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我が家のアイドル

先週土曜日8月11日は、山の日で祝日だった。

読んでくださる方にはどうでもよい情報だが、十数年前の8月11日に僕と妻は付き合い始めたので、僕らの記念日でもある。

そんな8月11日の夕方、毎年恒例の親戚一同が介するバーベキューが我が家で開催された。

親族、親戚がわらわらと集まってきて、庭に即席のテーブルと椅子を並べ、総勢30名ほどの大人や子どもたちが肩を寄せ合いながら、七輪で焼いた赤身の肉やホルモンを頬張っている姿は、微笑ましいというよりはたくましく映る。

今年は小ぶりの鮎も一緒に七輪で焼いて、おいしく頂戴した。

こんなに熱中症、熱中症と騒がれているのに、それでも外でバーベキューなんて正気ですかと言われそうだし、実際僕もそう思っていたが、幸い当日は心地よい風が吹いていて、思っていたよりは快適に過ごせた。

むしろ僕たちが戦わなければならなかった敵は、暑さよりも蚊だった。

そこらじゅうに蚊取り線香を設置して、虫除けスプレーを身体の露出した部分に吹きかけて、いざ出陣という意気込みでバーベキューに臨んだものの、結果は無残なものだった。

みんな返り討ちにあって、腕やふくらはぎにぷくっと膨れた傷を負っていた。

蚊との攻防を繰り広げながら、バーベキューをしている間、話題の中心にいて、終始注目を集めていたのは、息子だった。

我が家のアイドルだ。

当日、親戚の伯父と伯母がトミカのおもちゃを息子に買ってきてくれていた。

前から息子に何か買ってあげたいと思ってくれたようで、ようやくそれが実現した。

車や電車に熱中している息子も、トミカのおもちゃをもらって、喜んで、夢中になって遊んでいた。

その姿を見て、伯母は嬉しくなって、気分も高揚し、他の親戚や親族に、あのおもちゃは私が買ってあげたものなのよと言い触らしていた。

それを耳にしたある親戚の叔母は、こんな風に言っていた。

『たかが、おもちゃくらいで、あんなに得意気になって、私があげたものなのよと言い触らされたらたまったものじゃないわね。あんな風に言われるくらいなら、もらわないほうがよっぽど良いわよね。』

また、違う親戚の伯母は、こんな風に話していた。

『私の家にも、たしかトミカのおもちゃが2台ほどあったはずだから。今度持ってきて、あげるわね。喜んでくれると嬉しいな。』

こんな調子で、僕の息子の一挙手一投足が話題を作り、バーベキューは盛り上がっていた。

翌日、僕の祖父が僕に寄ってきて何かと思ったら、息子に好きなおもちゃを買ってあげてくれと唐突にお金を渡してきた。

みんな、少しでも息子の気を引こうと必死になり、あの手この手を使って、攻め込んでくる。

でも定石通りに行動していては、売れているアイドルの気を引くのは無理だ。

これは恋愛においても同じで、モテる男性、もしくは女性の気を引くためには、他にアプローチしている異性がしないような、突拍子もないことをしないとその人の記憶に残らない。

話は逸れてしまったが、とにかく息子の持ち上げられ方が半端なくて、あれだけチヤホヤされたら、そりゃ本人も調子に乗ってしまいますね。

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