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【オトナとは】 読書記録 「キャベツ炒めに捧ぐ」

「オトナ」になったら、何事に対しても「大人げある」対処ができるようになるのだと思っていた。自分の軽はずみな態度や言動に「大人気ないなあ」なんてしょんぼりするたびに、「まだまだ私はガキだなあ」などと思い、「オトナ」の「オンナ」に憧れを募らせていた。

でも実際には、幾つになっても「大人気ない」こともするし、間違えることもあるし、ちょっぴり愚かなことをしてしまったり、自分の発言の直後に「しまった」後悔して、後戻りができなくなったが故に意固地になってしまったりする。

でもそれが、人間として生きることの側面なのだろう。

登場人物の誰もがちょっぴり愚かで、何がしかの秘密を抱えていて、でもその秘密がチョンバレで。しかも周りにチョンバレなこともうっすら分かっているのに素直になれなくて。

「好き」「嫌い」「許せる」「どうでもいい」「羨ましい」など、若い頃の感情は、パキッとしていた。ドロドロの感情すらも、混じり合った色が、マーブル模様にはっきりしていた。

年を重ねるにつれて、感情の中の色が、一言で表現できなくなった。「大切だけれど、悲しみを扱いきれなくて憎むしかない」とか「いっそ嫌いになれればいいけれども完全にいなくなってしまったら途方に暮れてしまう」とか。

そういう幕間のような、淡いのような瞬間や気持ちが増えていくことが年を重ねるということなら、「オトナ」になるということは、それを丸ごと受け止めることなのだろう。ジャッジする自分の心ごと。

一筋縄ではいかない心模様を、そのままで愛しむこと。そして、周りの人たちにもそういう心があることをも、そのまま受け止め、受け入れることなのだろう。

こんな60歳になれたらいいな。丁寧に、お夕飯を拵える自分でありたいな。

明日も良い日に。



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