闇ドラ一話:あなたとわたし
※初めてちゃんと書いた小説かつ処女作でした。
長文投稿に陥るのも初々しく感じます。
投稿サイトに掲載した作品を処女作と読んでいいのかは分かりませんが、自分の話を描きたくて『私小説』にのめり込んだ作品でもあります。
なるべく掲載当時のままにしておりますが、読みにくい表現には修正、加筆等をさせて頂いております。
お楽しみ頂ければ幸いです。
あらすじ
闇ドラとは。
それぞれの死者達の生き様である。
わたし
『どうしてうまくいかないのよ!!』
それから“わたし”の人生は一変した。
正確には「死んで」いた。
気がつけばわたしの前には死体があった。性別はまばら。基本「男」が多いかな。
手と手を繋いでいる老若男女。憎いとか羨ましいとかではない。
死んでいるからなのか、わたしの性格なのか、ペアを殺害ばかりしている。
『幽霊』なんて信じてないけど肉体は死んでも殺人って出来てしまうんだな。そう思った。
『何が怨みだ。
法に縛られないのならなんだって犯してしまうのが人間だ。』
死んで言える言葉。そして知ったのがなんの得もないことを平気でしてしまうのが人間なんだと。
「何してるんだ。」
誰?わたしが見えるの?
「まあな。俺も人間じゃないから。」
見た目は若そうな男。黒のスーツ姿だが高くはなさそうだ。
就活生の幽霊とは世紀末だな。
そしてわたしは警戒した。こんなわたしでもいたずらに得体の知れないものに攻撃はしない。
「あんた、なんで人殺してんの?」
知るか。
理由があれば許されることでもなんでもない。
若そうな男は黙るわたしに質問を続ける。
こいつもまともじゃない。最初からわかっていたこと。
とあるカフェ
「ってなんで死んでるのに喫茶店で喋るの?」
男がぶっきらぼうに反応する。
「誘われて第一声がそれかよ。」
わたし達は誰にも見られないし触れられない。座る意味もないしお金を払う必要もないから店の隅に立っている。
なんだか中高生みたいで恥ずかしく感じた。
「急に連れてきて悪いな。」
根がヤンキーなのかもしれない。
雰囲気に流され男をフォローしてみる。
「ま、まあ定番だし。」
連れていかれるわたしもわたしだが。
まあ、わたしが死を自覚してから誰かを殺さずに喋るのも初めてだし。
「俺が喋ってばっかだったから、あんたから話してよ。」
ずっとこの男のペースだ。でもこの男のことを聞かないとわたしも話がし辛い。
「あなた何者?わたしが見えて、わたしの今までの行動を把握して堂々と話しかけられるなんて同じ幽霊?なんなの?」
男は捲し立てるわたしを気にせずに返事をする。
しかも笑ってる。
「はは。だからじゃない?俺も似たようなものだから。」
もしかしたら…。
恐る恐る私は男に質問をする。
「貴方も誰か殺したの?」
頷く男。
そしてあたしを見て笑みから真顔になる。
「あんたを殺す。」
急に男はナイフをあたしに向ける。
幽霊だがあたしは避けた。
そりゃそうだ。
あたしでも物理的に人を殺している。
あたしに効かないという確信はない。
「理由を話してくれたら然るべき手続きをしたかったんだけど…あんたガード堅いんだもん。」
親密なムードになることはない…か。
どんな理由で使命に忠実なのは分からないけれど、彼は私を狙っている。
「何者か知らないけど、あたしが殺人を犯しているから処罰しにきたわけ?」
聞くまでもないか。
「俺はあんたみたいなタイプを取り締まる存在。だが個人的な形で。」
「組織ではなくあなた自身の判断なわけ?」
法がないわけだから纏まった組織もないのか。
それにこの男が誰かと手を組むとは思えない。
「私情を入れてあたしを殺すの?
いろんな物語に触れすぎておかしくなるなんて。恥ずかしい死に方をしたみたいに感じるけど。」
男はナイフを下げた。
「別にそうじゃねえよ。
あんたが理由なく男女のペアを殺すように、俺もあんたらみたいな奴らの相手をしている。」
でも、と間をおく男。
「殺すって言ったけどもう少しあんたと話したくなったよ。」
変わり者なタイプか。あたしは一体なんなのか。
「話すことはないと思うけど。」
「まあせっかくだしさ。」
カフェに場所を移したのは正解だったかも知れない。
ふと視界に入った店長の落ち着きがあたし達の殺気を和らげる。
あたしは一旦落ち着いた。
「よくある話よ。
結婚したり、好きなことやってみたけど思う通りにいかなくて自殺したの。
で家族を道連れにしようとしたけどできなくてね。」
一家心中した後の話を若い頃に無くなったかもしれない男に話すことになるとはね。
「それで他人を殺してたのか。
しかも俺が見た限り行き詰まってるペアばかり。」
「見てられなかった。
誰のせいでもないのに幸せを押し付けられて理想に溺れて狂っていくペアを見ると。」
他人から聞けば身勝手な理由かもしれない。
けれど自分達に取っては重大な選択をした。
それだけだった…はずだ。
「あんたの眼には、彼彼女らが“殺してほしい”と願って見えて自分の解釈で殺してたわけか。」
「話を先読みしないで。」
でも彼の言う通り。
けど今更どうこう言われる筋合いはない。
ここまで来ると理由なんて飾りだ。
なぜなら自分達は死んでいるから。
彼は黙って聞いている。
「あたしが狂っていることもわかってる。
でも死んでみて初めてわかった。
特に変わらないって。
無になりたかった。
でもわたしがしたのは子供達を置いたまま不幸にしただけ…あたしに価値なんてなかった証明になっただけ!」
こんな感情を抱き、他人?他霊?に吐露するのは生死問わず初めてだ。
彼は何を思うだろう。
「それでも辞められないよな。」
「何?説教でもするのかと思ったけど。」
「俺もあんたら幽霊を殺してるんだぜ。
理由なんかいくらでも浮かぶしな。」
「あたしをどうするの?」
「殺すよ。
でも俺はただ自己中心的に動いている。
生きるために殺すこと以外はただの傲慢だ。
俺は理由をつけない。
だからあんたさ。
しばらく俺と一緒に行動しないか?」
本当…わたしもあなたも勝手なことばかり。
理由もいらないし、逆に我儘でいいか。
人を殺した時点で”わたし”はもうまともに生きていないし、まともに死んでなどいない。
「そうさせてもらう。けど、この先どうするの?」
彼は一言。
「自己中に周る。」
とだけ言い放った。
多くは語らない“あなた”
語ってもしょうがない“わたし”
魂は永遠とか不滅と聞いたけど、それだけは事実らしい。
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