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小説 『PSYCHO-PASS GENESIS 1&2』 の感想

2015年に刊行されたPSYCHO-PASS GENESIS1と2。刊行から間もない頃に1度読んでから約8年ぶりに読破。話のざっくりとした骨格と一部登場人物以外は忘れていたので、初読のように楽しめました!
今回は、GENESISの3と4の内容も一部シーンと人物の名前以外忘れてる状態で、1と2だけを読んだ人と同じ気持ちで感想を書き留めておきたく、記事を書きました。
感想らしい感想を書くのが苦手なので、気になったことや書けることだけ書いたらほとんどが怪文考察になりました。読んだ直後じゃないとどんどん忘れると思って、備忘録兼ねて閃いたことを書き連ねてあります。
征陸さんの話<<シビュラの話で着眼点おかしいです。
それでも大丈夫そうでしたらお進みください。


※:怪文係数OVER100 
※※:怪文係数OVER300
感想の一部にPPPやFI等のネタバレを含みます。


まずは全体の感想

いやー、征陸さん……切ない(語彙力)。激動の時代を生き抜くには優しすぎた。非情になりきれない人が何かを捨ててor覚悟を決めて非情になる瞬間が好きなので、八尋の親爺との一騎討ちは痺れました。自分が自分らしく(刑事で)あること、家族を守ること、家族と過ごすこと、どれも捨てられなくて、何度も揺れて悩んでどうにかならないかと藻掻いて、それでも選べなくて、失いたくないものがどんどん手から溢れていって、最後にようやく1つの答え(息子が生きる社会を守る、それが息子を守ることに繋がる)を見つけるのが……。でも、短い時間であっても家族と過ごした幸せは無くならないし、これから生きる上で何が大切かを見失わずにいるための道標……最後の砦、になるはず。
征陸さんが八尋の親爺との出会いを通じて自分の正義の在り方と生き方を見つける人生を、始まりから終わりまで一緒になって駆け抜けられる、ハードながら濃厚な物語でした。

征陸さんと八尋の決定的な違いは『何よりも守り抜きたい家族──息子と息子の未来、の有無』でしたね。立場や方向性は全然違うけど、慎導篤志と朱ちゃんの決定的な違いにも通ずるものがあるかも。慎導篤志もまた、過程でどれだけ多くの人を利用し犠牲を生んできたとしても、『何よりも守り抜きたい息子(達)と息子(達)の未来』のために生きた人でした……。

あの後の征陸さんは、『伸元と関わらない』が、『伸元のために生きる』と腹を括った様子でした。そして、自分がそうであったように、もしかしたら息子も父の自分の後を追うように刑事を目指すかもしれないとどこかで思っていたかもしれません。だから、刑事としての役割は返したと作中では言っていたけれど、執行官として、刑事としての心は決して忘れず余生を過ごしながら、どれだけ距離が離れてようが伸元のために生き続けたのかも。伸元が公安局に入るまでは稼ぎを祖母経由か何かで仕送りとかしてたりして……。息子が公安局に入ったと知った時は、『何故過酷な監視官の道を選んだ、もっと自分とは別の遠い世界で平穏に生きててくれたら』みたいな複雑な気持ちもありながらも、きっと嬉しかっただろうなぁと思います。

全体的に心情描写も多く大味な設定とストーリーで、没入感と読後感は心の奥まで絶望から絶景までたっぷり詰め込んだような深い味わいがありました。ただ、筆者の熱の入り方もわかるからこそ、1期の征陸さんが最期以外大人しくやや淡白に見えてしまうかも?って思ってしまったのも正直なところです。
(全ては息子の伸元のためであり、色々なことに妥協して生きてきたと言ってしまえばそうなんですがw)

GENESIS1と2では、「人生とは選択の連続で、それが自分で選んだものであっても偶然が重なった結果であっても、全て1つの線でつながっていて、理解した時にやっと必然だったとわかるものだ」が一貫して書かれていたように感じました。
「あの時ああしていれば……」は無数にあるけど、今この瞬間は無数の選択がもたらした、たった1度の人生の結果であり、どれか1つでも欠けてたら今はなかった。どこかで別の選択をしたら別の結果があっただろうが、それが果たして最善だったかどうかはどれだけ考えてもわからないし、きっと必然ではなかった。
心からそう思えた時、今生きている瞬間に新たな理解と必然だったと思える納得が落ちてくる。
みたいな感覚でしょうか。


物語の構造

まず冒頭と終わり方はわかりやすく1期1話の狡噛さんと槙島を意識してましたね。でも所々対比的な表現になっているのが良かったです。
ここだけでなく全体的に、1期〜劇場版に似てるところと対照的なところとを意識して書き分けてるなと感じました。
冒頭と終盤なら下記みたいな感じ。
狡噛さん→肌、髪、服と"白"の多い槙島と対面する前に人間をエリミネート。残骸が落下。槙島は螺旋階段を降りてくる。ここで決着がつかず、槙島と同化していくように法の外へ。
征陸さん→肌、髪、服と"白"の多い八尋と対面する前にドローンをデコポン。残骸が落下。八尋は螺旋階段(エスカレーター)を登ってくる。八尋と同化しかけるも、ここで決着がついて法の中(シビュラ社会)に残ることができた。


運命的な伸元の誕生

伸元爆誕の日ね〜、ぶっちゃけ、なんちゅう味付けをしてくれたんだ!の心境でしたw ごめんなさい。
何て書いてあったかと言いますと、こちらです。 

2084年11月21日にひとりの老人が死んで、そして、ひとりの子供が生まれた。

PSYCHO-PASS GENESIS1 p195

読めば展開からわかるこの事実を、敢えてはっきりと表現。
ひとりの老人=アブラム・ベッカムはシビュラの生みの親。ということは。
シビュラを生んだ者が死んだ日、宜野座伸元が誕生する
これと対比させるなら
シビュラを終わらせる者が誕生した日、宜野座伸元が死ぬ
でしょう。何となく対比的表現が好きそうな吉上さんなら多分書きながら考えてたと思います。ここ読んで同じように感じた方、きっといたはず……。
そしてこのアブラム・ベッカムについて、作中でシスターと呼ばれる人物が下記のように評しています。

「……天性の扇動者(アジデーター)と評すべき方でしょう。だから彼に導かれて無謀な戦いに身を投じ、多くの人間が死んでいった」
(中略)
「いえ……、誰もが勝手に彼を祀り上げていったのかもしれません。そして彼は、それに応え続けてしまった。彼はそのことを悔いているようでしたが……、赦しを請おうとはしなかった。彼は、自らの選択を悔いることは過去の世界への裏切りになる、と言っていました」

PSYCHO-PASS GENESIS1 p148

……誰かを思い出しません?そう、海外逃亡後の狡噛慎也。劇場版でも既に似たような状況でした。
そこで先程の文章に狡噛さんを当てはめてみます。
狡噛慎也というシビュラを終わらせる者が誕生した日、宜野座伸元が死ぬ
うん……ありえそう……。
PPシリーズ続編でシビュラの統治が終わる話が来て、もし脚本家として吉上さんも参加されてたらいよいよ宜野座さんの命が危ないかもしれない。
自分で言っておきながらアレですが決してフラグじゃないです。認めない!!こんな!展開をぉぉ(CV.東金美沙子)
宜野座さん死なないで!!

まぁFIまで終わった現時点では、シビュラを終わらせる人になる可能性は朱ちゃんにもあるし、一般公開されたシビュラと共存の道を選ぶことでシビュラは無くならないかもしれない。
とにかく宜野座さんが皆と生きて幸せならOKです……!!👍お願いします!!


共感神経系、ミラーニューロンと思考汚染(サイコハザード)※※

さて思考汚染、サイコハザードのメカニズムについて出てきました。脳とか神経の話されると深淵を覗きたくなっちゃう病気なので、ちゃんと文献引っ張ってきて考察めちゃくちゃ深めたいんですが、早く感想書き終えて3を読み始めたいのでさらっと行きます。
まず共感神経系、ミラーニューロンとサイコハザードのメカニズムについて、GENESISで語られている内容をピックアップします。

「(前略) 共感神経系というのは、相手の行動を自分の中でシミュレートし、その行為──もっと厳密に言えば、意図ですね──を模倣する。そして相手の行動の意味を理解させる。他者への共感をもたらし、相互理解(コミュニケーション)の橋渡しを担います」

  PSYCHO-PASS GENESIS2 p61

部位については、脳の前頭葉とその背後の頭頂葉に位置しているとほぼ固定されているとのこと。
この共感神経系によって、相手の意図のうち、行動の目的は察することができるけど、その手段、つまり動作まで模倣するのはうまくいかない。征陸さんに限らず、この時点(2093年)のシビュラ社会の一般的な人間であれば必ず同じ傾向を示すのだとか。

「これはミラーニューロンの優先傾向と呼ばれます。要は、相手の意図を察することができれば、途中経過についてはそこまで重視しない」

PSYCHO-PASS GENESIS2 p62

この優先傾向は普通は親の真似をする子供の頃だけに見られて成長とともに弱まるものだけれど、PP世界の人間はこの優先傾向が大人になっても見られるらしい。
そして、この優先傾向を維持して強化するかわりに、ある機能の活動が抑制されるようになったそうです。

「前頭葉の特定領域は、共感神経系に連結し、その活動をコントロールする機能を有しています。すなわち、相手の意図や行動について、どこまで模倣すべきかを操作する。しかし、現生人類の脳は、基本的に自他の区別をするくらいしか、この領域を動作させていません。〈シビュラ〉の導きに対して、どの程度まで従うべきかなんて、わざわざ判断する必要はありませんからね。実質、その領域は、今の環境下では役立たずなんです」

「今の社会の構成員たちは、〈シビュラ〉の言う通りに生きるように最適化されているが、その従う先の区別まではできません。言ってしまえば、一定以上の強い影響力を持つ人間がいれば、人々は〈シビュラ〉ではなくとも、その人間の意図や衝動に否応なく従い、行動内容を無意識のままに模倣してしまう。その模倣現象は、人々の共感神経系を介し、際限なく伝播していきます。無論、その内容が如何なるものであるか、他者への施しであろうとも、他者への殺戮であろうとも関係ありません」

 PSYCHO-PASS GENESIS2 p66

これがサイコハザードのメカニズム。科学的根拠に基づいてしっかり説明してくれる作品、大好きです。
このサイコハザードについて、作中では『生得的』と言われているんですよね。ちょっとここで引っかかってしまったので、自分を納得させるために掘り下げますw
さらっと行くんじゃなかったのか?

ミラーニューロンの傾向は、確かに生得的な要素が大きいです。現代でも、ミラーニューロンの働きが通常とは違う傾向を見せることがわかってきているケースがあります。自閉スペクトラム症、ASDです。
一例として、ASDの人は下前頭回などの活動が低いことが示された研究結果があります。下前頭回は前頭葉にある脳回で、ミラーニューロンがあるといわれている部位です。分析の結果、定型発達群では上側頭溝(表情の視覚分析に関わることが分かっています)と下前頭回が機能的に結合する神経回路が形成されているのに対し、ASD群ではこの回路がうまくはたらいていないことが示されました。

ASDの原因としては、複数の遺伝的要因が絡んでいるとされています。生得的であり、育て方の問題ではなく、生まれつきの脳の特徴です。
環境要因としては妊娠期の薬剤暴露や栄養の偏り、高齢出産、早産などがあるようですが、遺伝的要因も環境要因も複数が複雑に絡み合っているので、まだまだ解明は進んでいません。胎児期、乳幼児期の環境要因については、エピジェネティクスの側面からの研究も進んでいるのですが、説明は割愛します。(リンクだけ一応貼っときます)
PP世界のミラーニューロンの優先傾向の特徴はASDとは全く別ですが、生得的な特徴に繋がる要因としては、同じように複数の遺伝的要因が中心に絡むと考えられそうです。

さて、八尋や金子室長のような旧時代の人間を除いて、シビュラ社会の人類のほぼ全員が生得的に同じようなミラーニューロンの特徴を持っているということは、遺伝的にもある程度以上は同じ傾向を持つと考えられます。21世紀の中盤〜シビュラ施行あたりまで(少しでも可能性がある期間としては2020〜2090)の間で、ミラーニューロンに関わる遺伝子に一斉に変異が生じてないと辻褄が合わなくなる。そうすると、例えば下記のような下地が必要になります。

①棄民政策や飢餓等で人口が10分の1以下になるまでの間、よりシビュラ社会に適合しやすいミラーニューロンの特徴を持つ人類を選別した。
②激動の21世紀中盤を生き延びた人類が、知らず知らずのうちに同じようなミラーニューロンの特徴を持つよう、薬剤や食材等を利用して人為的に遺伝子変異を起こした。

まず①について。現代ではASDは1%以上の割合で存在すると言われています(2020年のある論文では5歳児で約3%の有病率と言われてました)。←感覚として比較しやすいように敢えて触れています。
シビュラ向きのミラーニューロンの特徴(に関する遺伝子)を持つ人類上位約10%を選別すれば、次世代からはそこそこ高確率で遺伝していくと考えられます。生得的な下地はこれで大体整うかなと。とはいえ、この絞り方だけだと何世代か経ないとほぼ全員が生得的にっていうのは難しそうかな……?
そこで②の方法も使われると考えます。GENESISでは東金財団の施設でマカクザルを使用したミラーニューロン実験のシーンが出てきます。そこではPP世界の人間と同じようなミラーニューロンのシステムをサルに人為的に施しているんです。薬物投与によって。
サルでできるなら、人間のミラーニューロンの機能を弄れてもおかしくない。
ただ、②のケースだけでは、八尋に扇動された廃棄区画民のサイコハザードの説明がちょっと難しくなります。GENESISで出てくる現生人類の親世代の殆どがミラーニューロンに関する特定の遺伝子変異を持つためには、例えば多くの国民が一度は口にするであろうメンタルケア剤やハイパーオーツを通じて遺伝子変異を誘発させるとか、出産前後に手を加えるとかが考えられるんですが、いずれも廃棄区画住民には当てはまらなさそうで……。あ、生まれた後に廃棄区画に逃げた人なら当てはまりますね。
①②をうまいこと組み合わせれば、たったの1〜2世代で、国民ほぼ全員にシビュラ社会向きのミラーニューロンの特徴を獲得させられるかもしれません。
いずれにしても、国民のほぼ全員が生得的に新たな形質を持つようになるには、環境の変化だけではなく、遺伝的操作が不可欠ではないかと思います。

とこんな感じで、ほぼ全員が生得的に特徴的な優先傾向を持つようになった背景を妄想してみました。
なかなか凄い変化だなとびっくりしたので、「現生人類にはこうした優先傾向を持つ者が多い/年々増えている」くらいに個人的には濁しておいて欲しかったです。

そろそろ自分でも何言ってるかわからなくなってきました。
次行きましょう。次もシビュラ関係の話ですがw

【この項目の主な参照先】
自閉症の分子メカニズム
自閉スペクトラム症の原因とは
ASDについて
ASDでミラーニューロン回路の不全
我が国のASDの有病率の調査結果
発達障害のエピジェネティクス病態の最新理解


シビュラシステムと免罪体質※※

シビュラシステムの施行、オフィプロ3とGENESISでは2071年になってるけど、PPP(2118時点)では施行55周年って言われてたような??この辺解説できる方います……?
公開施行が2071年というだけで、その前から先行して実験的に施行されてて55周年、という解釈を一応しているんですが、違ったら教えてください。何か見落としてるかもしれません。絶対的な真実を探しています。

と、そんなシビュラについて、GENESIS読んでて疑問に思ったことがありました。
免罪体質の脳でできているシビュラシステム、初期メンバーはどうやって選んだんだろう?
2030年代にはスーパーコンピュータとサイマティックスキャンがあったから、これらを使用した?もしくは免罪体質でも何でもない人の脳を並列接続したシビュラのそっくりさんで演算した結果、精神構造が特定できない人を免罪体質に限りなく近い存在として最初は取り入れて土台としたのか?
この辺考えを巡らせてみます。

まず、アブラム・ベッカムは死ぬ間際に下記のように語っていました。

「(前略) 託宣の巫女(シビュラ)か……、よもや魂の数値化が、このような世界をもたらすとは。そうだ、私たちが求めたものは同じようで、まるで違った。ならば、完全理解とは何だったのだ──? (後略)」

「──正義(システム)が暴走する、か……」

PSYCHO-PASS GENESIS1 p191、193

ここを読んで、彼はあくまで「魂を数値化して、人々の心の状態を可視化し、適切な処置が適切なタイミングで人に施され、誰もが清らかな魂を維持して生きることができる真に平和な世界」を望んでシビュラを考案した(生み出した)のかなと思いました。
正義(システム)の暴走とはすなわち、『システム=シビュラが〈法〉に成り代わり人を支配し、断罪(殺処分)までするようになったこと』かなぁと。そこに人の正義は不要。とすると、警察庁、警視庁などの警察機関に置き換わり、シビュラが人を裁くように変化する大きな分岐点がどこかであったのではと推測します。
その分岐点とは。開発やデバッグに携わったようなシビュラの近くにいた人が何らかの手を加えた時か。それとも、シビュラの構成員に大きな変化が起きた時か。
後者の場合はどんな変化かというと、『シビュラ構成員の初期メンバーの多くもしくは全員が排除された』。
シビュラは犯罪係数を測定できない、解析不能の特殊な価値観や脳神経的特徴を持った免罪体質者の脳を取り込むことで、不完全性を限りなく0に近づけていき、進化を続けてきた。犯罪係数の導入は意外にもシビュラ施行から結構経った2091年からだったので、犯罪係数測定不能(=0)以外の免罪体質者の判断基準があったとわかります。他には、2期で東金美沙子が人為的に免罪体質を作り出そうとしていたこと、GENESISでサイコハザードに関してミラーニューロンの脳機能的特徴に触れられたことから、免罪体質にも特有な脳の神経的特徴があると。確かにこれまで出てきた免罪体質の人たちを思い浮かべると、サイコハザードは起こしそうにないですね。実際八尋も起こしていませんでした。免罪体質のミラーニューロンは、善くも悪くもサイコハザードを起こすような活動はしない。これが免罪体質の特異体質の1つとして判断基準になるのかな?実際GENESISでも下記のように書かれていました。

──われわれは──つねに完全なシステムとしての発展を遂げるため、飽くなき機能改善を続けている。一種の本能といってもいい。そのために、通称──〈先天的免罪体質者〉と定義される何らかの特異体質を発現し、既存のシステムでは、対処不可能となった存在を取り込まなければならないが、そんな例外存在がそう頻出するわけではない。統計上、200万人に1人となっているが、実際は、その発見はさらに困難である。
2091年に導入された〈犯罪係数〉は、通常の治安維持の側面だけではなく、この例外存在たちの捜索を実行する、一種の検索システムの役割を与えられていた。

PSYCHO-PASS GENESIS2 p347

この書き方を見ると、シビュラができる前からサイマティックスキャンやスーパーコンピュータで解析できない人間を例外存在として扱っていた可能性がありますね。
一番最初にシビュラの構成員となった脳はどうやって選別したのか?という疑問に対する答えの1つになり得そうです。
免罪体質かどうかを判断するシビュラそのものが生まれる前、シビュラの構成員とする人間の選別基準は、サイマティックスキャンやスーパーコンピュータ等で対処や解析が不可能であった例外存在とした

もう1つの答えとして考えたのは、『免罪体質的特徴を持つわけではない適当な人間の脳から、まずはシビュラと同じ仕組みを持つ脳の集合体を作成して判断させた(現行のシビュラとの違いは免罪体質の脳か否かだけ)』。
このシステムで解析できなかった例外的存在を初期免罪体質として組み込んだ可能性は、あってもいいかなと思いました。

というわけで、シビュラシステムの最初の構成員は『当時解析・対処不可能だった例外的存在、つまり免罪体質に限りなく近いが厳密には免罪体質とは呼べない存在』だったと考えられます。そこから免罪体質となる人間(=初期のシビュラシステムで解析できない人間)を見つけて構成員として迎え入れて欠点を埋めていく……とやっていくうちに、『厳密には免罪体質ではない初期の脳』と『シビュラが免罪体質と判断して取り込まれた脳』のハイブリッドシビュラになっていったと思うんです。そして、ある程度免罪体質者の脳が回収できたところで『免罪体質でない不要な脳を間引く』。このタイミングで、アブラム・ベッカムが想定していなかったシステムの暴走が始まった。そして『託宣の巫女〈シビュラ〉が正式に施行された(アブラムはシビュラという名前を死ぬ直前まで知らなかった)』と考えると面白そうだな……と思いました。
1枚のデジタルイラストがあったとして、まず一番下のレイヤーでキャンバス全体を隙間のあるペンで塗ったあと、隙間を埋めるために、隙間と隙間周辺を別のペンで塗ったレイヤーを上にどんどん重ねていく。ある程度レイヤーを重ねたら、一番下のレイヤーを消しても既存の隙間は残るけど新しい隙間は埋まれない、代わりに一番下のレイヤーだけの時とは全然違う濃淡のイラストができているみたいなイメージ?????
2期ではシビュラの構成員の脳を、不要と判断した瞬間に廃棄する機能が備わっていたということは、過去にも不要になった脳を間引いたことがあるはず、と。
でも間引いても数が足りるほど免罪体質を見つけられたかどうかは微妙なところだし、初期メンバーは少なくても100人くらいはいるような気がするから、間引いてはいないかもしれません。
アブラムが想定していなかった機能を獲得したタイミングと原因、他にも色々想像を巡らせてみたいところです。

以上、妄想の羅列でした……。もしかしたらGENESIS3と4で笑っちゃうくらい上記と全然違う答えが出てくるのかもしれません。この辺り綺麗に内容を忘れてるし、折角だから思い出す前に好きに妄想しておきたくて書き切りました。


ドミネーターの変遷※

原型は処刑具〈スローター〉で真っ白だったドミネーター。物語が進む中で、1期時点と変わらない見た目、機能を持つ〈ドミネーター〉まで成長しました。
最初は無人機に搭載され、エリミネーターの前身であるエグゼキューション・スローターのみ(パラライザーと同じ機能もあったのかもしれない)。そこからPP2期時点に至るまで、ほぼ変わらなかったものが1つ。
そう、エリミネーターです。人体を急速沸騰させて血と肉片と骨片を撒き散らす殺戮形態。この経緯をGENESISで追う中で一つ、大きな疑問が。
どうして犯罪係数が規定値をオーバーして殺処分となった時に、執行対象にとっても引き金を引く人にとってもギャラリーにとっても、最も残酷な殺し方を採用し続けているのか?
(思考汚染を受けた公安局員同士の、エリミネーターによる大量殺戮などを経てもなお残った機能。本体の色は印象が良くないとして白から黒に変わったのにもかかわらず。)
その答えは複数考えられます。
まずは、照準が甘くても執行できるよう殺傷力が最も高い形態になった。
最低限の銃の扱いは公安局員なら皆身につけると言っても、非常事態ではうまく撃てない人も出てくる(特に監視官)。シビュラとしては、いざという時しっかり執行、殺処分できないと困る……と。あとは、犯罪係数300オーバーになる人は密入国者など外国人もそれなりに多いと察せられるので、海外に「日本の公安はおっかない執行具を持っている」と認識してもらうため、とか?
2つ目は、監視官の在り方に繋がるのかなと。
どれだけ過酷な状況を目の当たりにしても濁らない強靭かつ非凡な精神を持つ者の選別のため。いずれ厚生省キャリアへ昇進→シビュラの正体を知ってなお手駒として動けるかどうか。残忍なエリミネーターの機能を利用しても、シビュラを疑わず反感を持たず従い続けられるか、その忍耐力テストのため。GENESIS2にも、監視官についてそれっぽいことが書かれていました。
最後に3つ目。計測した対象本人をちゃんと執行したか確認できるよう、本人情報を特定できる血痕(DNA)を現場に確実に残すため。
だから、エグゼキューション・スローターのように肉体を蜂の巣にするだけじゃなく、爆発・飛散させる。少しでも細胞がどこかにこびり付いて残れば、鑑識ドローンが特定できる。
ざっと思いついたのはこのくらいですが、他にも考えられそうですね。


巌永監視官について

巌永監視官の正体は免罪体質でした。東金財団と縁があったり、シビュラに詳しすぎたり、走り回っても疲れなかったりとちょいちょい匂わせはあったので納得です。

終盤で東金美沙子と会話していた『わたし』、巌永監視官の中身は誰なんでしょう。巌永監視官と禾生局長を2人で分担していたようですが、巌永監視官の義体に東金美沙子が入っていた時もあったんでしょうか。GENESISでは、東金美沙子は指をトントンする癖があるように書かれていて、巌永監視官もどこかでハンドルか何かを指でトントン叩いていたシーンがあったような……。忘れちゃいました。

ちなみに、GENESIS2で巌永監視官が1番人らしい個人的な発言をしていた台詞がこちら。

「わたしは孤児でした。発見されたとき、死に瀕していました。世界は何て残酷なんだろうと思って、憎み、そして絶望していました。けれど、赤の他人に過ぎないわたしを愛し、育ててくれたひとたちがいました。この社会は、わたしに生存の可能性を与えてくれた。だから今度は、自分の番なんです。かつてのわたしのような人間をひとりでも多く救うこと。そのために、わたしは今、ここにいる」

PSYCHO-PASS GENESIS2 p290

本来の優しい人となりと使命感がとてもよく出ていたこの台詞。間違っても東金美沙子ではない。書いている時、吉上さんの頭の中にはもうかなり具体的な巌永監視官の中身のイメージがあったはず。多分これは3か4ではっきり答えが出る気がしていますがどうだろう?読んでからのお楽しみにしたいと思います。


八尋の語った理想の国家※※

全国に人口を分散させて物理的に距離を置き、小規模なコミュニティを形成。各コミュニティの人々の情報通信網はシビュラのみとし、シビュラ⇔個人の間に中間層が存在しない。人間同士の接触は極めて稀になるが、これでサイコハザードを抑えられてシビュラが運用する司法システムも不要になると。
これだとサイコハザードはなさそうですね。もし実現したらその行く末はどうなるでしょう。
ちょっと妄想してみます。

多分暫くは上手くいく。けれど時間が経つと、区切られたコミュニティの外に行こうとしてそれに成功する者が現れ、シビュラの監視の目を潜り抜けて他のコミュニティと情報交換をするようになり、コミュニティ内の格差とコミュニティ外の格差を知る。格差を無くすためには、恐らくシビュラが格差要因を排除することになる。情報や物資の調整等で済めばいいですが、格差が大きくなるとシビュラに裁かれる人間が出てくるでしょう。一方、海外からも人が押し寄せる。どれだけ国境を厳しく監視しても、物資のやり取りがあればそこにはいずれ不穏な人の移動も紛れ込んで発生する。
うーん……どうしても不穏な方向に行ってしまう……汗

八尋の言う理想を実現するには、人間は大きく退化する必要があるなぁと思いました。余計な興味関心も疑問も野心も持たない。誰もがシビュラの存在に何の疑いも持たず、コミュニティの外に興味も持たず、シビュラ与えられた情報の元穏やかに日々を過ごすんだろうか……更に思考を放棄し、より家畜らしく……?
そうなったら最期、復興する海外に取り残されていつか潰されるか、シビュラやドローン、各AIの支配と力ばかり強まって、そこに外部の人間の手が加わった瞬間に飼い慣らされた日本人が一斉迫害される日が来るか、のどちらかでは?
八尋は『長い歴史によって育んできた道徳規範を基礎とし』って言っているけれど、多分八尋の唱える統治の在り方だと、その道徳規範はシビュラに塗り替えられると思います。接触がより少なくなった人間より、シビュラとの情報のやり取りの方が多くの割合を占めるのだから……。そして、サイコハザードの原因になる脳の特徴は恐らく永遠になくならない。理由はサイコハザードのメカニズムの項目で述べた通りです。シビュラがある限り、ミラーニューロンの優先傾向の特徴は維持される。
一生小規模な楽園で暮らさないと、サイコハザードのリスクは避けられない。
解決策としては、シビュラが無くなる(ミラーニューロンの特徴を制御されなくなる)か、正のサイコハザード、つまり全員の色相が常時オールクリアな環境を完璧なまでに保ち続けるしかなさそうに思えます。究極の二択。
今のところ、朱ちゃんが掲げるシビュラとの共存の形が、理想社会に近づくには良いのかもしれないですね。人はどうあるべきか、法はどうあるべきかを自分達で悩み考え、自分達の正義を軸に据えた上で、シビュラに使われるのではなく、正しく使う。
互いの役割を尊重し活かし、生きていく。


余談とあとがき

余談:ある大学について
GENESIS1で出てきたお茶の水にある元医療系大学……多分、東京医科歯科大学ですね。現実世界では来年から東京工業大学とフュージョンして東京科学大学になってしまうので、「お茶の水にある元医療系大学」は厳密には作中より50年近く前に無くなってしまうことに。

あとがき
気になるポイントもずれていれば、語っている内容もなんかおかしい。感想といっていいのか怪しい代物になりました汗
実はこれでも、結構項目や内容を絞りました。
え、引く……と思ったそこのお前!レモン一個に含まれるビタミンCはレモン一個分だぜ
言語化してみると、GENESISに限らず理解や解釈が不十分なところもまだまだいっぱいあるなと気づきや発見があるものですね。
GENESISの3と4も読んだら感想(?)を書いてみようと思います。

読んでいただきありがとうございました!!

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