映画「ウィッシュ」考察 マグニフィコ王は何がダメだったのか。(ネタバレ注意)

映画「ウイッシュ」を観た。とても面白かったので、今回はマグニフィコ王の敗因を中心に考察していこうと思う。個人の意見かつ、本日1回観ただけなので色々とあしからず。

1:ウィッシュにおける陣営

1. アーシャ(主人公)陣営
主人公、友達、女王、スターちゃん
叶えられない願いは返すべき、願いは自分で叶えたい。

2.王

願いは全て管理すべき。国の為になる願いだけ叶える。(味方があまりにも少ない。

2:最大の敗因

私が思う最大の敗因は「星(上位者)に歯向かったから」である。この世界の星は上位者(神)であり、魔法の起源であり、願いを管理していた。王は願いを管理する事でその上位者の怒りに触れ、あまつさえその力を自らのものにしようとしたので、上位者にボコボコにされたのである。

3:なぜ星は上位者なのか

①魔法の起源
作中では動物や植物を喋らせたり(永続?)、人の願いを叶えたり、魔法の杖を授けたりしていた。偉大なる魔法使いであるマグニフィコ王が大量の本を読み漁り、恐ろしく手間が掛かりそうな方法で魔法を使っていたのに対して、星は軽く手を動かすだけでこれらを可能にしていたので、魔法は星の技術であるのだと思う。

②創造主
挿入歌「誰もがスター」でも"私たちみんな宇宙の一部" "小さな星屑が集まり大地と海と命育てた" とあり、星は創造主であると謳っている。

③願いの管理
主人公に暮らす国では願いは王に託すものだったが、本来は星に託すものであったと考える。作中で星は人々の願いを叶えていたし、エンディングで別の願いを持つ人のところに行く(みたいなこと)を言っていたことから伺える。

④禁書の記述
禁書には愚かな技術(曖昧な記憶、それに類似するような事。)と書かれていた。これはつまり「魔法は星の技術であり、願いは星のもので人間が管理するものではない。願いを魔法の源として利用するなどなんと愚かな技術であろう」という事ではないか。

以上の理由から、この世界では星は創造主であり、魔法の起源であり、願いを叶える存在=上位者だといえる。また、後半で王が星に願うのを雲で覆って阻止していたことから同じような上位者が沢山いるとも考えられる。

4:星(上位者)目線の物語

これをふまえて、スターの目線からこの物語をなぞろうと思う。

 この世界の創造主であったスターちゃん(放任主義)は願いを管理していた。久しぶりに星に願うものが現れたので降りてみるとびっくり!自分が創造した世界で勝手に願いを管理している不届者がいるではないか(イエローカード)!ただスターちゃんが全て解決してしまっては物語が生まれないので、熱心な星信者(アーシャ)に知恵を授け願いを取り返すことに。上位者の降臨に焦った王は愚かにも歯向かい、星の力を手に入れようとしてくる(レッドカード)。しかし、そもそも願いの力も魔法も星の技術であるため、創造者に勝てるはずもなく。あっさりと倒す事ができた。スターちゃんは上位者に歯向かった愚者を成敗できたので満足。熱心な星信者(アーシャ)に魔法の杖を授けて帰るのでした。

極端に言うと、革命の中心人物(アーシャ、その友達たち)にスターちゃんは必ず触れていたので、革命自体星の意思でアーシャたちは操られていただけという可能性もある。

5.王国の未来

革命が起きた事により、願いはそれぞれの人のもとに戻り、願いは自分で叶えるものとなった。ハッピーエンドかのように見せているが、これはバッドエンドであると思った人も少なくないだろうと思う。
 この革命によって願いが叶わぬ苦しみや、危険な願いによる脅威も復活しているからだ。

しかし、マグニフィコ王が国を統治し続けていても王国はいつか滅んでいたであろうと思う。
というのも、この王国はあまりにもマグニフィコ独裁主義であるからだ。マグニフィコ自体は賢王(暴走前)であるのだが、

・後継者の育成をしていない
子供もいないようであった。大臣や議会のようなものも見受けられなかったのでマグニフィコが死ねばあっさり国は滅ぶであろう。(せめて女王に魔法を教えておけばいいのに
冒頭で弟子を募集してようやく対策に踏み切ったが、国民を馬鹿にする政策をしているので、適任者はいないのであった。
後継者が欲しいなら、自分の子供でなくても小さい頃から帝王学を学ばせるべきであった。

・技術の進歩が遅い
願いを取り戻した後、ピーターパンもどきの国民と空を飛びたい国民がタッグを組んで飛行機を作ろうとするくだりがあった。人間の願い(空を飛びたい、早く移動したい、美味しいものが食べたいetc)は技術の進歩に必要不可欠である。マグニフィコ統治下ではそれを封じていたので、技術の発展のスピードがめちゃくちゃ遅い(アプデは月一回)おそらくご飯もタダ!誰が働くんだ?。
マグニフィコが死ねば一瞬で技術の進んだ他国に侵略されるであろうし、死ななくても移民を無条件で受け入れているので外から技術持ち込まれると色々困ったことになるであろう。

・人口増加による破綻
移民大歓迎、衣食住無料という事もあって人口は着実に増えているようであった。願いを叶える頻度が月一回であるため、人口が増えれば増えるほど叶う割合は減っていく。1万人に対して年間12人となれば確率は0.01%。こうなれば国民の不満も溜まるであろうし、であれば自分で叶えると王に願いを渡さないものも出てくるであろう。願いを渡す年齢は18歳なので、割と自分で考えられる年である。遅かれ早かれ王に異を唱えるものは出てきていたと思う。

などかなりの問題点がある。いずれ滅んでしまうのであれば、王から自立して自分達の力で生きていく力を身につけようとする革命の方が、良い選択であったのではないかと私は考える。

6.最後に。メタ的な視点(願いがなければ物語は生まれない)

星=上位者と述べてきたが、もっとメタ的な視点で考えれば星=製作者とも解釈できると思う。
ディズニー映画は願いが主人公を動かす作品が多くある。シンデレラ、アラジン、リトルマーメイド、ラプンツェルなど例を挙げればきりがない。
製作者にとっては、主人公が願って、叶えるために行動しないと物語が始まらない。願いを管理して(しかも忘れる)勝手に叶えてくれる存在は、物語を作る上で邪魔である事この上ない。
わりと願いを持ち続けるのがしんどい昨今。「ウィッシュ」は、製作者はエンターテイナーとして、願いを持ち叶えるために行動することを応援しますよ!それが理不尽や苦悩に満ちていても、物語になるのですから!というエールが込められた作品なのかもしれない。

以上がマグニフィコ王の敗因から始まる、映画「ウィッシュ」の考察である。
ご精読に感謝。
(2024/01/20 4:44      どな)



おまけ:それ以外の細々とした敗因

・兵隊が少ない。
基本的に王宮の人手が足りてなさそう。しっかり育てるか魔法で従者作ってそいつらに働かせるべきだった。

・味方があまりに少ない
独裁を維持したいなら、自分と同じ考えを持つ大臣とか議会を作り固めておくべきだった。実際はワンマンでも、同じ意見の偉いっぽい人が沢山いた方が民は納得すると思う。

・願いを取り上げるのが18歳は遅い。
結構遅い。5歳とかの小さな願いの時にさっさと貰っておくべきだった。

・少し話しただけの弟子志望者に願いの部屋を見せてしまう
国の要をそんなあっさり見せてはいけない。

・はっきり願いを叶えないと言ってしまう。
嘘でもサバの願いを尊重してなんだかんだ理由をつけてはぐらかせば良かった。

・星の目撃情報を国民から募ってしまう
不安を煽るだけだったので、自分がやった事にしてこっそり部下に探させていれば良かった。


おまけその2:疑問点

・願いの基準
見た感じ1人1個のようだったが、複数ある場合や取られた後に欲求が生まれた場合はどうなるのか。

・三大欲求
ご飯が食べたいは願い?では美味しいご飯が食べたいは?
睡眠は?一日中怠けていたいと言う願いの人が願いを取られたらキビキビ働くようになるの?
性欲は?前2つよりかなり欲求が濃く出そうだし、危険因子でもありそう。取られたら性欲無くなるんですかね、どうやって子孫を残すのだろう...???

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