声の大きな人:「〇〇するでしょ!」
普通の人1:(私は■■がいいと思うんだけど,みんなは〇〇だって考えてるだろうな.)
普通の人2:(声の大きな人が〇〇だって言っているし,みんなも〇〇だって考えてるのかな.私は■■すべきだと思うんだけど.)
普通の人3:(やっぱりみんな〇〇しようと思っているのかな.私は■■だと思うのだけれど.)
集団への忖度の結果,全員が〇〇する.声の大きな,おかしい人を除いて,誰も〇〇が良いなんて思っていないのに...
これが本書「なぜ皆が同じ間違いをおかすのか「集団の思い込み」を打ち砕く技術」で取り上げられている「集団の思い込み」であり,「集合的幻想」と呼ばれるものだ.なお,声の大きな人はいてもいなくてもいい.
「集合的幻想」とは,実際にはありもしないことを皆がそう思い込むことで,つまり間違った認識に基づいて行動することで,個人のみならず社会規模で大きな弊害がもたらされることだ.みずから幻想を打ち砕こうとせねば,幻想のために自分の人生を犠牲にすることになってしまう.要注意だ.
本書には色々な興味深いことが書かれている.いくつか拾っておこう.
やりたいことをやるのは大切だ.調査結果もそれを示している.
自己一致というのが,集合的幻想を打ち砕き,自分らしく生きるためのキーワードになっている.
ここで紹介されているアップトゥギャザーという非営利法人の成果が素晴らしいのだが,その成果は,恵まれない人に施すのではなく,信頼して「闘う環境を整える」という行動の結果だ.そのために,使途制限のない用現金を渡す.
ところが日本では,超上から目線なパターナリズムが主流で,貧困なのは本人の能力不足で自己責任で,現金を渡すとろくなことに使わないだろうから,生活を隅々まで監視管理してやるべきだという主張が目立つ.
ここでもキーワードは信頼だ.ところが,日本の大学教員なんてのは,まったく信用されていない.細々したルールで雁字搦めになっている.まあ,カラ出張とかする輩がいるのが悪いのは確かだが,再発防止を理由に生産性を落とすことを問題視しないのはいかにも日本らしい.
「集合的幻想」を叩き潰すには,誰かが声を上げなければならない.裸の王様の真の姿を暴いた子供が声を上げたように.ただ,誰かではダメだ.自分の人生を棒に振らないために,自分が声を上げないといけない.
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