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100冊読書計画009『もし「右」や「左」がなかったら 言語人類学への招待』井上京子著

反省を込めて先に記しておく。
僕は日本語しか話せないのだが、心のどこかで、日本語とは他の言語に比べると複雑かつ多彩な表現ができる素晴らしい言語なのではないかと思っていた。

しかしそうではなかった。
いや、素晴らしい言語だと思うことはできるが、「他の言語と比べて」という部分は明確に否定すべきだ。
言語にはそれぞれの世界があり、多彩な表現とはその世界において必要な情報を言語化しているだけなのだ。

この本のタイトルは『もし「右」や「左」がなかったら』となっているが、我々が日常のなかで重要な情報だと思っている右や左という言葉は、その言語によって重度が変わってくることを示している。
それは東西南北で示されたり、山側か海側かで示されたり、横という概念でのみ示されたり、胸側か背中側かで示されたりする。
我々はそれを語彙力の欠如と捉えそうになるが、決してそうではなく、その地域や生活や文化において、その表現が最も合理的だからそうなるのだ。

言語が違うとは、つまり思考が違うし、思考が違うと世界が違う。
言語とは比べるものではない。この本を読んで、僕はそれを痛感し、反省した。

日本語のみ話せる人は、恐らく日本語の世界しか認められていないのだと思う。もしそうなら、是非この本をおすすめしたい。

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