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大麻の規制についての私見

今回は大麻の規制について私自身の考えを書いてみたいと思います。

まず私自身のことを書きます。私は都内で内科の医者をしています。
現在、大麻は使用しておらず、もちろんその他の違法ドラッグや合法ドラッグも使用していません。精神疾患に罹患歴もなく向精神薬は内服していません。
嗜好品としてアルコールはビール一本を週に数回飲む程度、タバコは5年前に禁煙しており、カフェインは普通に摂取しています。
一般の日本人と同様の嗜好品使用状況と言えるでしょう。

しかしここで昔のことを告白すれば、20年以上前の学生時代に大麻とシロシビン含有キノコの使用経験があります。脳神経系や心について知りたいと言うのが使用の動機でした。当時はその好奇心に抗えませんでした。そんなに手に入りやすいものではなく、たくさん使うということはありませんでしたが、効果がどのようなものか分かる程度には使用経験があります。
就職と同時にそのようなサイコアクティブは一切使わなくなりました。

大麻の使用経験はありますが、私の場合は特にそれで学業や健康に支障が出たということはありませんでした。大学で留年することもなく、医師国家試験も一回で合格しています。就職後に大麻などは使わなくなりましたが、その際に離脱症状などはなく苦痛や渇望はありませんでした。

今私は医者として仕事をしており、ある程度は人や社会の役に立てていると自負していますが、大学時代に大麻で逮捕されて違う人生を歩んでいた可能性もあります。
もしそうなったら今のようには仕事ができていなかったでしょう。家族との関係が悪くなり孤独になったり、就職が出来ずに困窮していた可能性もあります。その場合に生活が荒んで、もっと強いドラッグに依存したり別の犯罪を犯したかも知れません。

なので私は大麻で逮捕されて苦しんでいる人やドラッグ依存症の人を他人事とは思えないのです。

日本の薬物行政は不寛容の厳罰主義をとっています。薬物使用者は一度でも使うと「人間」ではなくなるとか、使うことは「ダメ絶対」として厳しい態度で臨んでいます。また、薬物の恐ろしさを強調するあまり、薬物使用者は精神がおかしくなって何をするかわからない「危険人物」とレッテルが貼られてしまってします。それにより世間から強いバッシングを受け社会復帰が難しい状況にもなります。
最近になってようやく罰則から治療へと言うことが識者から指摘されるようになりましたが、行政の対応やマスコミの報道はまだまだ大きく変わっていません。

特に大麻はソフトドラッグと言われておりヘロインや覚醒剤などハードドラッグと比較すれば害は少なく、欧米では軽犯罪化、非犯罪化されてきています。依存症や統合失調症の発症要因になるなど問題がないわけではないですが、大半の人は問題なく使用できるでしょう。
特に、自傷他害のない単純所持や使用について厳罰を科すことはその人の人生を大きく損ない人権侵害なのではないかと思います。若者の使用者が多いので彼らの将来を悪くすることは社会にとってもマイナスなはずです。使用者数が増えたらその事が顕在化するでしょう。
また依存症など問題のある使用者はメンタル面や生活環境に問題を抱えていることが多く、逮捕し罰を与えるよりはむしろ治療やサポートが必要だと感じます。

国や社会は大麻使者、薬物使用者を社会に害をなす犯罪者として排除するのではなく、社会の一員として取り扱って欲しいです。今は「ヤク中」として社会から分離し異物として排除していますが、それは差別ではないでしょうか。分断ではなく融和こそが依存症の治療にとっても良いはずです。つまりゼロ寛容政策からハームリダクションへの転換です。これは人道的でもあるでしょう。
現在の日本の中では私のような考えは少数派でしょう。ここでこのような意見を述べたところで何も変わらないかも知れません。禁止法は公共の福祉を守るため、罰則は抑止力のためというのは私にも理解できます。
でもそれにより苦しんでいる人もいます。その人たちは怪物ではなく人間です。そこを少し世の中の人には考えて欲しい。
苦しんでいる人がもしかしたら自分だったかも知れないのです。だったら彼らの権利を擁護してあげる人がいたっていいと思いませんか?
これが私の考えです。

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