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連載小説「転生ビジネス・カオスマップ」第七部 第19話 アルゴ・ワールド

「でも、次に向かう場所はアンドロメダではないですよね?」

 ユナが質問する。

「ああ。その前に、準備しに異世界アルゴ・ワールドへ向かう」
「何それ?どこだっけ?」

 昔、どこかで聞いたような……
 そうだ。思い出した。
 かつて、全宇宙に武器や宇宙船を提供していた軍事異世界ね。

「確か巨大国家が壊滅して無政府状態になったような……」
「その通り。今はバラバラに分割して無法地帯になっている。
 異世界運営会社も撤収しているから密転生者の巣窟になってるんだ」
「……なんか、嫌な予感しかしないんだけど?」
「まあね。でも、戦時中のアンドロメダに入るには軍用艦が必要。
 民間人がそんなもの調達できる場所は、ここしか考えられないからね」
「戦艦を買うってこと?」
「まあ、正確にはレンタルするってことだね。
 ここからはスピード勝負になるから、高速戦艦を借りたいんだ」

 まじかー。
 まさか、私のような一般民間人が、軍用戦艦に乗ることになるとは……

 こうして、私たちのリムジンはアルゴ・ワールドへの寄り道をすることになった。

 アルゴ・ワールドに着くと、ユナはリムジンに乗って、ひとりで何やら買い出しに。
 元々国家一級メイドなので、このようなアングラな世界での買い出しも慣れているらしい。

 私はハルトに連れられて、軍艦をレンタルしてくれる業者のアジトに向かって歩き出した。

「アルゴ・ワールドは無法地帯だから、とにかく気を付けて」

 ハルトは相変わらず用心深い。
 でも、今回は素直に従って、全身をマントで隠すように覆う。
 これで、一見誰だかわからないだろう。

 荒れた砂漠の荒野。
 そこかしこに山積みにされている大きな中古船や武器。
 テントが無数に乱立していて、それぞれが違法中古販売をしている。
 その周りを、民間人や、軍服をきた傭兵や、どこかの政府のSPのような人物までが徘徊している。

 まったく……異様な活気ね。

 それぞれの店員も客層も怪しい。
 町を行きかう人物もみな怪しく思えちゃう。

「とにかく、おれから離れるなよ。すぐに搔っ攫われるぞ」

 私はぐっと気を引き締めた。

 うん、引き締めたんだよ?

 なのに、その瞬間。

 いきなり視界が真っ暗に。

(何よ、誰?)

 声も出ない。口をテープでふさがれている?

 手は……後ろに縛られて……私、担がれて運ばれてる!

 どこに?

 どさっ。

 ブロロロロロ……

 このレトロな振動、まさか車に連れ込まれた?

 ちょ……どこへ連れていくつもりよ?
 ハルト……助けて! 

#異世界転生
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