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父の日と彼の視線の先

昨夜、遅ればせながら僕の実家で父の日を祝った。

もちろん、妻と息子も一緒に。

僕の父は、雨が降っても、雪が降っても、風邪で熱があっても必ず毎晩晩酌するほど、無類のお酒好きなので、プレゼントは毎年お酒にしている。

今年の4月の誕生日に58歳となった父には、今後の健康のことも考えて、一升瓶(1.8L)は控え、四合瓶(720ml)の日本酒をプレゼントした。

この気遣いも、お酒の一升瓶が台所の床に所狭しと林立している僕の実家では、あまり意味をなさないかもしれない。

なぜなら、僕のプレゼントしたお酒を飲み干してしまえば、父は在庫として並んで立っている一升瓶の一つを選び、新たに封を開け、飲み始めるだけだから。

『ワインもよいけど、やっぱり日本酒はうまい。』と隣で晩酌していた父が満足そうな顔をしていた。

僕のプレゼントよりも、父を喜ばせたのは、もちろん孫である僕の息子だった。

父にとって、孫の存在以上のものはきっとこの世にない。

最近気温が上がってきたこともあり、僕の実家に夕食を食べに行くと、帰宅時間が21時を過ぎるので、そのまま息子を寝かせられるよう、実家でお風呂に入れてしまうことが増えた。

寒い時期は、湯冷めすると風邪を引いてしまうので、遅くなっても帰宅してから息子をお風呂に入れていた。

実家で息子をお風呂に入れる役目は、僕の父と母のコンビが担っている。

お風呂に入れている父と母は、弾むような声で何やら話している。

その反面、慣れない僕の実家のお風呂に入ると、息子は決まって大声で泣く。

対称的な構図になっていて、面白い。

息子は実家のお風呂に入るのをなぜそんなに嫌がるのだろうと推測してみるけれど、見慣れない景色が嫌なのか、僕や妻ではない人と一緒にお風呂に入ることが嫌なのか、湯船が広いことが怖いのか、はっきりした理由はわからない。

息子がしゃべるようになったら、聞いてみることの一つとして覚えておこう。

いつもと違うところで、いつもと違う人と一緒にお風呂に入ることも修行の一環だと捉えている僕と妻は、お風呂場から漏れ聞こえる息子の大きな泣き声をBGMにしながら、せっせと着替えの準備をしていた。

息子がお風呂から出てきた後、間髪入れずに出てきた父は、満面の笑みだった。

よほど、孫のことが愛しいのだろう。

その後も晩酌している父の視線の先には、きまって遊んでいる孫の姿があった。

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