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252DAY -資本主義とは何か‐

 自分がかれこれ数年に渡りリベラルアーツと呼ばれるディスカッション型授業に参加していることは周知の人もいるだろうが、改めてリベラルアーツが何なのかをここに書いておく。

 教育相談事務所V-netで行われ、教育コンサルタント松永暢史先生が主催するディスカッション型授業リベラルアーツは、海外の宗教経典的古典を読むことでその思想を理解し、それらを踏まえたグローバルな視点を会得する試みである。古今東西、全世界の書物に書かれた思想に触れ、読み解くことで、現代における価値観は歴史の過程でどうやって成ったのか、その意味や考えは何か、それらはどういった文体で書かれているのか。それらを知り、自分自身の中での多角的かつグローバルな結論を生み出す。それがリベラルアーツだ。

 今回のリベラルアーツは19世紀プロイセン(現在のドイツ)の社会学者マックス・ヴェーバーによる論考、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の一部を取り扱った。この論考では、本来資本主義とは相反するはずのプロテスタントの世俗的禁欲が、実は近代資本主義の形成に大きな影響を与えたとする逆説を究明しており、現代にいたるまで今日の宗教比較における社会学的研究に多大な影響を与えた画期的論考としてみなされている。

 歴史の教科書にも出てくる有名な神学者マルティン・ルターに端を発する宗教改革によって生まれたプロテスタントは、当時の享楽的なカトリック教会(買うだけで罪が許される免罪符の販売に代表される)の数々の行動を批判し、そうしたカトリックたちに反するように、カルヴィニズムに代表される禁欲を尊び、神から与えられた職業に従事することで、神から「選ばれし者」としての救いを獲得することを目指した。

 しかしそうした厳格な労働体制はいつしか合理性を含ませる経営姿勢を生み出し、それを大量のプロテスタントが行ったことで結果的に産業的な社会機構が作られた。そうして禁欲的行動もその社会機構の上に成り立つものとなり、宗教的な姿勢すらも新たな社会機構の前に無力になってしまったというのがヴェーバーの唱えた逆説である。

 プロテスタントの厳格さは現代の資本主義を作った。世のサラリーマンが毎日会社に向かい、規律正しく働く姿を想像すると、そうした歴史はとても皮肉めいたものに感じる。そしてそうした歴史背景を知ると、今の世の中が単なる儲け話のために存在していると見透かすことができて面白い。

 CMもyoutube広告も、競馬やスポーツ中継などの娯楽も、すべては儲かるためにある。日々お金を貯めることを第一目標として生きる我々は、実は資本主義の奴隷に過ぎない。しかし学校ではそうした背景を教えず、ただ働くことに誘導することのみを教える。まさにかつての初期プロテスタントが行っていたことと同じだ。

 今の社会を形作る資本主義はいかにして成ったか。それは単なる歴史考察にとどまらず現代にも通づるメッセージ性を秘めているのかもしれない。

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