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2023年1月読んだ本 めぐる星たち/クラッシック音楽/ウクライナ/陰謀論/システム開発見積り

もう2023年2月もそろそろ終わりだが、先月分の読書記録を書けてなかったのでアップ。記録をつけることで頭の整理にもなるし、この習慣は続けたい。

the luminaries

2013 年ブッカー賞受賞作。ゴールドラッシュに沸くニュージーランド1866年。Walter Moodyは誰とも分かち合えない苦い過去を抱え、ニュージーランドで一山当てるために彼の地に降り立つ。あるホテルのラウンジに入ったところ、一癖も二癖もありそうな12人の男たちがそこにはいて。。。

大富豪が失踪し、娼婦が自殺を試み、大量の金塊が発見され。。。と謎が謎を呼ぶミステリー。

この小説は面白い構成になっていて、各章の初めに要約がついている。第一章の要約は1,2行と短く、章の中身は非常に長い。(ほぼ全体の50%)。何しろ20人近くの登場人物の一人一人を性格や背景、おかれている現状などコッテリ描写していくのだ。「ちょっと重たいなあ」と感じていると、だんだん一章のボリュームが短くなり、章の要約が少しずつ長くなる。最後の方はどんどんスピードが速くなって、カットバックを見ているかのよう。

最初に丁寧に一人一人の登場人物を書き込んでいるからこそ成り立つ手法だと感じた。ミステリーとしても何本もの糸が複雑に絡まり、先を見通せないけど面白くてやめられない。タイトルの通り、星の巡りがテーマになっている。ミステリーとして伏線を回収し、謎を明かしつつも、諸行無常というか人間を超えた巡りあわせや星の営みというような、何か大きなものを感じさせる小説だった。オススメ。

英文法は平易。単語レベルは結構高い。辞書を引きながらだと読みにくいかも。kindle推奨。


邦訳はこちら。
表紙を見た瞬間に「あ、コレ好きなやつだ!」と感じたが、7000円overの価格と1kg超えの重量にビビってkindleで洋書を購入してしまった。確か700円くらいだったし。邦訳も時間をとってそのうちゆっくり読んでみたい。


西洋音楽史 「クラッシック」の黄昏

私はクラッシック音楽の良い聞き手ではない。しかし、去年たまたまApple Musicでファジル・サイが演奏するゴルトベルク変奏曲を聴いて、魂を掴まれたようになってしまった。ゴルトベルク変奏曲といえば、グレン・グールドの演奏が有名で、そのCDも持っていて何回か聴いていたのに、そんな状態になったことに驚いた。

全く同じ旋律、まごうことなきゴルトベルク変奏曲のメロディーなのに、グレン・グールドとファジル・サイで一体何が違うのか?

私は音楽の素養がなく、楽譜を読み解くのは無理なので、まずは「クラッシック音楽とは何なのか?」というところから理解を深めようと考えた。道のりは長い。

「音楽を歴史的に聴く楽しみを読者に伝えたい」
「このような音楽はどこから生まれてきたのか」
「それは一体どんな問題を提起していたのか:
「こういう音楽を生み出した時代は歴史の中のどの地点にあるのか」
「そこから何が生じてきたのか」
このようなことを考えることで、音楽を聞く歓びの全く新しい次元が生まれてくる。それを読者に伝えたい。と、作者は書いている。

中世からポピュラー音楽まで一気に走り抜ける全7章は、今までいたずらに私が消費してきた音楽を歴史の中に位置付けてくれた。音楽についてはまだまだ知るべきことがある。この本を読むことで、そのとば口に立つことができた。そんな気分になった本。


ファジル・サイのゴルトベルク変奏曲のCD


ウクライナ戦争

前著の「現代ロシアの軍事戦略」は2021年刊行。冷戦後からクリミア電撃戦、2020年台の予想と、ウクライナ侵略が開始される前のロシアの軍事力、戦争戦略をまとめたものだった。本著「ウクライナ戦争」はその名の通り2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻はなぜ起こり、戦場では何が起こっているのかをまとめた本。この戦争の中核にあるのが「プーチンの思惑」なのだが、それが曖昧模糊としており、今後もどう転ぶがイマイチ見通せないのが歯痒いところ。しかし現状理解には必須の一冊。


陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム

ネット上で「Qアノン」、「ディープステート」、「ワクチン接種で5G接続」等の陰謀論というかトンデモ言説を見るに、「何でこんなこと信じちゃう人がいるのかな」と思っていた。日本の陰謀論の広まり方、陰謀論に染まりやすい人の分析は読んでいてなかなか面白かった。


システム開発のための見積りのすべてがわかる本

2018年の出版ながら、システム開発の見積りに関する本で、未だこれ以上のものはないのでは。分かりやすいし網羅性が高い。受注者側の開発ベンダーだけではなく、発注者側で見積り精査しないといけない事業会社の人にも役立つと思う。