顧客プロセス_vs_営業プロセス

BtoBマーケティング、顧客プロセスと営業プロセス、どっちを管理するの?

 クライアントマーケティングの進捗会議でいつも思うことが、何のプロセスを管理するのか?である。よくありがちなのが、資料問い合わせ件数、アポイント件数、訪問件数、提案件数、見積件数、受注件数といった営業の行動プロセスをKPIの指標に設定しているケースだ。このプロセスから得られる改善策は、「訪問件数が足りていない」「アポイント件数が足りていない」といった中身のない件数の議論に陥りがちで深い議論にならない。最終的に帰結するのは各営業個人の営業プロセスを管理するかたちになる。
 顧客の視点から見た顧客の購買プロセスを管理するとどうなるのか。顧客プロセスをざっくり可視化すると、無関心状態からはじまり、課題の認識、解決策の探求、比較検討、見積決済、発注、満足、再発注、といった流れになる。このプロセスから得られるのは、「課題の認識をするために必要な顧客のニーズは?」「解決策を探求するうえで必要な顧客のニーズは?」「比較検討するうえで必要な顧客のニーズは?」「見積決済する上で必要な顧客のニーズは?」「発注後に顧客が満足するうえで必要な顧客のニーズは?」といった、顧客の購買に至る各プロセスでどんなニーズがあり、何を解決してあげれば次のプロセスに進むのか、であり課題や解決策がより明瞭になり深い議論ができる。最終的に帰結するのは各顧客のプロセスを管理するかたちになる。
 実態として営業プロセスと顧客プロセスの管理のどちらが主流であるのかわからないが、SFAツールを提供している企業のWebサイトのサービス紹介ページを見ると、以下の通り営業の行動をトリガーとする営業プロセスの管理が主流のようである。

Sales Cloud(セールスクラウド)

Senses(センシーズ)

 上図を見てわかる通り、営業各個人の営業プロセスを可視化はできるものの、顧客のプロセスがわからないので営業プロセスの件数(例「訪問件数が足りない。」)や各個人の活動状況(例「あなたの提案の質が悪かったのでは?」)に着目せざるを得ず、冒頭にも述べたが最終的には各営業個人の営業プロセスを管理するかたちになる。この場合、企業の都合が優先され、売れない理由が営業の責任にされる、顧客が不在の議論になりがちである。

 少し脱線するが、最近特に強まっていると思うのが個の発信だ。アパレルの販売員がTwitterやInstagramでコーディネートを披露し、採用広報を目的として社員がnoteやブログに様々な取り組みを披露する。個々人がメディアと化し、直接ユーザーに発信したりコミュニケーションする。企業と個人の関係性が変化し、より企業の透明性が求められ、「中の人」の取り組みや価値観までもさらされる。そこで注意しなければならないのが、企業は顧客のプロセスを管理するのか、営業のプロセスを管理するのか、である。危険と思うのは営業プロセスの管理だ。個人のメディア化というと聞こえがよいが、営業の行動プロセスを管理することになれば、売れなかった場合や採用できなかった場合に、最終的には個人の営業責任、広報責任にされる可能性がある。個の時代を隠れ蓑として企業が責任を全て個人に負わせることになりかねない。
 ブランドは、個人が会社を辞めても長く続く。顧客の購買プロセス管理の視点に立てば、商品やサービスや営業や販売員や社員がどのプロセスのどのニーズを解決する役割を担うのか、そこを明確にすることで、売れなかった場合に、最終的には顧客の認識や行動のどこを変化できなかったのか、顧客のプロセスに集中するかたちになる。
 営業会議でも、販売会議でも、採用会議でも、その会議で何のプロセスを管理しているのか、そのプロセスに着目してみるとよいかもしれない。

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