見出し画像

これまでの仕事 これからの仕事を読んだ #これこれ仕事

はじめに

師匠であり、盟友である市谷聡啓さんの新著「これまでの仕事 これからの仕事」が発売されました。

サブタイトルにこそ「アジャイル」が踊っていますが、一瞥してアジャイルの書籍だとは気づかない、これまでの著作とは趣の異なる佇まいの一冊。
実際、本書はパラパラと流し読みする分にはこれまででもっとも「アジャイル」色が薄く、それでいてしっかり読み込むとどの著作よりも血肉にアジャイルが宿っている、という印象を持ちました。 

圧倒的読みやすさ

市谷さん本人が読書家だということを反映してか、市谷さんの著作はそれなりに重厚な佇まいのものが多いです。しかし、本書はなんと200ページちょっと。技術的な専門用語はほぼ出てこない。エンジニア、非エンジニアに関わらず、今の働き方に思うところのある、もっとよくなりたい、したいとあう志のある人なら誰でも完読できるような読みやすさがあります。

ベスト・オブ・市谷聡啓

行き過ぎた最適化、効率化への継承。
ふりかえり、むきなおり、ものわかりを軸にした探索と変革。
現状維持のモメンタムと向き合い乗り越えるための越境。

仮説検証サイクル、ゴールデンサークル、チームマネジメント。ここ最近の市谷さんの活動といえば「組織アジャイル」で、そこに軸足を起きながらこれまでのベストプラクティスが洗練された形で次々と提示されます。(1人SECIのあたりは、さらに深掘りされ変化していくような気もしています)

変化したくない立場からのまなざし

印象的なのは本書のスタンス。「これからの仕事」とあるとおり、明確に従来型の計画主義的プロセスからの脱却を志向しています。ですが、本書では脱却「したくない」力学、心理について丁寧に語っています。変化を仕掛けるのであれば、その対象の目線に立つ。宇田川先生の「他者と働く」の考えに通じるものを感じ取りました。

気になったところ:ふりかえりはネガティブから!?

アジャイルコミュニティに身を置く人ならば、3章の「ふりかえり」には驚きを覚えるかもしれません。私は驚き、少し戸惑いました。
ここで紹介されるプロセスでは、まずネガを共有し、そのあとポジを共有するというプロセスでした。
ネガを最初に共有するとその空気に呑まれやすいこともあり、まずポジから共有しようというのが常套手段になっています。なぜあえてネガからなのか?ここは市谷さんと話す機会があったら、直接聞いてみたいところです。

Agile ip eating the world.

ソフトウェアが世界を食べ尽くしてから、もう一体何年経ったのでしょうか。そして今度は、ソフトウェア開発プロセスとして20年以上前に産声をあげたアジャイルが世界を食べようとしている。その流れの中に佇み取り残された人たちを、組織を、一歩前に進めたい。そんな意志がそこかしこから伝わってくるのがこの「これこれ仕事」です。

ここに書かれていていることを実際に試してみる。
一緒に変化を起こしたい人たちにこの本を共有する。
本から迸る熱量を受け取り自ら行動する。
私達読者がまずそういった変化をすることこそが本書のアウトカムでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?