『アントマン&ワスプ:クアントマニア』感想、レビュー
『アントマン』シリーズは、今まであまり日の目を浴びることなく、MCUを追いかけている人の中にもスルーしている人がいるのではないかなと思う。
だが、私はこの何とも人間臭く、家族を守る為に、蟻の力を借りてミクロ(時にはビッグにもなるが)のサイズになって戦うカーン曰く“小物”の普通の父親のヒーローが大好きだ。
作風もコメディの要素が強く非常に爽快な物語であることは、『アントマン』、『アントマン&ワスプ』2作品とも共通しており、作品としての出来も非常に高い。MCUに触れたことのない人にこそオススメ出来るのが、このアントマンシリーズだと思っている。
しかし、今までの敵も戦いのスケールも決して大きくはなく、MCUのタイムライン上において重要な出来事が起きるわけでもないので、スルーされがちであったのではないかなと推測される。また、能力やビジュアルが地味だからと敬遠している人もいるかもしれない。
だが、今回はインフィニティサーガにおけるサノスに匹敵する、征服者カーンにアントマン、スコットとその家族は対することになる。これにより、本作はMCUファンならばスルーすることは許されないものとなった。今回をきっかけに、アントマンシリーズに多くの人が触れてくれて、興味を持ってくれる人がいてくれたならば、こんなに嬉しいことはない。
一方で、今後の展開を示すことに重きが置かれすぎていて、アントマンシリーズの良さというものが、充分に描かれていなかった部分は惜しいなと思うところも正直あった。
しかしながら、カーンという最強の征服者に“小者”のヒーロー、アントマンが立ち向かうという構図は実に面白く、ストーリー展開をワクワクしながら追うことが出来たし、熱くなれるシーンが満載でアトラクションのように一気に楽しむことが出来た。
また、スペクタクルや爽快な冒険の要素は、懐かしの大長編ドラえもんを彷彿とさせる懐かしさがあって、とてもノスタルジックなひと時にもなった。
そして、本格的に、時間軸や変異体という概念が、ドラマシリーズ『ロキ』から導入され、そこにマルチバースという概念が加わり、更に複雑に壮大な物語が展開されていくということが明確に示された。
この点は、鑑賞ハードルが上がり、鑑賞者を更に選ぶことになりかねないのではあるが、これからのMCUの発展と進化を考えると仕方のないことなのだろう。
本作により、MCUのフェーズ5は華々しく幕を開けたといえるだろう。本作は過去作と比較して飛び抜けて傑作というわけではないかもしれない。
だが、今後の作品が折り重なることで大きな意味を付加される作品であることは間違いないし、その傑作になりきれない感じが、アントマンというヒーローの在り方にも重なって、実に愛おしく思う。
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