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【SIREN考察】羽生蛇村における『因果律』の正体

※ネタバレを多く含みますのでご注意ください。

※この考察は、考察というよりは仮説に仮説を重ねた、もはや妄想です。そのつもりでお読みください。

SIRENとは

プレイステーション2で販売されたホラーゲーム。2003年11月6日発売。

他人の視界を覗き見る「視界ジャック」という能力を駆使し、屍人と呼ばれる敵から逃れつつ戦うステルスアクション。

2006年2月には続編の『SIREN2』、2008年7月には第3作『SIREN:New Translation』が発売されたほか、2006年にはメディアミックスとして、映画化もされています。

羽生蛇村を支配する『因果律』

『因果律』とは、「全ての事象には必ず原因があり、原因無しには何も起こりえない」という哲学的考え方です。早い話が、原因があるから結果(事象)がある、という、ごく当たり前の話です。

『SIREN』においては、羽生蛇村にかけられた呪いのひとつとされ、「一定の法則に従い、強制的に定められた結果になる」と解釈されています。

羽生蛇村における因果律の最たる例が、27年前の吉村兄弟(後の牧野慶・宮田司郎)の生還です。

吉村一家は、昭和51年8月3日深夜、神に花嫁を奉げる儀式の失敗により異界に取り込まれましたが、その日の夜には現世へ生還し、儀式の失敗により代替わりを迫られていた教会と、後継ぎを失った宮田医院へ引き取られ、それぞれ求導師と院長として育てられることになりました。

この現象を羽生蛇村の因果律で解釈すると、「儀式の失敗により求導師と院長後継ぎが求められたため(原因)、吉村兄弟が現世へ生還する(事象)」となります。

この、羽生蛇村の因果律に関しては、「呪いの力により吉村兄弟は強制的に帰還させられた」と解釈している人がほとんどではないかと思います。私もずっとそう思っていました。しかし、最近紹介した『羽生蛇村の呪いの正体は因果の成立』という説に基づいて考えると、少し内容が違ってくることが判りました。

ループするSIRENの世界

『因果の成立』に関する考察は、上記のふたつの記事を読んで頂きたいのですが、簡単に説明すると、「1300年間続く羽生蛇村の呪いは、2003年8月5日23時に恭也が堕辰子の首を落とすため。これにより、比沙子が過去に首を届けて堕辰子が復活する、××村33人殺しの都市伝説が生まれ興味を持った恭也が村を訪れる、天武12年に堕辰子の幼体が堕ちて比沙子に食べられて呪いが始まる、などの因果が成立する」というものです。

恭也が堕辰子の首を落とさなければそれら全ての因果が成立しないため、最悪の場合世界が破綻してしまう可能性もあるわけです。よって、羽生蛇村に呪いをかけた『神よりも上位の者』は、なんとしてでも恭也に堕辰子の首を落とさせ、因果を成立させる必要があったのです。その結果が、羽生蛇村1300年のループなのです。

ゲームをプレイした方なら、このループ現象を身に染みて体験したと思います。SIRENではほぼすべてのステージに2つの終了条件が設定されており、条件1を満たすだけでは必ずどこかで行き詰まって先へ進めません。そうなったらやり直しとなり、終了条件2を満たさない限り繰り返し同じステージをプレイする羽目になるのです。そして、全てのステージで終了条件2を満たすことで、最終的に恭也が堕辰子の首を落とすことができるのです。

つまり、SIRENの登場人物は『恭也が堕辰子の首を落とす』という結果を強制されており、それに従わない限り永遠にループするのです。

これこそが、SIRENにおける『因果律』の正体ではないかと考えられます。羽生蛇村における『因果律』とは「一定の法則に従い、強制的に定められた結果になる」のではなく、「一定の法則に従い、定められた結果になるまで強制的にループさせられている」のです。なるべくしてなっているのではなく、なるまでループしているのです。

因果律によって与えられた役割

羽生蛇村の因果律が「一定の法則に従い、定められた結果になるまで強制的にループさせられている」のであれば、先ほど挙げた吉村兄弟の生還は、呪いの力により強制的に帰還させられたのではなく、2003年の四方田春海の生還と同じく、多くの人が何度も何度もループを繰り返した結果ようやく生還できた、ということになります。

ここで疑問に思うのは、なぜ2人は教会と宮田医院の後継者に選ばれたのか? ということです。

吉村一家は教会とも宮田医院とも血縁関係は無く、村では一信者及び一患者にすぎません。後継者としては、もっとふさわしい人がいるようにも思います。それなのに、なぜ『因果律』は、この2人を選んだのでしょうか?

これも、『因果の成立』という観点から見ると、その理由が判ってきます。

牧野慶・宮田司郎が果たす役割

羽生蛇村における因果律が、すべて『恭也が堕辰子の首を落とす』ためならば、牧野と宮田に与えられた役割は明白です。恭也に宇理炎を渡すことです。

宇理炎とは、不死なる物を無に還すことができる神器で、倒しても何度でもよみがえる屍人を消滅させることができます。その威力の前には堕辰子さえも例外ではありません。恭也は堕辰子との戦いで、まず宇理炎を使って堕辰子を弱らせ、神代の宝刀・焔薙で首を斬り落としました。その後の屍人虐殺にも使用されていますので、宇理炎は『恭也が堕辰子の首を落とす』という因果の成立のために必須のアイテムと言えるでしょう。

この宇理炎は、8月5日の9時に求導師となった宮田の手から恭也に渡されています。これこそが、27年前に吉村兄弟が異界から生還できた理由と考えられます。

順を追って説明すると。

1976年、吉村兄弟が異界に取り込まれる。

現世へ生還(異界での詳細は不明)。

教会・宮田医院へ引き取られる。

1976年~2003年、それぞれの村での立場から、双子の因縁が生まれる。

2003年、儀式の失敗により、牧野・宮田が異界に取り込まれる。

旧宮田医院で牧野と宮田が再会。牧野のヘタれっぷりに宮田が呆れる。

宮田が先代美耶子から宇理炎を託される。

中央交差点で牧野と宮田が再会。宮田が真の求導師として目覚める。

恭也に宇理炎を渡す。

ということになります。

また、宮田に関してはその後ダムを破壊して屍人の巣を崩壊させたことも因果の成立に一役買っています。巣の崩壊によって堕辰子は陽の光を浴びて瀕死の状態となり、いんふぇるのへ逃げ帰ります。その後堕辰子が恭也に敗れたことでいんふぇるのは崩壊し、比沙子と堕辰子が奈落に堕ちていくことで、因果が成立するのです。

こうやってSIRENの登場人物の行動をたどっていくと、ほとんどの人物が『恭也が堕辰子の首を落とす』という因果を成立させるために動かされていることが判ります。

他の人物の例を見てみましょう。

竹内多聞が果たす役割

因果を成立させるために竹内に与えられた役割は、8月5日深夜に恭也と共闘し、配電盤を壊すことで恭也を屍人の巣の中枢へ到達させることだと考えられます。

順を追って説明すると。

1976年、儀式の失敗により竹内家が怪異に襲われる。多聞は難を逃れたが、両親は異界に取り込まれる。
(家族全員が同じ部屋にいたにもかかわらず多聞のみが異界に取り込まれなかったのも、何度もループしている可能性が考えられます)

1976年~2003年、両親が行方不明になった真相を探るために民俗学者となり、羽生蛇村の秘祭を調査する。

2003年、27年ぶりに秘祭が執り行われることを知り、帰郷。

村を調査し、八尾比沙子の正体に気づく。

水鏡に到達するも、堕辰子の暴走により意識を失い、比沙子によって恭也と共に監禁される。

恭也と共闘し、配電盤を破壊して恭也を屍人の巣へ到達させる。

竹内に関してはこれ以外にも因果の成立に一役も二役も買っていますが、ここでは省略します。

と、まあこの3人に関してはまだよいのですが、他の人物に関しては、かなり悲惨なことが起こっている可能性があるのです。

高遠玲子に与えられた役割

高遠先生に与えられた役割は明白で、刈割の地で灯篭に火を灯し、聖獣・木る伝を解放することです。解放された木る伝は、その後恭也が手にした神代の宝刀・焔薙に宿り、堕辰子の首を落とすことになります。

これだけならなんてことはないんですが、問題は、ここに至るまでの過程です。

高遠先生の因果を説明すると、

~2001年、村外の学校で教師をする。結婚し、めぐみという娘に恵まれる。

2001年、娘が海水浴場で溺れ死亡。

夫と離婚。実家である羽生蛇村へ戻る。

2003年4月、羽生蛇村の小学校に赴任、四方田春海の担任となる。

春海に死んだ娘の面影を重ねる。

両親が死んだ春海のために星を見る会を企画。

2003年8月、春海・校長と共に星を見る会に参加。儀式の失敗により、異界に取り込まれる。

屍人化した校長から逃れるため学校を脱出。

刈割で灯篭に火を灯し、木る伝を解放。

と、なります。

問題は前半ですね。高遠先生が木る伝を解放するためには実家である羽生蛇村に戻ることが必要となるわけですが、そのきっかけとして、娘であるめぐみちゃんの事故死と離婚があります。

この流れが因果律によるものならば、めぐみちゃんが事故死するまでループしていることになるのです。

まさに、どうあがいても絶望……。

その他の人物にも『因果の成立』のために与えられた役割があるのですが、かなり長くなるのでまた別の考察でお届けします。

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