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【ミクロ-10:不動産鑑定士試験のための経済学】 課税政策と部分均衡分析 をわかりやすく(余剰分析)


1. 課税政策の評価方法

課税政策の評価は、その政策が経済に与える影響を理解し、量的に評価するプロセスです。この評価は一般に、消費者余剰、生産者余剰、そして政府の税収に対する影響を考慮します。部分均衡分析はこの方法の一つであり、特定の市場や産業における政策の影響のみを評価します。このアプローチは、その市場以外の影響や財の所得効果を無視し、特定の市場だけに焦点を当てて解析を行います。

2. 定額税が課税される場合の余剰分析

定額税は一定の金額が課税される形式の税金です。この形式の税金は、価格や取引量には影響を与えず、均衡点に変動は生じません。
財の所得効果を考慮しないため、需要曲線は変化せず、消費者余剰は変化しません。生産者は税金を固定費用として扱うため、限界費用には影響を与えず、供給曲線も変わりません。このため、生産者余剰も変化しません。

3. 物品税(従価税と従量税)

物品税には、主に従価税と従量税の二つの種類があります。従価税は商品の価格に比例して課税される税金です。一方、従量税は商品の数量に基づいて課税されます。例えば、1リットルあたり1ドルの税金がかかる場合、それは従量税です。
ここでは、従量税が課される場合について説明します。

4. 従量税が課税される場合の余剰分析

ここでは、従量税が課される場合について説明します。従量税は消費者、生産者に課されるものであり、どちらに課された場合にも税負担の転嫁が起こります。

4.1. 従量税の余剰分析

従量税が課されると、生産者はその税金分だけコストが増加します。これにより、供給曲線が左にシフトし、均衡価格が上昇する可能性があります。また、消費者は高い価格を払わざるを得なくなり、消費者余剰が減少します。
この減少した消費者余剰と生産者余剰の一部は、政府の税収として回収されます。しかし、全てが税収となるわけではありません。一部は「死荷重」として消失し、これは社会全体の効率性を低下させる要素となります。

4.2. 死荷重の発生

死荷重は、税金によって生じる効率性の損失を指します。具体的には、税金が課されることで市場が達成しなくなった余剰の部分です。高い税率や大きな税負担がかかると、この死荷重は増大し、社会全体の福祉が減少する可能性があります。

4.3. 税負担の転嫁

税負担の転嫁とは、課税後に消費者や生産者が実際に支払う税金の割合を指します。一般に、供給の価格弾力性や需要の価格弾力性によって、この転嫁率が決まります。

4.3.1. 消費者に課税される場合

消費者に直接税金が課される場合、消費者はその税金分だけ商品の価格が高く感じることになります。具体的には、需要曲線が左にシフトします。これにより、均衡価格が下落し、取引量も減少します。この結果、消費者余剰と生産者余剰が減少します。
しかし、実際の税負担は価格弾力性に依存します。需要が非常に弾力的である場合、生産者は価格を下げて消費者の税負担の一部を吸収することが考えられます。逆に、需要が非弾力的である場合、消費者は税金の大部分を実際に支払うこととなります。

4.3.2. 生産者に課税される場合

生産者に税金が課される場合、その税金分だけ生産コストが増加します。このため、供給曲線が左にシフトし、均衡価格が上昇し、取引量が減少します。この変動により、消費者余剰は減少し、生産者も生産コストの増加を受けて生産者余剰が減少します。
しかし、実際の税負担の分担は市場の価格弾力性に依存します。例えば、供給が非弾力的で、需要が弾力的な場合、生産者は税金の大部分を負担し、消費者にはあまり転嫁されません。逆の場合、消費者が税金の大部分を負担する形となります。

このように、税金が課される対象や市場の条件によって、実際の税負担や市場の変動は異なります。課税政策の評価や適切な税制設計のためには、これらの要因を正確に把握することが重要です。


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