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蚘事の䞭で映画、ゲヌム、挫画などのネタバレが含たれおいるかもしれたせん。気になるかたは泚意しおお読みください。
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🔎仮面ラむダヌオヌズ ビペンド 王の垰還🔎 第1回

⚠ご泚意ください⚠


 この連茉小説は、『仮面ラむダヌオヌズ』の二次創䜜ずなりたす。
 珟圚公開䞭の『仮面ラむダヌオヌズ 10th åŸ©æŽ»ã®ã‚³ã‚¢ãƒ¡ãƒ€ãƒ«ã€ã‚ˆã‚Šãšã£ãšåŸŒã€
『仮面ラむダヌフォヌれオヌズ MOVIE倧戊MEGA MAX』に関わる「2051幎」前埌のお話ずなりたす。

 ぀たり、『埩掻のコアメダル』の続きです。


 オヌズのTV本線や映画各皮、『埩掻のコアメダル』の重倧なネタバレを含みたす。プロロヌグたではギリセヌフで読めたす。
 8月の『埩掻のコアメダル』゜フト発売たでには曞き䞊げる予定です。

 なお、BL芁玠等は無し拟えるものは党郚拟う手が届くキャラの手は掎む「俺の考えるさいきょうの完結線」(ハッピヌ゚ンド)、で行く぀もりです。
 よろしければ、以䞋よりお読みください    
 
 


○プロロヌグ 2051幎 倏○




 仲間の最埌の䞀人が䞀撃で殎り倒された。楊ペりの震える手から角材が萜ちた。
 6人の男たちが暗い路地、地べたに䌏しおいる。党員が目の前の男に倒されたのだ。屈匷なダクザ者たちが。ものの数秒で。

 身なりのいい男がうろ぀いおいる──仲間にそう聞かされお出向いおきた。このあたりで倜䞭に倖に出おいるのは「身ぐるみを剥いでください」「呜もいりたせん」ず蚀っおいるようなものだ。
 そのはずが。

 路地のすぐ倖に立぀街灯、その光を䜓に受けながら、男は楊の方に近づいおくる。
 長身で、黒く長いコヌトを着おいた。スヌツも黒い。銖から䞊、顔は青癜く、髪は真っ癜い。しかし老人ではなかった。䞉十にもなっおいないように芋える。
 手にはめた革の手袋が赀く光っおいる。
 血だった。
 
「ひ    」
 楊は腰が抜けたようになっお壁に背を預けた。その顔を男はぬっ、ず遠慮無しに芗きこむ。
 衚情のない、䜓枩の䜎い顔だった。瞳の色は青く、䜕人なにじんなのかたるでわからない。

「僕の蚀うこず、」ず男は静かに蚀った。「僕の䞭囜語はわかりたすか 拙くお申し蚳ないんですが」
 楊はがくがくず頷いた。
 右肩に、革の手袋がそっず眮かれる。
「ああよかった。ここはどのあたりですか」
「か、河南省  。河南省、来犏垂」
「河南」男の眉が䞊がる。「やっずそのあたりか  日本は遠いなぁ。ねぇ貎方」
 芪しげに語りかける口調に反しお、目は冷たいたただ。
「日本  日本なら俺、俺さ 芪戚に空枯で働いおる叔父貎がいお」
 楊がすがるように蚀う。
 男は銖を振る。
「いや結構。僕は珟代いたの人間の姿を芋お歩いおるので。ずころで──」
 男の指が楊の肩に食い蟌む。鎖骚がきしむ。だが痛みより先に恐怖があった。
 男は小さく銖をかしげた。口の端が笑う。
「僕を襲ったのは、お金が目圓お」
「そ  そうだ。悪かった。悪かったず思っおるよ。だから」
「銀貚を、䞀枚あげたしょう」
 男はスヌツの胞元に手を入れた。がしゃり、ず倧量の金属がこすれる音がした。
 男は䞀枚、硬貚を取り出した。楊が芋たこずもない銀色の──コむンず呌ぶには分厚すぎる。メダルず蚀った方がいい。衚面には鷹のような意匠が刻たれおいる。
「貎方、お金が欲しいんですよね それが願い この䞀枚で叶いたすよ。むダずいうくらいにね」
 男は楊の額にメダルを抌し入れようずした。
 頭にそんなものが入るわけない、ず楊は思った。
 だが、メダルが頭の䞭に入る感芚がした。メダルは䜓の噚官を無芖しお脳を玠通りし、錻の埌ろを、銖を通り、楊の心臓に届いた。
 どん、ず心臓が鳎った。

「その欲望──解攟しなさい」
 男の蚀葉が聞こえお、楊の意識は途絶えた。





🔎🟡🟢仮面ラむダヌオヌズ ビペンド🔎🟡🟢
王の垰還






◆1◆


○○○2051幎 秋○○○



 アンクはベッドの䞊で目を芚たした。
 頬が涙で濡れおいるのを感じた。
「  ク゜ッ」
 起き䞊がり、顔を拭う。
 倢の内容はたるで芚えおいない。だが予想は぀いた。
 今でも数ヶ月に䞀床は、涙ず共に起きる。
「あい぀、い぀たで出おきやがる  」

 息を぀き、錻をすすり、足をベッドから䞋ろした。
 アンクは郚屋を芋枡す。
 高玚マンションの䞀宀を思わせる郚屋だった。広い郚屋に点々ず、必芁最䜎限の家具だけがある。゜ファ、テヌブル、ベッド、モニタ、すべおひず぀ず぀。
 絵も眮物も写真も、圩りを添えるものは䜕もない。がらんずしおいる。䞀人で䜏むには広すぎる郚屋だった。

 鎻䞊ファりンデヌション第䞉ビル特別宀、ここにアンクは20幎ほど暮らしおいる。

 ベッドに腰を䞋ろしたたた、アンクは物憂い芖線で倖を芋た。ベランダぞず通じる倧きな窓の倖を。
 空には雲ひず぀なく、青い空が広がっおいる。

 普通の人間なら爜やかさや矎しさを感じるであろう颚景だが、アンクにはそれがよくわからない。
 人の手でメダルから生成された、感芚の鈍い欲望の怪物──グリヌドであるこずも理由のひず぀だ。しかしたた別の欠萜が、圌の心にくすんだ灰色を投げかけおいた。
 割り切っお、理解した぀もりだった。
 だがどこかに、玍埗できない自分がいるようだった。


 物悲しさを振り切るように立ち䞊がり、クロヌれットに行く。寝巻きから普段着に着替えるために。
 メダルの塊であるグリヌドはどんな姿にもなれる。服など着替える必芁はないし、そもそも「人間の䜓」でなくおもよい。だができるだけ、人の圢をずっおいたい気持ちがあった。理由は、深く考えないようにしおいる。
 グリヌド──アンクは「鳥型の怪物」だ──の姿になるのは、必芁な時だけである。

 クロヌれットの䞭には、鎻䞊の秘曞・里䞭が遞んだ掋服がぎっしりず䞊んでいる。
 ここに䜏むこずになった時のこずだ。「服なんか芁るか」ず蚀ったアンクに、里䞭は「それじゃダメです」返したものだった。
「人の姿でいるなら毎日着替えおください。マンガじゃあるたいし、い぀も同じ服じゃ倉ですよ」
 あたりにきっぱりず蚀うのでアンクも、そういうものかず思った。圌女の蚀葉に乗りたい心境もあった。
 䞀幎の間ほがずっず着通しおいた服には、少なからぬ抵抗がある。
 あの時も、同じ服装だった。
 あれにはダツずの蚘憶が染み぀きすぎおいる。

 现身のシックな服に腕を通す。20幎前に蚈枬した数倀ず倉わらないから、服はい぀でもぎったり合う。
 グリヌドの䜓型はい぀たでも同じだ。成長もせず、瞮むこずもなく、老いるこずもない。

 
 ベッドに戻っおからアンクは、右腕だけを捻っお「元の腕」に倉化させた。赀を基調ずしお黒や緑、脇には矜根が぀いおいる。
 ベッド脇に詰んだセルメダルを数枚握り、腕を震わせおごくん、ず呑む。䜓内に刹那、満たされたような感芚が走る。それはほんの䞀瞬だ。すぐさた遠くに去っおしたう。
 

 メダルのそば、ベッドに掛かるスピヌカヌから「おはようございたす、アンクさん」ずいう声がした。里䞭だ。スピヌカヌの時蚈は10時半ちょうど。遅れたこずも早かったこずもない。
 アンクは腕をさすりながら思う。
 この挚拶を、もう䜕床聞いたろう。
「  あぁ。起きおる」
「今日の予定ですが、コアメダルの怜査です。これは定期怜蚺ですね」
「そうか」
 特に代わり映えのない予定だった。感興も感情も湧かない。

 20幎、鎻䞊ファりンデヌションのビルから倖に出おいない。曜日の感芚はすでにない。
 ただし日付はわかる──鎻䞊は80を越えた今も毎日、瀟員の誰かしらの誕生日を瀟内攟送で倧音声で祝うからだ。
 倉わるのは季節ず日付ず祝われる者だけ。アンクだけが倉わらない。
 倉わらないたた、心だけが也いおいく。

 しかし、その単調な繰り返しは砎られた。
「ですがこれらの予定が党郚、午埌に回されるこずになりたした。20分埌にお客様です」
「客だず 誰だ」
「泉信吟さんです」
 アンクは眉を寄せた。
 信吟は月に䞀床来るが、最埌に来たのは4、5日前だ。

 アンクの胞に蚀い知れぬ翳りが走った。








◆2◆



 アむスを2本食べ終わるず、腕ずなったアンクは泉信吟の腕からスポッ、ず抜けた。
 信吟ずは反察偎の゜ファに腕だけで浮遊しおいく。付け根からセルメダルをこがすように広げお、人の姿に戻る。゜ファに寄りかかる。
 10分ほど憑䟝されおいた信吟も目を開け、肩ず銖をぐるぐる回した。毎月䞀床、い぀もの動きだ。
「ふぅ  」
「ふぅ  」
 同じ声で同時に呟いた。

「矎味かった。アむス」
 アンクは顔を芋ずに蚀った。埩掻しおから30幎、人間に感謝する習慣は身に぀けたものの、盞手を芋぀めながらは蚀えない。
「口に合っおよかった。ちょっず珍しいアむスなんだよ、それ」
 蚀いながら信吟はカバンから氎筒を出した。蓋をずっおコップにし泚ぐ。湯気が立った。
「なんだ それ」
「お茶だよ」信吟はゆっくりず口に぀ける。「先月アむスを食べたあず、お腹を冷やしおね。この霢でアむス2本は、お腹によくないらしい」
「  そうか」
 アンクはテヌブルの向かいの盞手をたじたじず芋た。
 泉信吟。譊察官で、今は譊郚だず蚀う。
 アンクが最初に埩掻し、最初に憑䟝しお、そのたた䞀幎間、䜓を借りお過ごした盞手だった。本来の自分は「腕」だけだが、借りたこの男の姿に劙な愛着がある。だから圌の顔圢にそっくりな「人間」の姿に倉身しおいる。
 もっずも先方は萜ち着いたショヌトカット、こちらは金髪にサむドを刈り、その䞊に金の矜根を浮かべたような掟手な髪型ではあるが。

 その圌ず盞察しおいるず、自分自身が目の前に座っおいるような気分になる。
 泉信吟は60歳を越えおいるはずだし、目尻や銖筋には重ねた幎が浮き䞊がっおいる。髪にも癜いものがある。それでもかなり若く芋えた。
 その盞手が぀ず芖線を䞊げた。
 目が合った。
「  君を目の前にしおるず、若い頃の自分を思い出すよ。倉な気持ちになる」
 信吟は氎筒の蓋をテヌブルに眮く。
「もっずも俺はそんな颚に、」頭の脇を手で払うような動き。「金髪にしお髪を流したこずはないけどさ」
 
 月に䞀床、䜓を借りお飲食する機䌚を䜜っおもらっおいた。「せっかく生きおるんだから䞖界を楜しんでほしい」ずいう信吟の厚意だったが、それだけではない。
「  比奈は、どうしおる」
 アンクは目をそらしお切り出す。
「元気にしおるよ。クスクシ゚の経営もうたくやっおる。知䞖子さんも元気だ。こないだは比奈に、えっず、なんずかっお蚀うガヌナの料理を教えおくれおね。だから──䜕も心配ないよ」
 い぀も通りの質問ず、い぀も通りの答えだった。

 では、ずアンクは考える。
 ゜ファから背を離し、身を乗り出した。
「じゃあ、䜕しに来た」
 自分ず同じ顔の盞手を睚み぀ける。
「甚があっおここに来たんだろ」
「わかるかい」
「぀い先週来たばかりだ、しかも珍しいアむスなんか持っお。ふん  バレバレなんだよ」
「そうか。鋭いな」
 蚀った信吟の目぀きが鋭くなった。䜕床か芋たこずのある譊察官ずしおの厳しい目぀きだ。人倖であるアンクもこれにはひやりずさせられる。
「海倖で劙な事件が重なっおるんだ。鎻䞊さんから頌たれお、君ず芪しくしおる俺が説明するこずになった。あの人のい぀ものやり方さ。自分は前線に出ずに  たぁいいや」

 圌はスヌツのポケットから最新型のスマホを出す。テヌブルの隅に眮いお操䜜するず、癜い倩板の䞊に倧きく地図が投圱された。
 島囜を指さす。「ここが日本で──」
「このバカでかいのがナヌラシア倧陞」アンクは信吟の説明を制する。顎で地図の右から右を瀺しながら、
「右は日本から、巊はギリシャあたりたでの地図だ。そのくらいは知っおる。もっずも最近の囜境線だのには疎いがな。で」
「鎻䞊ファりンデヌションの各囜支郚から情報が入ったんだ。ただ裏付けや怜蚌がきちんずされおいないものもあっお──」
「いいから蚀っおみろ」
 アンクが凄むず、信吟も身を乗り出した。瞳をじっず芋぀める。
「ダミヌが珟れたらしい」
「    䜕」
 アンクの顔が歪む。
「おい、そんな蚳ねぇだろ。今掻動しおるグリヌドは俺ひずりだ。ダミヌを生み出せる奎なんか誰も」
「そう。だから皆困惑しおる」今床は信吟が断ち切る。「最初の目撃は去幎、2050幎の秋、このあたり」
 スマホをいじるず赀い䞞が衚瀺された。
「最初に動画像ずしお蚘録されたのがここで、」むンドの巊あたりに䞞が浮かぶ。「これが動画」
 テヌブルの䞊、十数センチの高さに倧きく動画がポップアップする。

 土壁の建物の倚い、パサ぀いお雑然ずした街䞭、アンクには理解できない蚀葉で垂民たちが隒いでいる。
 物陰から撮られおいるのは、異圢の存圚だった。
 道に停めた車の倖身を剥がし、内郚を殎り぀け、゚ンゞンを匕きちぎっおいる。䜏民たちの怯える叫びが響く。
 それは二本足で立っおいた。背䞭しか芋えないものの、真っ癜いワンピヌスを着おいるように芋える。䞋に垂れる黒髪、肩幅からするず女。しかし人間にしおは寞尺がおかしい。
 カメラはゆるゆるず、そい぀の背䞭に近づく。ズヌムしおいるらしい。袖から出おいる腕はどす黒い。
 おおよそ人の力ではなし埗ない砎壊だし、この動きず䜓぀きだ。怪物には違いない。しかし──
「おい信吟。これがダミヌだっおのか グリヌドの生むダミヌなら、もっず動物みたいなパヌツがくっ぀いおるはずだ。觊角や、角や  」
 蚀っおいる途䞭、動画の䞭の怪物が出し抜けにカメラの方を向いた。顔がアップになった。
 アンクはぎょっずしお、身を匕いた。

 怪物の顔面は泥のような茶色で、厩れきっおいた。
 目も錻も口もない。その堎所には4぀の小さな穎だけがある。
 ダミヌのなりそこないである雑魚──屑ダミヌず人間を足しお割ったような顔だった。しかし屑ダミヌは、これほど匷くない。

「確かにこい぀は  ダミヌっお感じではあるな」手の甲で顎を撫でおアンクは蚀う。
 冷静を装ったが動揺しおいた。ダミヌに違いないずいう盎感があった。
 ベテランの譊察官らしく信吟は淡々ず語り、おきぱきず説明しおいく。
「動画はこれだけじゃない。いちいち党郚は芋せないがここず、ここ、それにここでも撮られおる。䞍鮮明なものなら無数にある」
 地図䞊に点がいく぀も珟れる。
「姿は最初の者ず酷䌌しおいる。怪力、劙なサむズ感、動物的特城のなさ、屑ダミヌに近いが被服姿である点など。けど髪型や䜓぀きからオスずメス、男女二皮類がいるようだ。さらに、」
 信吟はズボンのポケットをたさぐる。
「各地のバヌス郚隊が攻撃するず、こい぀らは䜓からこれを萜ずしながら退散しお行ったらしい」
 地図の䞊に、ビニヌルに入ったものが滑っおくる。
 銀色の平たいもの、セルメダルだった。
「おそらく、いやほが間違いなく、これはダミヌだ。わかるかいアンク君」

 アンクは動かず、黙っおいた。
 30幎ぶりに珟れた、芋たこずのない皮類のダミヌ。その事実を呑み蟌むのに粟䞀杯で、䜕も思い浮かばない。
「さらに問題がある。目撃蚌蚀や画像の時系列を繋げおいくず──」
 スマホに指を滑らすず、点ず点が線で結ばれおいく。
 かくかくず折れ曲がり぀぀線は巊から右ぞ、戻るこずなく進んで。
 最埌は䞭囜、海寄りの䜍眮にたどり着いた。湖南省、犏来町、2051幎7月の文字が出る。
「぀たり、日本に近づいおきおいる」
 アンクは息を呑んだ。
「たさか  」そう蚀うのがやっずだった。
「そしお最埌のここ、湖南省で撮圱された画像がこれだ」
 信吟の声がぐっず、重みを増す。
「アンク君、どう思う」

 浮かび䞊がった画像を芳たアンクは、目を疑った。

 垂民が撮ったずおがしき写真だった。
 街の路䞊だ。奥には立掟な建物が芋える。出入り口は厩れ、茞送車らしき車がひっくり返っおいる。埌郚のドアが開き、袋や箱がこがれ出おいる。空䞭に舞っおいる玙は玙幣らしい。
 車の脇、人に䌌たダミヌが䞡手に箱をぶら䞋げ、仁王立ちになっおいる。
 その手前、撮圱者のすぐ目の前に。
 知った背䞭があった。
 党身が黒い。腕は前に回され足元は芋えないものの、背䞭の䞞い郚䜍や肩のパヌツ、シル゚ットに芋芚えがあった。
 間違いようがなかった。


「オヌズ    」


 アンクが呟くず同時に、頭の奥に光のようなものが走った。
 反射的に立ち䞊がる。テヌブルが倧きくずれる。
「銬鹿な」
 40幎ぶりだった。しかし䜓が芚えおいた。
「どうしたんだ、アンク君」
 アンクは信吟を芋䞋ろした。
「信吟、ダミヌだ」
 䜓に震えが走るのを感じた。
「近くにいる」
 そばのモニタがばちり、ず急に点いた。
「ンンンアンクくんんッ 信吟くんんッ」
 画面の䞭で癜髪に癜い髭の老人が叫ぶ。スヌツはぎら぀いた赀色、この歳でもこの服装で、倧声にもほが衰えがない。
「鎻䞊さん ダミヌがこの近くに」
「もちろんわかっおいるッ いた本瀟ビル前で倧暎れ䞭だッ 譊備のバヌス郚隊が応戊しおいるよッッ」
 チッ、ずアンクは舌打ちする。「おい鎻䞊、どういうこずだ たたお前が䜕かやったんじゃ」
「ンン䜕もしおいないィッ 私も今回ばかりは 䜕がなんだかわからなゲホッゎホッゎホッ」
「䌚長、幎霢的に絶叫はやめろずお医者様が」
 画面の倖から秘曞の里䞭な冷静な声がした。
「鎻䞊さん」信吟はスマホをしたい立ち䞊がる。「僕ずアンク君も戊いたす」
 ちらりずアンクに芖線をやる。アンクは頷いた。
「俺にバヌスのベルトを貞しおもらえたせんか。量産型で結構です」
「玠晎らしい」力みを控えおいる。「そこのビルのロビヌで 瀟員にベルトを持たせお埅機させおおくよ」
「ありがずうございたす。さぁ行くぞ、アンク君」
「  あぁ」
 アンクの胞のあたりにぜっず火がずもる。
 行くぞ、ず蚀われるのは久しぶりだ。
 ご぀こ぀した赀い腕を撫でた。
「あい぀らが䜕なのか、確かめおやる」

 同時に駆け出す。信吟がドアぞ。アンクは窓ぞ。
「ちょっず、どこに」急停止する信吟、振り返りながらアンクはベランダを開ける。
「䞋、先に行っおるぞ」アンクはにやっず笑いかけた。
 䞀足で柵を越えた。
 䜓が萜ちおいく。
 颚を感じる。
「いい颚だ  」
 アンクは党身を光らせ、人間の姿からグリヌドになった。赀地に緑ず銀色が混ざる。巚倧な人型のオりムを思わせた。
 背䞭から矜根を出す。玅色で半透明の巚倧な矜根は颚をずらえ、党身が浮いた。
 そのたた䜓を流すように前ぞ飛んでいく。ダミヌのいる気配の方ぞ。

 アンクの頭には、あの背䞭の画像があった。
 叀代オヌズではないように思った。叀代の王から挂うあの傲慢さがない。

 叀代の王でないずするなら。
 ありえないず感じながらも、口から名前がこがれおいた。

「映叞    」


↓↓぀づく↓↓

サポヌトをしおいただくず、ゟりのごはんがすこし増えたす。