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MBA留学への軌跡と振り返り

2022年6月、スタンフォードのMBAを修了しました。
ありがたいことに、最近はMBAに興味を持つ医学生や若手医師の方からよくご連絡ただくようになったり、医師でない方からも受験についてよく相談を受けるようになりました。

MBAに興味を持った方の参考になればという想いを込めて、そしてキリ良い卒業のタイミングでの自分の振り返りということで、MBA留学に至るまでの経緯・学びを簡単に記したいと思います。

① MBAを知るまで

私がMBAの存在を知ったのは大学2年生の春。SNSでたまたま見かけた、山本雄士先生(株式会社ミナケア代表取締役社長) が主催する、医療とマネジメントのゼミに参加したのがきっかけです。(ゼミの内容の詳細にご興味ある方はホームページからご覧ください)

山本先生がHBS卒だったということで、ゼミでMBAの存在を知り、「ビジネスやマネジメントを学ぶことで今までは知らなかったかたちで医療に貢献できるんだ!」と漠然とした憧れを抱くようになりました。また、ゼミに参加していた様々な方とお話しする中で(医師だけでなくヘルスケアに興味ある多種多様な学生・社会人が参加しています)、医療界で働く道は色々とあるんだと気付かされました。

ここで知ったMBAへの憧れを、時期によって気持ちの盛り上がり盛り下がりはありながらも、この先しばらく抱きながら過ごすことになったのでした。

② HBSへのプチ留学で強まる想い

大学3年生の冬。
山本先生から、HBSの超有名教授Michael Porter先生が主催するヘルスケアセミナーの存在を教えてもらい、応募してみることになりました。初の海外大学プログラムへの応募に緊張しながらエッセイを書き、運良く合格することができました。

雪降る1月のボストンで過ごした日々は今でも覚えています。豪華なHBSの建物を見るだけで感動し、あの憧れの階段教室に自分の名札を立てかけて座り、世界中から集まったヘルスケア人材に囲まれ、とにかく刺激的な1週間のセミナーでした。

アメリカの有名病院のケーススタディーやValue Based Careについての議論など、非常に興味深く、また視座の高い講義の数々を直に体験し、やはりビジネス×ヘルスケアは面白いなと改めて強く思い帰国しました。

③ 研修医時代と留学を実際に決意するまで

時は過ぎ、医学部も終盤。国家試験の勉強や臨床実習をする中、産婦人科に魅力を感じ、産婦人科を集中的にローテできる初期研修プログラムにて研修医生活を送りました。女性の一生に様々な方向から貢献できて、命の誕生に関わることができ、また多くのオペにも携わることができ、本当にやりがいありました。素晴らしい上司、先輩、同僚にも恵まれ、そのまま同じ施設で後期研修も続けることとなりました。

一方、頭の片隅ではずっとMBAに行ってみたい気持ち・留学したい気持ちが消えず、臨床のやりがいもある中でどうしようか葛藤している自分がいました。周りの同世代も様々な分野で大学院留学する人が増えてきて、行きたい気持ちが徐々に大きくなる中、ついに後期研修1年目の春に受験を決意しました。

医師の留学やキャリアチェンジのタイミングに正解はないと思います。今思い返しても、専門医を取るまでは頑張った方が良かったのかなとか、こんな中途半端なら初期研修終わってすぐに行けばよかったのかなとか、もっと臨床経験を積んで専門知識を持ったうえで行った方が良かったのかなとか、他の選択肢について考えることはあります。しかし、頭で考えても絶対的な正解は出ないため、どのタイミングでも正解にすることはできると開き直るぐらいが良いのかもしれません。私は留学したい気持ちが募った勢いで「今しかない」とタイミングを決めてしまいました。

④ 何を期待して行き、実際何が得られたか

MBA留学にあたっては「臨床医という役割以外で医療にどう貢献できるか見つけたい」という点を大きな目標として掲げていました。意外とクラス内にも、「○○の分野へ貢献したいけれど、どういう形ですれば良いのかわからない」という人が多く、そういう意味では空気感が合うプログラムに通うことができたと感じています。

そして、実際、授業・インターン・課外活動など様々な機会を通して、まさに医療界に貢献するための様々な選択肢を模索することができました。(以前ヘルスケア関係の学びについてはこちらにまとめました。その他の授業についてはこちら。)私の中で特に影響が大きかったのはインターンを通してPE/VCの視点から医療界について考えることができたことです。彼らが様々なステークホルダーを巻き込みながら業界再編を試みていたり、スタートアップと既存のインフラ・大企業の橋渡しを通じてイノベーションの促進に貢献していたりする姿を目の当たりにしたことで、病院の外から医療界全体に貢献することの面白さ、ダイナミズムに大きく惹かれることになりました。

在学中にはPEやVC以外にも多くの選択肢に触れることができたのですが、結果的に私はベンチャーキャピタルで働くことになりました。

このように様々な学びが得られたのは幸運だったと思いますし、色々な機会を作り、また数多くの業界の人を紹介してくれた周りの友人・メンターには本当に感謝しています。彼らの支えもあり、様々な選択肢に触れたうえで納得のいく選択ができたため、私としては当初の目標(上記)は十分達成できたと思っています。

⑤ それ以外の学び

ある程度リスクフリーに様々なキャリアパスを模索できる、そしてそのために学生であるということを使って色々な方のお話を聞く機会が持てる、という点は大きなメリットだったと感じていますが、他にもいくつかMBA留学で良かったことはありました。

・アメリカのビジネスマナーが身についた

メールの書き方からビジネスミーティングでのふるまいや言葉遣い、授業で学んだこともありますし、様々なクラスメイトと一緒にプロジェクトをしたり行動することで見て学べることも多かったです。なにか困ったことや対応が分からない状況があった時は、アメリカ人の友達に「こういうシチュエーションはアメリカ的にはどうするのが良いんだ」「こういうメールはなんて返信するのが良いんだ」と尋ねて教えてもらったのも本当にありがたかったです。

・世界中に色々な業界の友達ができた

コロナ禍だったので留学生はいつもより少なかったですが、それでも世界中で様々な分野の友達ができたのは一生の財産です。今後のキャリアで困ったことがあれば頼れるクラスメイトが色々なところにいるのは非常に心強いです。そして何よりも世界中に旅行する度に現地で会える友達がいるのは非常に楽しみなことだと思います。

⑥ 最後に

色々と書きましたが、とにかく濃い2年間でした。辛いこと・自信を失うことも数えきれないくらいありましたが、来なければ出来なかった経験・知り合えなかった人・知らなかった世界がたくさんありました。

もっとも、今ではこのように「楽しい2年間だった」と自信をもって言えるようになりましたが、行く前は本当に本当に不安でした。タイミングも良かったのか、本当に行く意味があるのか、悩みはつきなかったほか、卒業後のキャリアがどうなるのかも全く見えませんでした。それでも、行ってみたい、どんなところか知りたい、新たな経験をしてみたい、という気持ちに突き動かされ、なんとか前に進み続けることができました。

MBAに興味がありこれを読んでくださっている方の中にも、挑戦すべきか否か不安に思う方はたくさんいらっしゃると思います。MBAから何を得たいかは人それぞれだと思いますし、思った通りになるかもわかりませんが、私の経験が少しでも誰かのお役に立てることを心より願っております。

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