1.『私は咳をこう診てきた』から始まる医書漁り

三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェア

2018年11月30日から、2019年5月31日までの間、大書店の一角に、ぼくが選んだ本が並ぶ。なんともはや、未だに夢のようであるが、現実に起こっている。「夢は叶っても夢心地なのだな」と思った。

さて、祈念すべき一冊目はこれしかない。

私は咳をこう診てきた

(書名をクリックすると「版元ドットコム」でお好きなウェブ書店に注文ができますし、オンラインでお近くの書店・セブンイレブンなどに取り寄せも可能です。)

フェアでお買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

医学生、研修医、さらには医学のうち診断学をまじめに勉強しようと試みるすべての人にはこの本からおすすめしています。ベイズ推計方式(検査前確率を設定し、検査の尤度比を意識して、検査後確率を推し量ることを繰り返すタイプの診断)をこれほどわかりやすく書いた本はほかにありません。なにより血が通ってていいんだよなこの本は。咳とかぜんそくとかそんなに興味ないんだけどなあ……って人にこそおすすめです。ぼくがこの本を学生時代に読んでたら呼吸器内科医を目指していたかもしれないです。それくらいいい。今の世の中、個人情報のことを考えるとこういう本はなかなか書けないのですが、筆力がありすぎて普通に読めてしまうという隠れた恐ろしさもあります。名著。

振り返ってみるとぼくを「無類の医書好き」にした本は亀井先生のエッセイとも読めるこちらの本だった。「診断」というものが医者の頭の中でどのように組み立てられているのかを、これほど丁寧に、過不足なく書いた本をぼくは他に「ほとんど」知らない。


「ほとんど」と書いたのは、その後、レアではあるがときおり出会うようになったからだ。医書というのはおもしろくて、めちゃくちゃに頭が良くセンスが高く優しい人が、丁寧に骨身を惜しまず労力を注ぎ込んで作った本は、非常に学術的でサイエンティフィックであるにも関わらず、なぜか随筆になっていたり小説になっていたりもするのだ。(2019.03.12 1冊目)


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