これでいいのか?「異次元の少子化対策」

岸田首相の新年の言葉

岸田首相が2023年の年頭の記者会見で掲げた「異次元の少子化対策」が大きな議論を呼んでいる。


かつて安倍元首相は我が国の「少子高齢化」と「北朝鮮による脅威」を国難と定義し、これを乗り越えるための信を問うために総選挙を行ったことがある。あれから6年、少子化対策は一つも成果はなく2022年の出生数は80万人割れ確実と言われている。


少子化は我が国の市場経済の発展、社会保障制度の維持、安全保障の整備、労働人口の確保などあらゆる分野に影響を及ぼす重大な問題だ。この「静かなる有事」に正面から取り組み人口減に歯止めをかけることは政治の使命だろう。



岸田内閣は少子化対策として
1)児童手当など経済的支援の強化
2)学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充
3)働き方改革の推進
の3点を中心に対策を講じる予定だ。



しかし私はこの計画では出生数は増えないと考えている。なぜならこれらは現在生まれている子供に対する子育て支援であって、これから生まれてくるだろう子供を期待した政策ではないからだ。子育て支援にいくら政府支出をつぎ込んでも出生率に変化が起きないことは独身研究家の荒川和久氏が指摘している通りだ。記事を参照してもらいたい。

少子化対策=子育て支援でいいの?

「子供の数を増やすための少子化対策」と「生まれてきた子供の健全な成長と親への経済的支援のための子育て支援」は基本的には別物ではないだろうか。


もちろん第一子(第二子)がまだ幼く親も比較的若く、経済基盤が整ってない家庭には子育て支援が第二子(第三子)を出産させるインセンティブにはなるかもしれない。しかしアラフォー以降の産む確率がほぼゼロの子育て家庭にいくら子育て支援を手厚くしてもそれが出生数増にほぼ寄与しないのは明白だ。


そもそもこうした子供を持つ家庭が少なくなっている。数少ない子持ち家庭ほぼ全員に4人いや5人と産んでもらわないと人口維持に必要な2.07という出生率は達成しないだろうが、それは果たして現実的な目標と言えるだろうか。

もはや子供のいる世帯は明らかに少数派と言える

つまり少子化は結婚をしない未婚男女が増えてしまったことが原因なのだ。子供が産まれるために必要なパイが縮小する中で、その小さなパイに頑張れ頑張れと多産を促しても焼け石に水でしかない。したがって結婚と出産が地続きになっている我が国では未婚男女に結婚してもらうこと(未婚率減少)が出生率向上の最短ルートである。


ところが残念ながら少子化対策を推進する内閣府の資料を見てみても少子化対策の基本は子育て支援だ。確かに結婚支援という項目はあるが、地方公共団体や商工会議所への支援や好事例の紹介に過ぎず、こうした結婚支援が全ての自治体で行われているわけでもない。はっきり言って国は積極的に未婚男女をどうにかしようという危機感が欠如しているのだ。

少子化対策=出会い・結婚支援ではないか?

ここまで子育て支援に政府支出を強化しても出生率に影響はないこと、少子化対策するなら未婚男女に結婚してもらうことが重要であることを述べてきた。


上記の岸田首相の方針はあまり意味のないことにこれからお金をジャンジャン使いますよ、すでに産んだ親の働き方は優しくしていきましょうねと宣言しているに過ぎない。異次元というより既存の子育て支援の焼き直しに過ぎない。


未婚率を下げ、婚姻数を増やすことに国を挙げて努力する必要があるのだが、与党も野党もマスコミもこの問題にはあえて触れず子育て支援を競い合うのが不思議なところである。

結婚支援以前に出会い支援が必要ということが分かる

未婚者に聞くと「適当な相手にめぐり合えない」という項目が男女ともに過去30年トップである。子育てどころか結婚どころか出会いの段階で詰んでる未婚男女が多いということが分かる。国はこの本当に最初の第一歩で男女が躓いてることの深刻さを理解し「出会い・結婚支援」への政策立案を講ずるべきだろう。

本丸の出会い・結婚支援に国が躊躇する理由の考察

出会い・結婚支援が出生数増を導く婚姻数増に寄与するのではと前段で提起した。しかし政治はそうする気配もなく子育て支援でエイヤと押し進めそうな情勢だ。ここからはあくまでデータベースというより私の予想、推測をしていきたい。


まず第一に票につながらないということが考えられる。結婚支援のために仮に県や市区町村が婚活パーティーなり街コンなりAIマッチングなりを実施しても参加者が「この街コンは○○議員(党)のおかけだ!」と思わないし「○○議員(党)発案のAIマッチングで彼女作れました!」と感謝されるわけでもない。それよりも現金をバラまいた方が議員や所属政党にとって実績だけをアピールするなら目に見えている。子供のためにという大義もあり反発も起きにくいことから今後、与野党ともに現金給付を中心にアピールすることが予想される。


第二に結婚支援は既婚者特に既婚子持ち女性と相性が悪いというのが考えられる。主にTwitterであれこれワードを変えながら検索し続けたところ、結婚支援への猛烈な嫌悪感、反発が確認できた。結婚支援により子育て支援の予算が削られる恐怖ゆえなのか、出会いを公的に支えることがけしからんと思うゆえなのか、未婚率上昇という原因を理解していないゆえなのかはっきりはしない。ただ既婚子持ち女性は出会い・結婚支援は効果がなく、効率が悪いと思っているし、具体的に何をすればいいか分からないから子育て支援!と主張している呟きもいくつか見た。出産は女性にしかできず、子育てが女性中心になっている現状を思うとこの層の理解がないと少子化対策は進まない。そう思うと出会い・結婚支援の推進は茨の道なのである。


最後に出会い・結婚支援は個人の自由や多様性といった現代社会の理念とぶつかる可能性を政治(家)が忌避してるということである。かつての日本は「産めよ増やせよ」と公然に要求してきた。その反省から国はそう言わなくなったが、現在でも両親から「彼氏(彼女)はできたのか?」「早く結婚して孫の顔を見せてくれ」と帰省するたびに言われる結婚適齢期の男女は多いはずだ。「結婚するもしないも本人の自由」というのが令和日本の建前である。それにややもすれば抵触する行為を国ないし地方自治体が推進するのはちょっとなーと少しでもリベラルな気風のある人なら思うのも仕方ない。いや希望者に参加してもらってイベントなりマッチングなりしてもらうなら別にいいじゃないかという声もあるだろう。しかしリスクを賭してまでやりたいと思うのは保守派でもいないと思う。沈黙は金である。

子育て支援充実の時代はもって15年?

以上のことから、少子化の原因は未婚率上昇であるがそれに適した対策は行われず子育て支援のバラマキ合戦になると私は予想する。そのため子供の数は結局増えず、残ったのは重い社会保障費と政府債務でそのツケを子育て支援で生まれた数少ない子供たちが払うなんて最悪な未来も覚悟しなければならない。一度充実させた支援や保障を後退させることはなかなか難しい。意味がないから止めますとは自民党でも立憲民主党でも日本維新の会でも言えないと思う。


そして未婚率はますます上がり2040年頃には生涯未婚率が男性で約40%、女性で約30%くらいにはなるのじゃないかと漠然と予想している。自由恋愛→結婚は人生の通過儀礼、マイルストーンから限られた男女のできる趣味、特権的な扱いになるかもしれない。こうなったとき社会や世論は子育て支援重視をし続けられるだろうか。政治や経済の場で影響力を持つ男性に限って言えばほぼ半分は結婚できない国で「チルドレンファースト」なんて甘い言葉で歓心を買うことは無理だと思う。


せいぜい残り15年の子育て支援の充実と思った方がいいかもしれない。さらに悪いことに2040年以降は団塊ジュニア世代(就職氷河期世代)が70歳を迎え、健康や社会活動に陰りを見せる時期と重なる。若いときに十分な稼ぎや蓄えがない彼らの支援のためにもお金を使わないといけない。見捨ててしまえという考えもあるが、いかんせん人数が多い以上個人個人ではそれなりの支援であってもトータルでは重い財政負担になるはずだ。そういう事情もあり(本当はズレていると思うが)少子化対策=子育て支援で世論が盛り上がるのはこれが最後だと思う。そして最後の予想だが今回の対策が失敗に終わったとき政治家が言い出すのは別に結婚支援でもなく「移民の受け入れ」だろう。

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