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山の主

昔々、ある村に、山の神様に仕える神官がいました。
神官は毎日、山のふもとにある神社で祈りを捧げ、
山の恵みに感謝していました。
神官は山の神様にとても敬虔で、山の神様も神官を気に入っていました。

ある日神官は山に登って、山の神様に直接お礼を言おうと思いました。
神官は山道を歩きながら、山の美しさに感動していました。
やがて、神官は山頂に近づきました。
そこには大きな岩があり、その岩の上には、
白い髪と髭をたくわえた老人が座っていました。
老人は神官に微笑みかけて、手招きしました。

神官はその老人がすぐに山の神様だと悟り、恐れおののきながら、
岩の前にひざまずきました。
老人は神官に優しく声をかけました。
「お前は、毎日、私に祈りを捧げてくれる神官か。
私はお前の信仰心に感動した。何か願いがあるなら、言ってみなさい。
私はお前の願いを叶えてやろう」

神官は驚きと喜びに満ちて、老人にお辞儀をしました。
「山の神様、私はあなたにお会いできて、とても光栄です。
私には願いはありません。私はただ、あなたのお力になりたいと
思っています。どうか、私にあなたのお使いをさせてください」

老人は神官の答えに感心しました。
「お前は、とても謙虚で忠実な者だ。私はお前の願いを聞き入れよう。
お前には、私の代わりに、山の管理を任せる。
お前は、山の動植物や水源を守り、山に住む妖怪や魔物を退治し、
山に登る人々に道案内をし、山の恵みを分け与える。
お前は、私の眼と耳と手と足となるのだ」

神官は老人の言葉に涙を流しました。
「山の神様、ありがとうございます。私はあなたのお言葉に従い、
一生懸命に働きます。どうか、私にあなたのお力とお知恵とお優しさを
お貸しください」

老人は神官の頭に手を置きました。
「お前は、私の力と知恵と優しさを受け継ぐ。お前は、私の後継者となる。私は、お前にこの山を託す。お前は、この山の新しい神様となるのだ」

そう言って、老人は光に包まれて、消えてしまいました。
神官は、自分の身に起こったことをすぐには信じられませんでしたが、
老人の言葉を忘れませんでした。
神官は、山の神様となり、山を守り続けました。
神官の名は、やがて村人たちに知られるようになりました。
村人たちは、神官を「山の主」と呼び、敬って祭りました。
それから、この山には、山の主の伝説が語り継がれるようになりました。


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