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耳鳴り潰し1

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 リサの両親にまず娘が気が付いた。背の高いエストニア人の夫婦だ。続いてリサに気が付いた息子が彼女に駆け寄っていくと、リサの方でも息子に気が付き、互いに嬉しそうな顔をしていた。一つ下で、現在は年長組のリサ。幼稚園にいた頃は仲が悪そうだったのに。約一か月ぶりの再会後すぐに、巨大滑り台に並んで滑っていた。偶然公園で出会った、同じクラスの女子とも一緒だった。

 耳鳴り潰し。

 常に耳元にハウリングしたマイクを置かれているような状態、といえば分かってもらえるだろうか。手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」の中で、空港の近くに住む男が、騒音ノイローゼになり、熱湯を自分の耳に注ぐシーンがある。彼の気持ちが少しは分かる。

 耳鳴りを止める音楽、というのも聴いてみたが効果はない。自分の好きな曲を流している方がよっぽどいいみたいだ。もしくは耳鳴りを忘れるくらいに何かに集中すること。自分にできることは何か。何かしら書き残すこと。書き続けること。耳鳴りを潰すための文章を書こうと思う。一日500文字程度。前日のことを思い出しながら。

 娘に恋愛相談をされたがうまく答えられないでいると「非リアだったか」と指摘を受けた。その通りだった。


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