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【一人称カメラとは】 ピアノリサイタル - マルティン・ガルシア・ガルシア

1年ぶりのガルガルくん。今回は、ピアノのみ。


オーケストラとのコラボが「映画」だとしたら、ピアノソロは「一人称カメラ」だ。ガルガル君の目線で、楽曲の風景が切り取られていく。

ガルガルくんの音からは、光の乱反射を感じる。今回は、その光の具合が一人称カメラ故に、個別具体的だった。例えば、蜘蛛の巣の上の朝露の光。古い洋館の大きな窓から差し込む月光。その月光に照らされる、ノスタルジックなブリキのおもちゃ。

オーケストラだと、洋館内の会話や時間経過、ドラマ展開など、沢山の要素を感じるけれど、ピアノの一人称の場合、同じ洋館が舞台だったとしても、焦点はどこかに絞り込まれている。時間経過もあまり感じない。個人目線だと時間が伸び縮みすることに似ている。紫陽花の花弁にたまっている水滴に目を奪われていたら、何十分も経過しているように。

そんなことをぼーっと考えていたら、1幕終わりの「葬送」の最後、「パリーン」とガラスが割れるような音がした。はっと我に返った。シャンパングラスが落ちて割れて、1幕が終わった、ように感じた。

インターミッションを経ての、ブラームスのソナタ。

ガルガルくんのブラームスは、湿度が低くてカラッとしてるのに、ふくよかだった。

ブラームスの、ちょっととっつきにくい、良くも悪くも上流階級独特の気品と、どこまでも気さくで心の開いたガルガルくんの組み合わせによって、理想の若い侯爵様が目の前に現れた。ご本人は可愛いぽっちゃり男子なのに、ブラームス楽曲から見えたその侯爵様は、かなりすんなりとしていた。でもひ弱な感じはしない。多分乗馬とかすごく上手。犬は確実に飼ってる。(妄想です)

ブラームス、こんなに素敵だったのか。巨匠捕まえて何いうだけれど、今までそんなに思い入れが無かったのだ。心を入れ替えます、ごめんなさい。

そして相変わらずのアンコール祭り。あんだけの楽曲をひたすら弾いて、汗びっしょりなんよ。もうさっさと終わらせてシャワー浴びに行きなさいよ、っておばちゃんは思わずにはいられませんでした。そんな老婆心をよそに、きっちり5回、アンコールに出てきてくれたガルガルくん。3時間近くの演奏を、本当にありがとう。

ミューザ川崎。螺旋のようなホール。形も面白いのだけれど、響き方も素敵だった。拍手の鳴りは、やっぱり大阪のフェスティバルホールとか、浜離宮の朝日ホールが好きだけれど、ピアノの鳴り方や、ガルガルくんのハミングの声の響き方は凛々しくてとても好き。

また来よう。

アンコールは以下:

モンポウ:歌と踊り、4番
ショパン:子犬のワルツ
ラフマニノフ:練習曲「音の絵」5番
リスト「巡礼の年第二年イタリア」より「婚礼
ショパン 「猫のワルツ」

去年のガルガルくんエントリーは、以下。

明日も良い日に。

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