愛繕夢久

好きな事を好きに書いてきます。😊🍀

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最近の記事

連続小説 カフェー・宝来屋(福が来た)第三話

第三話「宝来屋の人々」  ここには、大きい風呂がある。六人位入れるような檜の風呂桶だ。その風呂を焚いてくれるのが下働きの又いっさん。名前は又一なんだけど親しみを込めて皆、又いっさんと呼ぶ。以前又さんって人がいたので又いっさんになったそうだ。「加減はどやろ」薪を割りながら聞いてくる。「丁度良いです」と返す。  又一はあまり話をしない。むろん必要な会話はするが、それ以外の事は話さない。頼まれた事は無理な事でも断らず取りあえずやってくれる。「ワシに出来るのはここまでですわ」と、こ

    • エヘヘ

      僕の歩く前に道はない 似たような道を歩いている人もいるけど それは僕の道とは同じではない この道は僕だけの道だ 奇を衒うと言われようが それは詩ではないと言われようが これが僕の詩ですと答える 薄ら笑いで答える エヘヘ 一度読んだら 二度と読んでもらえないかもしれない だが 一度も読んでもらえないよりも その方を選んだ ずっと続けていけるのかと 自問自答している やるだけやってみるさと 薄ら笑いで答える エヘヘ へが目に見えて面白い #詩 #宣言 #後戻り禁止

      • 連続小説 カフェー・宝来屋(福が来た)第二話

        第二話「患ったら一人前」 翌日から客を取り出した福だが何せ十五の小娘だ。痩せ干そっている上に、何処を触っても感じないから客も寄り付かないと女将は心配していた。だが、幼い顔で愛想が良いからか文士と呼ばれる先生方が代わる代わる通ってくる。なんと先生方は賭けをしていて誰が最初に福を感じさすかと競っているらしい。 そして一ヶ月がたった頃、数人で始めた福を感じさせる賭けは、一人抜け、二人抜けして今では二人の一騎討ちとなっておりました。一人は若き文壇の貴公子。もう一人は重鎮といわれる大

        • 連続小説 カフェー・宝来屋(福が来た)第一話

          第一話「福の水揚げ」  大正12年(1923)9月1日昼にそれは起こった。関東大震災である。死者・行方不明者は10万人を越えて明治以降最大の地震となった。  口入れ屋の六さんは言った。「地震で店は潰れちまったんだが、すぐに建て始めてな。それでも材木不足で一年近くかかってやっと開店に漕ぎ着けたんだ」福は建物を見上げた。  それは白い洋館を思わせる様な佇まいだった。周りの家が皆、家を建て直せずにバラックになっているから尚更この世の者でない輩が住んでいそうだと福は思った。 「カ

        連続小説 カフェー・宝来屋(福が来た)第三話

          「限られた時間の中で欲望を叶える」

          いい加減に生きてきた、半世紀を越えて 今やっと目覚めた自分の欲望 遅いよ、今かよ、幾つになったと思っているんだ 二十年、いや、十年でもいいからもう少し速く目覚めて欲しかった 遅いよ、今さら、分かってどうなるもんでもないだろ 今からかよ、本気かよ、やれってかよ 言う奴はいいよな、言う奴は 好きだよ、詩はよ、でぇ好きだよ 詩じゃなくてもいい? まぁな、贅沢は言えねぇからな 分かったよ、やるよ でも、死ぬまで成れねぇぞ、普通 それでもいいのか? そうか 取りあえず、「物書き」って

          「限られた時間の中で欲望を叶える」

          通りすがりの男

          ただでさえ闇で暗い街角 降りしきる雨がなお一層、私の視力を奪い 見えにくいものとしている そいつは突然現れた 雨で足音もかき消され 闇に紛れる黒いレインコート フードを深々と被り顔も闇に紛れて見えない そいつは店先に来て 「新聞を」 と低い声で一言いった 男だ この界隈に住むか勤めている人物と 照らし合わせるまでもなく初対面の男であると分かる この店を始めて十三年 一度来た客は覚えている 今、目の前にいる男は間違いなく初対面だ 「よく降るねぇ、NかいDかい?」 私はそう言っ

          通りすがりの男

          「逃げ水」

          毎日、暑いですねぇ。😄🍀

          「逃げ水」

          「逃げ水」

          詩 両性類 3

          今日のお客さんは 評判の悪い嫌われ者 金をちらつかせては嫌なことを 要求する金持ち爺さん 七十を越えてなお 遊んでいる元気な爺さん 態度は横柄で傲慢 僕が席につく前に挨拶をしようとしたら 「バカモン!」と怒鳴った 「挨拶は両手両膝を床についてやれ」 と言った 僕は「それは初対面の人間に向かって 言うべき言葉と要求ではありません。 犬でも最初からそんな主には心を開きません。失礼致します」と控え室へ戻った 男性スタッフが爺さんが 謝るから来てくれと言っているが どうすると聞い

          詩 両性類 3

          神仏の在りか

          縋り付くのである 文字通り 赤子が母の衣服をしっかりと握るように 訴えるのである 腹の底から 犯した罪の言い訳と施した少なき善行を 願うのである 図々しくも 身の程の丈にも合わぬ思いつく限りを そして合わせた手を降ろして 後ろを振り向いたとたん 今、神仏に語りかけた全てを なんの躊躇いもなく ゴミ箱にほおる様に忘れ去ってしまう 神仏の在りかは 神社仏閣に座して居られるのではなく 己の内に留め置くものなり 存在の否かは志の存在如何

          神仏の在りか

          詩 両性類 2

          いつの間にかねむっていた ベッドの中には私とお客さん 夕べから飲んでホテルへ 布団の中に埋もれてる 体を掘り出してみる 二十歳を過ぎていると言っていたが 寝顔をみるとまだ 幼さの残るカワイイ顔 私は基本、どちらとも寝る 男だろうが女だろうが お客様はお客様 選り好みはしない この娘は常連さんで 時々やって来ては 私を指名して 店が閉店してから ホテルで過ごすパターン 最初に来たときは 看護師だったけど 段々お金が追い付かなくて 今はフーゾクで稼いでる でもそれからの

          詩 両性類 2

          詩 両性類 1

          夏の避暑地を散歩する 白いワンピと麦わら帽子 黒く長い髪を風になびかせて 小さな赤いバッグひとつぶら下げ ゆっくりとヒールを鳴らして歩く 男の視線が突き刺さる快感 でも、誰かと付き合ったりはしない 仲良くなることはない 私には秘密があるの そう、私は両性類 体は男で生まれてきたの でも、心は女で育ったの スカートが好きで こっそり姉のを穿いていた 雑誌でメイクを覚え プレゼントと言ってコスメを買う 初めての散歩は冬の夜 誰もいない公園のトイレで着替え 薄く塗ったファンデとリ

          詩 両性類 1

          私はエレン

          私が今のライフスタイルで生きていこうと決 めたのはドロシーとの出会いがあったからに 他ならない。ドロシーとの出会いは3年前、 雨の降る日のトニーの店だった。 トニーの店はダウンタウンの安い飲み屋が立 ち並ぶ一角に在って、ふらっと入っただけだったが私はこの店が気に入って通い始めた。 店主のトニーが良い人で常連客との仲を取り持ってくれて私もすぐに常連になれた。 二か月ほど通ったある雨の日。一人の客が入ってきた。初めて会う人でトニーが紹介してくれたのがドロシーだった。彼女は私に本来

          私はエレン