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逆噴射小説関連

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「ニンジャスレイヤー」で有名な創作翻訳チーム、ダイハードテイルズが営む賞や小説講座にまつわる記事をぶっこんだマガジン。ほぼ自分用。
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2023年10月の記事一覧

真夜中の檻

真夜中の檻

 小型の護送車が横転していた。
 夜の山道のど真ん中だ 。あやうく激突しかけた。私は車を降りた。ボロのコートではひどく寒い。
 ヘッドライトに照らされた車体に近づいていく。前方が潰れていた。砕けたガラスが靴の下で鳴る。

「止まれ」と声がした。
 車の陰から腕が伸びている。手には銃、テーザーガンと一目でわかった。
「抵抗するな。いいか」
 私はあぁ、と答えた。

 姿を現したのは、長い黒髪の青年だ

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聖女の囁き

聖女の囁き

 暗い路地に逃げ込んだ直後に追いついた。手首を握りひねり上げる。
「知らねぇよ!」男はわめいた。「あんたの女なんか見たこともねぇって!」
「マリア……本当にこいつもか?」 ジグは聞いた。
「そうよ」
 耳元で女の囁き声。
「こいつも、私を殺した連中のひとり」
「そうか」
「あんた、一人で何喋って」
「黙れ」
 髪を掴んで顔面を壁に叩きつける。二度。三度。四度。男は真っ赤になって地面にずり落ちた。

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にぎやかな葬儀【逆噴射小説プラクティス】

にぎやかな葬儀【逆噴射小説プラクティス】

 公園のベンチで本を読んでいると、汚れたTシャツ姿のオッサンがそばにドカッ、と腰を下ろした。

「ふぅ~っ、暑いね!」

 言いながら自分の横にトロフィーを置いた。木製の台座が血まみれだった。銀のプレートには「優勝!」の3文字。台座から屹立している金色の胸像の顔は、オッサン本人だった。

 俺は文庫本をそっ、と閉じて、「暑いですね」と返した。
 平日昼の公園、誰もいない。俺とオッサンのふたりきり。

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