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正しさの「矛と盾」

私たちはしばしば、自己の正義と他者の行動を測るための評価基準として「正しさ」という概念を用います。この追求が無意識のうちにどのように私たちの内なる感情や行動に「盾と矛」として影響を与え、時には自分自身や他人を傷つけることにつながるのかを探ります。例えば、「社会的な議論や家庭内での対立においても、私たちが持つ「正しさの矛」と「正しさの盾」はどのように作用しているのでしょうか?

「正しさ」の概念は日常生活の人間関係や社会的状況の中で多様な形で表れます。例えば、子どもの教育やしつけについて「正しい方法」、あるいは、職場や学校での方針にかかわる「正しい」とされる規律や評価、さらには社会運動、例えば、環境保護運動、人権運動などが特定の価値観や政策を「正義の実現」として推進している場合、異なる視点を持つ集団との間で対立が生じることがあります。

「正しさ」や「正義」を追求することは、正しい生き方や心の清らかさを磨くために重要とされます。多くの人々が内心で善悪を裁くような「裁判官」を持ち、自らが正しいと考える基準で他者や自身を評価します。このようにして、多くの人は「正しい」とされる「矛と盾」に依存し、生活しています。この「正しさの矛」が鋭ければ鋭いほど、他人を傷つけやすくなり、「正しさの盾」が強固であれば、それだけ自己防衛が強化されます。

しかし、矛と盾が鋭く頑強であるほど、心の奥深くで葛藤や苦しみが生じることがあります。心身条件反射療法(PCRT)では、患者さんと共に症状に関連する誤作動記憶を探ることで、人間関係の問題が明らかになることが多いです。特に、納得できないことや説明して理解してほしい願望が果たせず、「あなたは間違っている」と言いたくても言えない状況では、潜在的にストレスが蓄積されます。

通常はこのストレスの原因を他者や外部に求めがちですが、実際の問題は自分の心の中にあることが多いです。PCRTの施術によって誤作動記憶に関係する無意識の内容を探索する過程で自己の信念に向き合うと、この信念が身体症状に関連する心の信号であることがわかります。他人と自分の信念が異なることを受け入れることで、心の縛りが解け、「正しさの矛と盾」の束縛から解放されるのです。


正しさの「矛と盾」

問題は、自分を苦しめる強固な信念に縛られていることです。信念を変える必要はありませんが、苦痛の源を理解することで、ストレスから解放されることがあります。自分の信念が社会的な批判や自己正当化の「矛と盾」となり、人間関係に影響を与えることがあります。人間関係が悪化する一因として、責任は他者にあるとする傾向がありますが、深く自己を見つめることで、その原因が自分の内にある「正しさの矛と盾」であることがわかります。

PCRTを通じて、誤作動に関係する信念の出所を探ると、それらは無意識のうちに形成されたものであることが明らかになります。例えば、幼少期に親しんだ正義のヒーローやアニメの物語が、知らず知らずのうちに私たちの信念体系を形成していることも少なくはありません。このことに気づくと「笑い」が出てくることがしばしばですが、これらの物語がどのようにして私たちの行動や人間関係に影響を与え、時には慢性的なストレスや身体的症状を引き起こすのかを理解することは、自己治癒の鍵となります。

信念は変化しないと思われがちですが、年代や人との出会いによって変化します。私自身も米国での留学生活で知らず知らずのうちに信念の変化がありました。「郷に入れば郷に従え」という言葉があるように、友人との交流を素直に受け入れることで、自分の心の奥に潜んでいた本来の感覚を引き出すこともできたように思います。また、留学前には、アメリカ人は〇〇、日本人は〇〇のように偏った先入観を持っていましたが、友人と苦楽を共にすることで、人間の本質は文化や風土が違ってもさほど変わらないのだという新たな信念をもつこともできました。人種は違えども人としての本質的な個性には、共通点、類似点が多数含まれているということを学びました。

例えば、「義理や人情」という感覚は、一般的に日本人的な感覚だと思われがちですが、5年以上の留学経験を通じて、多国籍の留学生とも交流し、その感覚は大きく変化しましたし、私の人に対する様々な信念に影響を及ぼしたと思います。自身の人生を振り返れば、信念が時とともに変わっていることが見て取れます。学生時代に抱いた信念、社会人になってからの信念、結婚前の信念、結婚後の信念、子供が生まれてからの信念など、人との出会いなどで信念は大きく変化するものです。成功や健康への信念を持続させることは重要ですが、それが自分の生活や健康に悪影響を与える場合は、見直すべきです。

もしも自分の信念が原因でストレスを感じているなら、PCRTを通じて自分を苦しめる「正しさの矛と盾」の源泉を明らかにし、内面の平和を取り戻し、真の自己解放を目指しましょう。あなたは自分の内なる「正しさの矛と盾」にどれだけ気付いているでしょうか。この自問自答が新たな自己発見の旅の始まりになるかもしれません。PCRTを通じて、これらの影響から自由になるための第一歩を踏み出しましょう。その一歩を踏み出す勇気が、あなたの人生に新たな可能性をもたらすことでしょう。




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