どんポ

日々、些細なことに気を取られ。

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最近の記事

リアリティ・トランジット

今日から連休で、横浜の実家に帰る。 行きは高速バス、帰りは新幹線の予定だ。 仙台から東京まで、新幹線なら1時間半。バスだと6時間くらいだ。そしてゴールデンウィークなら料金はバスも新幹線もそれほど大きく変わらない。 それでもバスに乗るのは、いつもと違う景色が見たいからに過ぎない。 新幹線から見える景色、新幹線を降りたあとの東京駅の感じ、丸ノ内線へ向かう景色、地下鉄の蛍光灯。 そんな風景はもうありありと目に浮かぶから、バスに乗る。 20代の頃に、この文章と出会って、私が求めて

    • 紙の名は

      どこに旅行に行ってもスーパーや市場、トイレの写真を撮ってしまう。 そしてトイレットペーパーも。 これは江戸東京博物館のトイレットペーパー。 「輝」か…としみじみした。 国技館の隣である江戸東京博物館のトイレに、力士と同じ名をした「輝」というトイレットペーパーが置いてある偶然性。 そしてトイレットペーパーに「輝」と名付けたくなる背景に思いを馳せる。 これは香川県高松市の駅か玉藻公園。 こちらは宮城県の秋保温泉郷のカフェ。 大体トイレットペーパーの名前は、こういったお花

      • ほんとの空

        これは10年ほど前に二本松の智恵子の生家を訪れた際、近くの丘の上にあった像で、「やまなみ」という題がついていたけど、きっと智恵子がモデルなんだと思う。 ああ、この人、ここでずっとほんとの空を見てるんだな、あれが安達太良山とか、あの光るのが阿武隈川、とか言いながら、と思った。 夢見るような、幸せな顔をして。 2年前の夏、仙台に引っ越してきて、なんて空が広いんだ、と驚いた。 そりゃあ智恵子も「東京には空が無い」と言うはずだ、としみじみした。 私が「空が広い!」と驚くたびに友

        • こぬか雨

          昨日の仙台は霧雨が降っていた。 霧雨か…、と思っていたら友人から「こぬか雨だね」とLINEが来た。 こぬか雨。 その言葉は知っていても、実際どんな雨なのか知らずに生きてきた。 「来ぬか雨」だと思っていて、ざーっと来るか来ないかくらいのパラパラ雨のことか、なんて勝手に想像していた。 本当は「小糠雨」 降る、と言うより、米糠のように微細な雨粒が音もなく降り、傘をささなくても良いほどの雨のことだそうだ。 「米糠のように」という比喩表現にびっくりする。 人生で一度も使用したこ

        リアリティ・トランジット

          種を蒔く人

          仙台に引っ越してきて最初の春、冬があまりに長かったので、やっと春が来た!と浮かれて友達のくまちゃんを花見に誘ったら、くまちゃんは冷静に言った。 「畑の種まきがあるので行けません」 種まき! その言葉にも驚いたし、ああ、畑って種から育てるのだな、ということにも驚いた。苗かと思ってた。 そんなくまちゃんに誘われて、今年は大河原の一目千本桜を見に行った。 「今年は種まきしなくていいの?」と聞くとくまちゃんは明るく答えた。 「今年はもう撒きました。去年は桜が早すぎたから花見に

          種を蒔く人

          されば世の

          されば世の紆余曲折は柿生より鉄町へ伸びてゆく道            今野寿美 昔、母が短歌をやっていて、たくさんの歌集を集めていた頃にこの歌を知った。 そしてそれからしばらくして、この歌にある「柿生より鉄町へ伸びてゆく道」のすぐ近くに引っ越してきた。 だからなんとなく、「地元の歌」のイメージがある。 あの道を通る時、いつでもあの歌が頭をよぎって「紆余曲折か」と思った。 あの街を離れて2年。そろそろあの街に帰ろうと思っている。 世の紆余曲折を経て、再び。

          されば世の

          おばあちゃんのノート

          亡くなった祖母がまだ元気だった頃、何かにつけてノートを取り出し、あれこれと書きつけていた。 それは読んだ本の名前や感想だったり、気に入った短歌や俳句だったり、新聞の切り抜き、ラジオで聴いたいい話、思いついた時だけ少し書く日記、そしてきっとばあちゃんが「なるほど!」と感心して書き留めたのであろう様々な知識。 「おばあちゃん、ちゃんとメモしてあるから。ほら見てご覧」と時折差し出された手帳をじっくりと読むことが出来たのは、祖母がもう長くない、ということで呼ばれた病室でだった。

          おばあちゃんのノート