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花筏はどこへゆく / 花より団子の和菓子レポ

世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし _在原業平


まだ寒い。

暑さ寒さも彼岸まで、とは言うけれど、まだ全然寒い。
おまけに今年は桜の開花が遅れている。おそらく3月過ぎに雪が降ったせいもあるとは思うが、桜を待つ気持ちはやはり落ち着かない。

在原業平は桜の花が咲いては散ることに人々を一喜一憂させるさまを、寧ろ世の中に桜の花がなければ人は落ち着いていられるのに、と歌っているが、あまりにも美しいものというのは、心をざわつかせるものだ。

今年はどうしても見たい河川敷の桜を見に行くと心に決めている。
あそこの花筏は本当に見事だそうだ。

瞬きをしている間に散ってゆく、儚くとも壮大な春色の美しさに、私は今年も人生の年輪を数えながら、どこか胸の奥で今まで見た桜色の記憶を浮かべるのだろう。

ただ、桜はまだどこもしんとしているので、胃袋だけは季節を先取りするのだ。
とらや 季節の羊羹『桜の里』 は、
まるで道明寺餅を食べているようでありながら、羊羹の良いところも活かされていて、下層の緑色には、桜の葉の塩漬けが練り込まれており、なかなか最高に美味しかった。

とらや『桜の里』

宗家源吉兆庵 『紅宝玉』は、輝く砂糖がまぶされた、さくらんぼを模した求肥の中に、白餡と甘酸っぱいさくらんぼのシロップが包まれている。
こちらも最高に美味しかった。

宗家 源吉兆庵 『紅宝玉』

心残りがあるとれば牡丹餅を食べ損ねてしまったことだ。お花見の時はやはり桜餅をどこかで買わなければ。
私は関西ではないにしろ西日本出身なのでやはり道明寺しか勝たぬ。関東の人々は本気であの長命寺の桜餅がよいのだろうか。あれは餅とは言わぬ。桜あんこクレープロールではないか。(だまれ)


嗚呼、結局甘いもののことばかり考えている。
今年の春も、花より団子。。。

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