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11/3 京都府京丹後市のマフィン

11月頭、京都府の最北端、日本海に面した京丹後市へマフィンを焼きに行きました。

常連のお客さんが地域のコーディネーターをしていて、京丹後にオフィスがあるので来てみませんかと。その地で観光事業をしている方と繋げたいというお話と、地元のお祭へのお誘いを頂き、行ってみることに。

京都駅からさらにバスで2時間、鎌倉からは6時間半はかかる京丹後市。こんな機会がなければ二度とご縁がなかっただろう場所です。

行きの足は、関係者の方のはからいで、京丹後の外国人向けツアーに特別に同乗させていただくことに。京都駅からバスに揺られ、途中英語での自己紹介(まさかそんな流れになるとは思わず動揺)を交えながら外国人の方々に囲まれて京丹後入り。

その後しばらくツアーの行程に同行しつつ(紡績工場の見学などさせて頂き、それもまた見応えがあった)途中から私は、長瀬さんという地域の観光コーディネーターの方の車に乗せてもらって、弥栄町というエリアへ。

オーガニックファーム「てんとうむしばたけ」さんを訪ねました。

自分の子どもに安心して食べさせられるものを作りたい、とインスタント食品の会社から農業へ転身したという梅本さんの営む有機農家・てんとうむしばたけ。

広い敷地の一角には、積み上げられた巨大な土の塊があり、これがてんとうむしばたけさんの野菜づくりの基礎になる土。草や作物の根や葉を土に戻し、それを微生物が土にするまで寝かせておく。そうやって長い年月をかけて出来上がった元気な土がうず高く積み上がっていました。

作物を植える時は、ここから土をとってきて畑に混ぜ込むそう。いわば秘伝のたれのように、年月をかけて少しずつ継がれてできてきたものです。

そんなインパクトのある土とそのお話を聞いた後で食べる、畑の葉 野菜のおいしさ。特に葉野菜は、土の良さがそのままダイレクトに野菜に伝わるのだそう。

虫食いが目立ち「これは収穫できないけど」と葉をぽきっと折って渡してくれた白菜が、私にとっては驚きの味。

白菜ってあまり味のしない野菜だと思っていたのですが、ちゃんと緑の味がして、食べ終わっても5分後まで「おいしい」と思うような跡を引く白菜でした。

冬に季節のケーキで白菜を使いたい気持ちが密かにあったのですが、この白菜に出会ったらそれが動き出しそうな気がしました。

このパクチーもおいしかった。臭みが全くなく、パクチーの個性のいいところだけが残っているような味。つんとした強い香りがしないので、苦手な方でもこれはいけそう。

今年は大豊作で、でも京丹後ではまだまだパクチーは浸透しきっていないから、なかなか出荷先もないのだとか。これはマフィンにしたいと思いました。

そんなてんとうむしばたけさんと、そこから車で数分の場所にある、お弟子さんが営む農園「SORA farm」さんで野菜を仕入れ、近くのシェアキッチンへ。

ここもとても綺麗なキッチンで、フードコーディネーターの女性が営む素敵な場所でした。

予定より随分時間がおして、到着したのが17時頃。あたりはすっかり暗く、これから明日のイベントに向けて焼いたら一体何時になるのだろうと一瞬心が折れそうになるも、目の前にある野菜のためにも焼かねばという気持ちに。

暗がりのなか急いで撮った野菜

順に野菜の下拵えをして、持参していたスパイスや調味料と見比べながら考えつつ、着々と焼きあげていきました。

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・赤じゃがいも(タワラヨーデル) 桑の葉のジェノベーゼソース くるみ

事前にコーディネーターの長瀬さんに「京丹後らしい食材を使いたい」と話していたら提案されたもののひとつが桑の葉。

絹織物の一大産地として知られる京丹後(今回出店したのも「ちりめんまつり」)で、絹の原料になる蚕が食べる葉で何か作れたらおもしろいのではないかと。

桑の葉を粉末状にしたものは、溶かして飲む茶葉として売られているのですが、風味は抹茶や青汁のようにほろ苦い感じ。

生地にそのまま混ぜ込むのだとあまり面白くないかな…と、調べていたらジェノベーゼソースにできるよう。

にんにくのすりおろしとオリーブオイルをあえてソースにし、蒸したタワラヨーデル、くるみと合わせてパスタみたいなマフィンに。

このソース、塩を多めに効かせたのですがとてもおいしかった。ジェノベーゼソースのほろ苦いバージョンのようで、マフィンのほんのり甘い生地にもよく合い。鎌倉でも近々作りたい味でした。

・アカモク 白あんとパルメザンチーズのチーズあん つるむらさき

アカモクも京丹後の特産として、長瀬さんからすすめて頂いたもの。日本海で獲れる、めかぶのようなぬめりのある海藻。最初はこれだけを生地に混ぜ込むつもりでいたけれど、てんとうむしばたけさんの畑で出会った肉厚なつるむらさきと合わせて、ねばねば同士を生地に入れることに。

海藻を入れるときは、生地の塩も強めに効かせて海感を増すのが好み。

白あんを持ってきていたので、ここにも塩気を効かせたく、パルメザンチーズとシュレッドチーズをたっぷり加えた白チーズあんに。

スコーン生地に折り込んで、和洋折衷のスコーンに。これは今回の中ではちょっと冒険で、焼き上がるまでどうなるか少し不安だったけれど、できあがったら面白い味になりました。

・白味噌 金時にんじん ホワイトチョコ けしの実

京にんじんをマフィンに使いたく、てんとうむしばたけさんのものを仕入れました。

キャロットケーキのように生地に混ぜ込んだマフィンではなく、にんじんを具として楽しめるマフィンにしたかったので、鍋に塩と油を入れてじっくり蒸し焼きにし、大きめにざくざくと切って生地の中へ。

白味噌とほんのりホワイトチョコを合わせ、あまり変わり種になじみのない地元の人でも食べやすいようなマフィンに。これはイベントでもやっぱり人気でした。

・赤からし菜 はちみつ クリームチーズ

これも鎌倉ではあまり見かけない、赤いからし菜。
そのまま食べると辛みはほんのり、水菜のようなか弱い食感。 

あまり強い個性はないのかなと思い、シンプルなスコーンとして作ろうと生地に混ぜ込み焼いてみたら、なんとも言えない香ばしくていい香り。
マスタードリーフ=マスタードシードのように、油を合わせて焼き込むとこんな香りになるのかと新しい発見でした。

コクのあるクリームチーズと合わさって、仕上げに塗ったはちみつの甘さもあり、シンプルだけど奥の深い不思議なおいしさのスコーンに。
これは組み合わせの妙ではなくて、まさに野菜そのものの力量。こういう驚きがあるからやめられません。

・パクチー 紫いも&さつまいも ベーコン

てんとうむしばたけさんで豊作だというパクチー。けれど町の人にはあまり人気がない(パクチーが苦手な方が多い)と聞いて、これはもう使うしかないと急遽仕入れることに。

甘みのあるさつまいもと合わせたら食べやすく試してもらいやすいのじゃないかと、蒸した紫芋(SORAfarmさんのパープルスイートロード)とさつま芋(てんとうむしばたけさんのさつまいも(紅はるか)をパクチーと合わせて生地に練り込み、ベーコンを巻き込むことに。

甘しょっぱくてパクチーがスパイスのように香る、面白いスコーンになりました。

そしてこれは色合いがとてもかわいい(紫・黄・緑)夜中に焼いていて疲れてきたときに、この色味に癒された。

・海老芋 あんこ レモンピール

海老芋は京エリアで高級芋とされる芋。里芋なのだけど、ぬめりよりホクホクとした食感が強く、どちらかというと今doyoubiでケーキにしている甚五右エ門芋の親芋に近い味。

前々から和菓子のようにあんこと合わせてみたかったので、今回は甘い方向に。生地にレモンピールを入れてもったりしすぎないようにし、シンプルに蒸した海老芋と、あんこを合わせました。

これは、会場で食べてくれたアメリカ人の男性が「すっごくおいしかったよ!」と言ってくれたのが印象的。
今回は外国人の方(絹織物に興味のある観光の方)がたくさんいるイベントだったので、あんこを使ったマフィンを焼けてよかった。

・万願寺とうがらし ソーセージ

最後に作ったのが、シンプルな万願寺とうがらしとソーセージのドッグスコーン。てんとうむしばたけさんに大きなとうがらしがなっていて、思わず買わせていただいたもの。力強くておいしそうだったから、シンプルにソーセージと巻き込みました。

シェアキッチンにあるのは電気オーブンで、いつものように焼いてみたらマフィン1種を焼き上げるのに1時間かかることがわかり大誤算。


今回は時間が限られていたのであらかじめ焼くものの見当もつけていったつもり(全4種)。なのに
いざ畑を訪ねたら魅力的な野菜ばかりで、
予定外に7種も焼くことになり、結果深夜まで回し続けたオーブン。

かなりストイックな時間だったけれど、思い出せば4年前、井の頭のシェアキッチン時代は深夜1時〜朝11時まで小さなオーブンで焼き続けていたので、その頃を思い出してちょっと懐かしくもなりました。

全く知らない土地で、深夜、真っ暗な中ひとりマフィンを作った時間。夕食を食べ損ね、非常食に買っていたカップラーメンを深夜にすすったことも含めて、忘れられない思い出になりました。

今回のイベントは地域も内容自体もかなりローカルで、インスタグラムを見てきてくれた方はいず。

私のことを全く知らない初めての方ばかりの中で、マフィンを渡すのは貴重な体験でした。

この地域ならではなのか、気さくに話しかけてくれる方も多く、ひとりだったからこそやりとりに励まされました。

可愛らしいおばあさんが、私のことを娘に似ていると言って、お煎餅や岩塩やたい焼きや、何度も訪れてはいろんなものをくださったのも、微笑ましくて嬉しかった。ひろこさんというおばあさん、このnoteを見ているはずはないけれどこころからのお礼を。

珍道中でしたが忘れられない貴重な時間になりました。

いろいろなご縁があって、来年もまた伺うことになった京丹後。

その時にはてんとうむしばたけさんを訪れ、またマフィンを焼きたいと思います。

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