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【大撃沈】チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン(4 Lakes)その②

戦略

今回のレースプランはこうだ。後半遅かれ早かれ潰れることを織り込み、前半は「辛くない、気持ちいいくらいのペースで」あまりタイムを気にせず走り、元気なうちになるべく距離を稼いでおく。自分的にはそれはキロ6を少し切る、5分40~50ぐらい。

当然、もしずっとこのペースを維持できたらサブ10なんだが、さすがにそれは無理なことは想像に難くなかった。フルでサブ3近辺のランナーでもウルトラのサブ10には失敗したり、すごく苦しんだりしてる動画を見て衝撃を受けていたのだ。

問題はどれくらいの距離で、どれくらいの潰れ方をするのか、まったく予想が付かないことだった。こればっかりはやってみないと分からない。だからと言って、前半からスローペースで行くとその後やっぱり潰れてタイムオーバー、というのも嫌だから、それなら一か八か突っ込めという、いつもの「撃沈上等」コース。まぁ、こういうことをあれこれ考えながら走るのもまた楽しみの一つだ。

スタート後しばらくはまだ真っ暗なので、念のため懐中電灯は準備していたが、どうせ30分もしないうちに明るくなって、以降はただの荷物になることは自明だったので持たないことにした。そしてちょっと迷ったのがiPhoneだが、結局置いて来た。画面デカいやつだから重いし、トライアスロンでは規定で持たないことに慣れてるし・・・ということで以降写真が全く無い。

コースマップぐらいは載せておこう

一方、今日は天気が非常に良さそうなのでサングラスは必携だ。自分はド近眼なのでサングラスは度付きだが、調光ではないので眼鏡と掛け変えないといけない。スタート時はサングラスをキャップの上に掛けておき、眩しくなってきたら掛け変える。その後ずっと眼鏡をキャップの上に載せたままになるが、致し方ない。

序盤

走り出して会場を出ると左へ登っていく。密集しており、周りのランナーがちょいちょいライトを持っているので、足元は十分見える。いよいよ始まってしまったなぁ・・・という感慨と、この大量のランナーが全員同じ方向に、100キロという頭のおかしい距離に向かって突き進んでいることによるワクワク感に加え、これからどうなるのかという不安がほんの少しあった。

左折してしばらく行ったのち、また左折して下り始める。そこからしばらく快調な下りだ。意識してなくてもペースは5分半とかに上がるが、上げすぎないように気を付ける。初音ミクのコスプレがガーッと抜いていった。すごいな初音ミク。

周りのランナーの装備は十人十色と言う感じだ。いかにもウルトラランナーぽいザックを背負っている人もあれば、普通のフルを走りに来たような軽装の人もいるし、果てはサンダルで犬の散歩にでも来たような風体の人までいてビックリしてしまう。

ゆるいアップダウンを経て138号線に出る。ここはバイク(注:自転車です)では何度も走っている、山中湖へ真っすぐ続く道だ。このまま道沿いに山中湖へ向かい、湖を反時計回りに一周する。すくなくともこの区間だけは勝手知ったる道で安心だ。

山中湖

138に入ってすぐ、富士散策公園に第一エイドがあったが、まだボトルの水も手持ちの補給もほとんど手を付けてないので華麗にスルー。YouTubeでよく見た光景だ。後半でまたお世話になることにしよう。

このあたり、山中湖周辺ではまだ全く疲れていないこともあり、楽しくて仕方が無かった。「いいねイイネ~、最高やね~」などと余裕をブチかましていた。ペースはずっと5分40前後で快調。

10km 58分14秒

とりあえず10キロ1時間切った。これが吉と出るか凶と出るか・・・呼吸はまったく乱れないし、心拍は130前後で安定しているし、足もまったくなんともないし、多幸感まで出て来てこの辺りは最高の気分だった。山中湖に入ってすぐあたりの第二エイドは、ポカリだけちょっといただいてすぐにコース復帰。

山中湖南岸を通過し「くじらのしっぽ」あたりで湖岸へ向け左折すると景色が開け、てっぺんに雲を抱いた富士山がドーンと現れた。「おお〜」と思わず声が漏れる。周囲のランナーたちも立ち止まって撮影を始める人多し。そこからエイド4、みさきキャンプ場を経て20キロに到達。

20km 1時間54分45秒。ド安定のスプリット😆

さらにサイクリングコースを辿りエイド5、この辺りもほとんどスルーで手持ちのエネもちを食べ、ウェストポーチの水を飲み、塩タブを舐める。富士山の絶景に一旦別れを告げ、宿のぱうぜさん方面(=忍野方面)へ右折。嫁さんが居るかな?居たいた。エイド6(わいわい広場23.8km)の手前に陣取って見てくれていた。このエイドもスルーして先を急ぐ。

忍野八海

スーパーオギノの前を右折して忍野八海方面へ。この辺まではよかった。異変はこのあたり、25キロ付近で両太ももにズーンと「鈍痛のタネ」を感じる。えっウソ?脚終わるの、早すぎ?まだ4分の1なんだが・・・どうすんだこれ残り75キロもあるのに??

しかし悩んでも脚は戻らない。進むしかないのだ。気にしないフリをして忍野八海の風光明媚な裏通りを淡々と進み、エイド7(柳原公園・29キロ)で一旦ボトルに水を満たしてコーラももらって英気を養う。この辺はじわりじわりと下り基調だったこともあり、まだそんなにダメージはなかった。

30km 2時間52分40秒 まだ、生きてる?

また138号に戻って来てエイド8(33.6キロ=エイド1の復路)。このあたりもまだ自分の給食があるから最低限ポカリを汲むぐらいでサッと出る。そしていよいよ最初の難関、スタート後にガーッと下って来た北麓公園への道を登り返すのだ。これが34キロ過ぎあたりから波状攻撃的に始まり、37キロ前後のところでトドメの急坂だ。多くのランナーたちが「ウォーカー」と化している。

激坂の洗礼

そういえばスタートの時に「無理をしないで、きつい時は歩きましょう!」と言っていたなぁ・・・でも自分はフルでも、ロングのトラのランでも、エイド以外は歩いたことがない。ゆっくりでも良いから走り続けたいという意地があった。結果的には「あのとき意地を張らずに歩いておけば・・・」と思うことになるが、そんなことは後からわかることである。

本当にキツかったが「JETTの土曜はこんなもんじゃなかった」という思いでなんとか耐えて、北麓公園に再び戻って来た。ここでエイド9、38.3km。たまらずしっかり止まって休憩を入れた。脚はとっくに白旗を上げている。当たり前だ、もうフルマラソンなら最終盤なのだから・・・これ以降、エイドの存在が「神」のように見え始める。

そこからの下り。これがまたキツい。もうダメになった両ふとももに容赦無く襲いかかる着地衝撃。もうまったくペースをあげることができない。40キロはギリギリ4時間を切ったが、気分的には「今日はもうおしまい」であった。

40km 3時間59分45秒 ヒタヒタと迫る死の兆候

そこからダラダラ下りを下りながらふと気付いた。「ここ、最後の最後に上る坂やんな・・・!!」これは厳しい・・・富士五湖にわざわざ「チャレンジ」と付いている理由が、名うての難コースであることが、今更ながらに分かって来た・・・初ウルトラは、おとなしく柴又にしておけばよかったのか・・・

【追記】その後いろいろなコースの話を聴くにつれ「富士五湖はむしろ初心者向け」という事実を知り、衝撃を受けた。

よく見たら「総獲得標高2581m」って書いてあった。これは、アカン

フル相当の42.2km通過は4時間13分くらい。30年前の初フルはマラソンだけでこれ以上掛かって死体のようになっていたのだから自分もまぁ大したもんだ。脚は痛むがこれはこれで痛快だ。そしてついに未体験ゾーンに突入する。これをもう一回走れば84キロか、、、その後まだ16キロもあるのか、、、しかしこの時はまだ後半のコースの苛烈さをよくわかっていない。

この区間は、下りということもあってエイドの間隔が長く、次のエイド10(役場駐車場)は45キロ地点だった。ここでもしっかり休んで給水しておく。たしかこのあたりでもらったおにぎりがめちゃくちゃ美味かった気がする。

河口湖

そしてド直線をガーッと進んで河口湖大橋を渡る。ここは例の富士山トライアスロンでもコースになっていたところだなぁ。しかし結構水面から高い。これ高所恐怖症の人はヤバいんじゃないか?

渡り切ってすぐ、エイド11(47.5km 観光連盟)。ここはさすがに間隔が短かったのでコーラだけもらってシュッと出る。天気はドピーカンになって非常にスガスガしい。気温もまだそんなに高すぎず、ときおり涼しい風が吹いてくる。脚はすでに厳しい状態になっていたが、まだまだ気力は持ち堪えていた。とにかく50キロ、半分まではちゃんと走りたい。

河口湖の北岸を回り始める。このあたりもほぼまっ平なのでまだいける。次のエイド12の手前に50キロ地点のセンサーシートがあった。「ピピピピピピ ピピピピピピ」実は正直もう、リタイヤしてもいいですか?という気分になりかけていた。

50km 5時間10分32秒 まだなんとか持ち堪えている?

この頃、スタート直後にブチ抜いていった初音ミクが路肩で苦悶の表情を浮かべて止まっていた。あんな苦しそうな初音ミクは初めてみた。その後「彼」の姿を再び見ることはなかった・・・

つづく

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