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心の見える化 -学校嫌いの私が「せんせい」になるまで-

#この仕事を選んだわけ

『人生で大切にしていること』をキーワードで表するなら、
あなたは何が浮かびますか?

「家族」「恋愛」「音楽」「サッカー」「ペット」「友情」「アイドル」「日本酒」「リラックス」「美容」

人それぞれの人生のキーワードがあると思う。

私は大学を卒業後、出版業界で4年間営業をし、退職を機に1年ほど海外を貧乏旅し、今は国語の「せんせい」という仕事をしている。
深く考えることが苦手で、直感でしか生きられない私は、いつもキーワードで人生の選択をしてきた。

例えば・・・
大学進学では、「東京」「文学」「自立」「青春」で田舎から東京の文学部へ。
高校時代は根暗で真面目な自称文学少女な私。大学デビューと言わんばかりに好きなことを楽しんだ。初めてできた恋人や心から大切ないつもご機嫌な親友たちとたくさん笑った。

就活では、「文学」「旅」というシンプルな好きなことしか頭に浮かばず、出版社と旅行会社をひたすら受けた。
運よく希望していた出版業界に入ることができたが、好きだからという気持ちだけで本は売れない。
でも、本を売ることが会社員として一番必要なことだった。

新卒の会社を退社するときは、「自由」「やりがい」「旅」ということで小さい頃から憧れていたバックパッカーをしようと考えた。
とても楽しい世界一周で、南米ではウユニ塩湖やマチュピチュに感銘し、一番のお気に入りの中央アジアでは民芸品やモスクにうっとり、ヨーロッパでは美術館巡り、街並みを歩くだけで心躍る。アフリカでは旅が全然うまくいかなくて、いつもイライラしていたけどそれも今となっては懐かしい。

一人ひとりの物語。そしてこれは、私だけの物語。
人生の選択をたった三つ書くだけでも、とても大切な経験。

私は今「せんせい」と呼ばれる仕事をしている。

「せんせい」とひらがなで書くのは、私が高校で国語の教師をしていることを、今でも不思議だなと思うから。

母校のサッカー部にOBとして顔を出すという同僚とか
頭髪検査とか防寒具の指定、つまりは規則とか
厳しくも愛のある罵声とか
生徒の中ではっきりと分かれたグループの区別とか
ただひたすらに騒がしい笑い声とか

全部を否定する気はもちろんないけれど、私の苦手なものがいっぱいあるのが「学校」だから。

心と向き合う仕事、お金に直接的に関係のない仕事、文学に関わる仕事

人生のキーワードをたくさんつなげていった中で、私が最終的に絞って残ったものが上の三つだった。

バックパッカーとして、中東を抜けて冬のコーカサス地方を一人で旅していたころ、そろそろ旅の終わりを考えないといけないなと思った。
空気がつんっと寒くて、一人で安宿の布団にくるまって、ちょっと寂しいなって思いながら、終わりや次を決めないと自分の心がもやもやしてしまうなと。

直感で生きてきた自分が嫌いなわけでもないし、後悔していたわけでもないけど、なんなら、それ故に大切なものに貪欲な自分に満足さえしていたけれど、しっかり、人生のキーワードを見極めなくてはいけないと思った。

コーカサス地方のアゼルバイジャンの伝統菓子

心の中を整理したい。
それがこの記事のタイトル、こころの見える化です。マインドマップとか論理の可視化と同じかな。

マインドマップ(英: mind map, mindmap)とは、トニー・ブザンが提唱する、思考の表現方法である。頭の中で考えていることを脳内に近い形に描き出すことで、記憶の整理や発想をしやすくするもの

Wikipedia

人生で大切にしていることをどんどん書き出して、まとめて、絞っていくと、私は国語の「せんせい」という仕事が向いているかもしれないと思った。

学校が好きだからとか恩師に憧れてだとか夢とか小さな頃からの夢で・・・などとは全然違って、直感で出していったキーワードから冷静に導いた職業だった。
(文学部に行くときに、母に「教員免許とったら?」と言われて取得した偶然もあった。)

私は、疑う気持ちで、目を細めて、恐れながらもその扉を開けてみることにした。
私はあの学校という閉鎖的な空間で、個性を押しつぶされて、無理やり知識を詰め込まれたのだ!とそこまで被害者意識を持つほど学校が嫌いだというのに。

扉を開けるために、もちろんそれなりに努力もして、私はその扉を開けた。
直感のキーワードを紡いで、導かれたルートを進んでみた。

その仕事を選んだ結果・・・

私は月曜日の雨が苦痛ではない。
長期休暇の最終日に、明日の早起きが嫌だなとは思っても、生徒に会うのが楽しみだなと思う。
国語の勉強をじっくりしている時間はとても楽しい。
ちょっとした変化に気づいて伝えたときの嬉しそうな生徒の顔。
悔しそうな顔も失敗も、落ち込みながら話してくれる相談内容も、一人ひとりの物語を感じる。

学校が嫌いであることに変わりはないし、苦手な気持ちもきっと一生払拭できない。
でもそういう「せんせい」も必要だとも思う。
人を成長させたい!だなんて恐ろしくて、おこがましくて、とてもとても言えない。
でも、目の前のあの子の良いところを伝えたい、と心から思う。

私がこの仕事を気に入っているか、気に入っていないかはきっとこれだけ書けば十分伝わると思う。
学校は嫌いだけど、自分の心のキーワードにとてもあった仕事だったのだ。

心の中に浮かぶキーワードを紡いでいくということ。

マインドマップとはよく言ったもので、心の地図とにらめっこしていれば、「あなたが気に入るはたらく場所」に、目的地に、たどり着く。

『あなただけの物語の地図は、あなたが気づかないだけで、心の中にはずっと前からあるのだ。』


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