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読んだ本たち④探偵とか巨人ロボとか

最近読んだ本たち。探偵とか巨人型ロボットとか、世の中に(ほぼ)なかったりありえない題材を使う作家さんの想像力は本当にすさまじいなと思いました。

「IQ」(ジョー・イデさん、ハヤカワ文庫)

ロサンゼルスの「フッド(低所得者が多い黒人街)」で私立探偵をする青年、IQことアイゼイア・クィンターベイの物語。IQが格好良い。ハードボイルド。表紙がイケてるんですが、IQのイメージ、作品の雰囲気もまたこんな感じ。「暗黒街のシャーロック・ホームズ」という触れ込みがふさわしいです。

ヒップホップや口汚いスラング、小気味良いラップが作品全体の通奏低音になっているのが素敵。登場人物の台詞や振る舞い一つ一つに、どこかビートが刻まれている気がします。お気に入りはIQの類まれな頭脳を見抜いていた兄マーカスが、幼いIQにかけた言葉。

「おまえはバスケットボールのスターにはならない」マーカスはいっていた。「だが、スターにはなるーー舞台はお前しだいだ。大半の人間は配られたカードで勝負するしかないが、おまえは、おまえの頭はどうだ? 自分のカードを選べるし、ゲームも好きに選べる。しかも、おまえを止められるのはおまえだけだ」(p60)


「巨神覚醒」(シルヴァン・ヌーヴェルさん、創元SF文庫)

異星人が地球に残していった謎の巨人型ロボット。いったい何に使うのか?地球に残された目的は?という壮大なテーマのSF小説。第1作「巨神計画」の続編で、三部作の真ん中です。

巨大ロボットといってどのくらい巨大なのかというと「20階建てのビルと同じくらい」という規格外さ。ガンダムやマジンガーZの高さは16メートルくらいらしいので、その数倍。はちゃめちゃな想定が作者の頭脳のぶっ飛びぶりを示します。

もともとは、シルヴァンさんの子どもが遊ぶおもちゃのロボットのために作った物語だったというのも面白い。子どもに語りかける物語がいつのまにか三部作の大長編になって、世界中に反響を呼ぶなんて。しかも本作、既に映画化も決定済み。世の中何が起こるかわからないから、巨大ロボットも本当に地球に埋まっているかもしれない。


「創発の生命学」(佐藤直樹さん、青土社)

ヒトゲノムの情報量はせいぜい、0・75GBらしい。衝撃。なのに、どうしてこんなにも生命は謎に溢れているんだろうという話です。

「できすぎくんは、できすぎなプロセスを繰り返すから、できすぎくんなのだ」という話が面白かったです。生命はどうしてここまで精巧に出来上がっているのか。それは生命の形態形成の過程が繰り返される中で、最もうまく進む過程に導く「制約条件」を遺伝情報が与えているから。できすぎくんが試験に出る問題に似た問題を何度も解くように、生命が緻密ななのは緻密な過程の繰り返しなのだ、と。

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