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「ダークフォトンの水底で」

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ゲンロンSF創作講座 便乗小説#02「ダークフォトンの水底で」プロット&アピール

※小説家になろう、カクヨムに重複執筆

●プロット●
「『うきゅぅーーーーーーきゅぅーーーーー!』
 うるさい。お空にたぷたぷ水が浮かぶ惑星ユクスの、アースで癒しなものなら何でもラブな女子が聞けば血相変えて喜び大ジャンプ(たぶんパンツ見えてるよ)間違いなし、宇宙クジラの鳴き声が遠くに聞こえる宇宙港でおれは最高級のワイン三昧」(冒頭より)

 おれ、水基大事。ダイジと読むけど、不幸な人生を思えばオオ

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ゲンロンSF創作講座 便乗小説#2 「ダークフォトンの水底で」(1)

1 夜来たる

「うきゅぅーーーーーーきゅぅーーーーー!」
 うるさい。お空にたぷたぷ水が浮かぶ惑星ユクスの、アースで癒しなものなら何でもラブな女子が聞けば血相変えて喜び大ジャンプ(たぶんパンツ見えてるよ)間違いなし、宇宙クジラの鳴き声が遠くに聞こえる宇宙港でおれは最高級のワイン三昧。ていうかこれほんとにワイン? ご自慢の研究者脳がべろんべろん、スポンジ化しつつあるおれがこのお話の語り手、水基大事

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ゲンロンSF創作講座 便乗小説#2 「ダークフォトンの水底で」(2)

2 暗い日曜日

 ダークフォトンってのはいわゆるダークマター=暗黒物質の正体のひとつで、カッツ博士の仮説が物理学のマジすごい学術誌、フィジカル・レビュー・レターズに乗ったのが2013年。欧州宇宙機関が打ち上げた宇宙望遠鏡ガイアが実際に観測したのは2020年のことだった。当時10歳だったおれは、その大発見を、東京オリンピックをテレビで見てる途中、デレピコ! デレピコ! と割り込むニュース速報にブチ

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ゲンロンSF創作講座 便乗小説#2 「ダークフォトンの水底で」(3)

3 サウンド・オブ・サイレンス <(1)「水」は世界相対的であるが、その意味においては一定である、(つまり、語は一定の相対的意味をもつ)と主張される。この理論では、「水」はW1とW2で同じものを意味するのであって、まさに、水はW1ではH2O、W2ではXYZである。 (ヒラリー・パットナム 「意味」の意味)

 ……この理論を、我々は前提から変形させる必要に迫られたのだった。すなわち

(2)しかし

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ゲンロンSF創作講座 便乗小説#2 「ダークフォトンの水底で」(4)

4 ダンサー・イン・ザ・ダーク

「あはは、災難だったねえ。じゃあ、ダイジくんは、体よく利用されちゃったってわけか」
 ほんとだよ。まあ、今でもよくわかんないんだけどさ、とにかく気付いたら、魔術師も、ほかの科学者の連中もいなくなっちまってたんだよ。かくれんぼしてんのかと思って「もーいーよーー!」って叫んでも誰もでてこねえしさ。仕方ないから一人で帰る途中、心細くてちょっと泣きそうになった、ってのは内

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ゲンロンSF創作講座 便乗小説#2 「ダークフォトンの水底で」(5)

5 恋は盲目

 雨が降っていた。こんなことは、惑星ユクスでは初めてのことだった。「空が泣いているよ」「いよいよおしまいだね」ちょっとロマンチックにつぶやいたのは、どこかの山奥で暮らしていた仲良し五人組。おれたちを除けばユクス唯一の生き残りだ。町から離れてたから大勢の嘆きに触れずにすんでたんだな。でももうおしまい。さよならおやすみ、と最期も仲良く睡眠薬の一気飲み。どうかよい夢を。
「きゅきゅーーー

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ゲンロンSF創作講座 便乗小説#2 「ダークフォトンの水底で」(6)

6 「大切なものは、目には見えない」 アカリ、お前はアカリではない。
「ダイジ、あなたはダイジじゃない」
 アカリ、おれはお前を愛していない。こんなにもアカリそのものであるお前を。
「ダイジ、私はあなたを愛していない。こんなにもダイジそのものであるあなたを」
 そういって、握っていたこのアカリの手を離して、だからこそおれは、かけがえのないあいつを、あのアカリを愛していることを、こんなにも強く感じる

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