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春に思う

 この時期、ニュース番組では担当キャスターの異動が多かったりします。
「〇年間、ありがとうございました。来月からは〇〇放送局に異動になります」という挨拶の後、涙ぐんだりして…。きっと、彼等、彼女等は、一生懸命仕事に取り組んできたのでしょう。涙を流せる仕事に就けていたことは、幸せ以外の何物でもありません。生涯の素晴らしい思い出になるはずです。

 3月は別れの季節。学生のうちは、学校の卒業という半ば強制的な別れが用意されているのですが、それ以降はそれぞれがそれぞれのタイミングで何らかから卒業していきます。

 例えば転職。大きな花束を抱えて、帰宅のための電車に乗っている人を見かけたことがあるでしょう。カバンの中には、職場の人達からのメッセージが綴られた寄せ書きがあるのかもしれません。色々考えて転職をすると決めたのでしょうが、思いを寄せてくれる人がいた場所を去るということは、後ろ髪を引かれる想いでしょう。辞めることをちょっとだけ後悔したりなんかして。

 しかし、みんながみんな、そうであるとは限りません。人知れず去っていく人達もたくさんいます。派遣雇用やアルバイト雇用の場合、そうなってしまうことが多いのではないでしょうか。それでも、そんな人達であっても、それぞれに胸に秘めた思いはあるはずです。

 近年、業務の分業化が著しく進み、組織が一体化するということが難しくなってきました。本当は難しくないのですが、それぞれがそれぞれの業務以上のことをしようとしなくなった気がします。与えられた作業をすればそれでいい、というような。そういった傾向は昔からあったのかもしれませんが、それに拍車をかけたのがコロナだったのではないでしょうか。2020年以降は、マスク顔しか知らない人も増えましたし。まぁそれは致し方ないことではあったのですが。

 しかし、そうであっても、せっかく出逢った人達と言葉も交わさずにいるのは残念なことです。ひょっとしたらそこに、人生の転機のきっかけになる友人がいたかもしれませんし、大恋愛に発展する素敵な恋人がいたかもしれません。みんながみんな、分かり合える関係になるとは限らないとしても、まずは言葉を交わすということが重要です。全てはそこから始まるのです。

 その場を去れば、もう二度と会わないであろう人達。その中に、ひょっとしたら大切な人がいたのかもしれないと思うと、本当に残念です。
人生は一度きり。
そんなことを春に思うのです。

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