1. 参入障壁とは

参入障壁とは、新たな企業や製品が市場に参入する際に乗り越えなければならない障害や困難な点を指します。例えば、高い設備投資、特許や規制、既存企業との競争力などが参入障壁とされます。このような障壁が高い場合、新規参入が困難になり、市場の競争が低下する可能性があります。
参入障壁が低いと、新しい企業が簡単に市場に参入できるため、競争が活発になります。これは消費者にとっては良いことであり、多様な選択肢と価格競争による利点が生まれます。しかし、参入障壁が高い産業では、少数の企業が市場を支配することになり、その結果として価格が高くなることが多いです。

2. 規模の経済性

2.1. 規模の経済性とは

規模の経済性とは、企業が大きくなるにつれて、単位あたりのコストが低下する現象を指します。具体的には、大量生産によって生産コストが削減されたり、広告や研究開発費用を多くの製品で分散させることができます。
この規模の経済性が顕著な場合、大企業は小企業よりも有利な立場になります。なぜなら、大企業は低コストで製品を提供できるからです。このため、規模の経済性が強い産業では、大企業が市場を支配する傾向があります。

2.2. 自然独占の発生過程

自然独占とは、規模の経済性が非常に強いために、1つまたは少数の企業が市場を支配する状態を指します。たとえば、公共交通やエネルギー供給などは自然独占が一般的です。
自然独占が発生すると、新規参入が非常に困難になります。なぜなら、既存の大企業が低コストでサービスや製品を提供しているため、新規参入企業が競争するスペースが少なくなるからです。このような場合、規制による介入が考えられることが多いです。

3. 費用逓減産業

3.1. 費用逓減産業とは

費用逓減産業とは、生産量が増加するにつれて平均費用が逓減する産業を指します。具体的には、一定以上の規模になると、追加の生産量にかかる費用が次第に減少する状態です。
この現象は、特に大規模なインフラ、研究開発、または製造設備が必要な産業で見られます。費用逓減産業では、大企業が有利とされるため、自然独占が発生しやすいです。

3.2. 費用逓減産業のグラフ

費用逓減産業のグラフでは、生産量(X軸)と平均費用(Y軸)をプロットします。このグラフで、生産量が増加するにつれて平均費用が減少する傾向が明確に見られます。
このようなグラフは、企業や政策立案者にとって重要な指標となります。なぜなら、平均費用が低下するポイントを把握することで、最も効率的な生産量や規模を判断するための情報が得られるからです。

4. 限界費用価格形成原理

4.1. 価格形成の必要性

自然独占や費用逓減産業では、市場の独占的な性質により、適切な価格が形成されにくいことがあります。この結果、過少供給や価格の上昇といった問題が生じる可能性があります。このような市場の歪みを解消するため、政府の介入が必要となる場合があります。価格形成の正確さは、消費者への適正なサービス提供や企業の持続可能性に直結するため、非常に重要です。

4.2. 余剰分析

限界費用価格形成原理を用いると、消費者余剰が最大化される可能性が高くなります。このとき、価格が限界費用と等しくなるため、生産者余剰はゼロとなります。図形的に考えると、供給曲線(限界費用曲線)と需要曲線が交差する点が価格となり、その上の部分が消費者余剰、下の部分が生産者余剰となるわけですが、この場合生産者余剰は0となります。

4.3. 限界費用価格形成原理のメリット

限界費用価格形成原理の最大のメリットは、市場が効率的に機能することです。供給と需要が適切にマッチし、最適な資源配分が実現されます。この原理を適用することで、消費者にとっても有利な価格が設定されやすく、生産者にとっても適切な利益を確保できる可能性が高まります。

4.4. 限界費用価格形成原理のデメリット

限界費用価格形成原理の主なデメリットとして、価格が平均費用を下回る場合、独占企業が赤字を出すリスクがあることが挙げられます。この赤字が継続的である場合、独占企業が市場から撤退してしまう可能性があります。また、限界費用の正確な測定は実際のビジネスシーンでは非常に困難であるとも言われています。

5. 平均費用価格形成原理

5.1. 余剰分析

平均費用価格形成原理に基づく価格設定では、消費者余剰と生産者余剰の双方が存在します。図形的には、供給曲線(平均費用曲線)と需要曲線が交差する点が価格となり、その上の部分が消費者余剰、下の部分が生産者余剰となります。

5.2. 平均費用価格形成原理のメリット

平均費用価格形成原理のメリットは、短期的に企業の費用をしっかりとカバーできる点です。これにより、企業は安定した運営が可能となり、長期的な投資や研究開発にも力を入れられます。また、平均費用を基準に価格を設定するため、価格の安定性も高まります。

5.3. 平均費用価格形成原理のデメリット

平均費用価格形成原理には、X-非効率の問題が存在します。X-非効率とは、企業が最小のコストで生産できる量よりも少ない量を生産してしまうことを指します。これは、企業が適切な競争のない環境で運営されているため、コスト削減のインセンティブが低くなることが原因です。

6. 二部料金制

6.1. 二部料金制のメリット

二部料金制の最大のメリットは、資源配分の効率化です。固定費と変動費に分けて価格を設定することで、消費者は必要な量だけを購入することができ、企業も適切な収益を得ることができます。このように、資源の使用が最適化されるため、無駄が減少します。

6.2. 二部料金制のデメリット

二部料金制のデメリットとして、限界費用の正確な測定が困難であることが挙げられます。変動費部分の価格設定には限界費用が関与しますが、この値を正確に把握するのは容易ではありません。

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