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夏の終わり。

夏の終わりのこの時期が、日本の四季の中で一番好きだ。「好き」という書くと、なんだかキャンディーのような可愛らしさを伴った言葉のようにも読めてしまうけれど、もうちょっと落ち着いた感じの、少し低音での、静かな、「好き」。

賑やかで煌びやかな夏は、穏やかにゆっくり過ごすよりも、どうしても「夏を満喫するぞ」という気分の高揚感がずっと続いている気がする。夏以外の季節で貯めてきたエネルギーを、このタイミングで使わなくてどうするんだというくらいに消耗をしながら。それこそ、7年土の中にいた蝉が命の限りを尽くして泣き叫ぶように。太陽が自分のエネルギーをこれでもかとギラギラと燃やし尽くすように。

だからたぶん、夏の終わりのこの時期には、「今年も燃え尽きる事なくどうにか生き延びてこられた」という感覚を強く持つんだと思う。それは「生き延びてこられた」という悦びであるとともに、「生き延びてしまった」という悲しみでもあるのだけれど。

熱に浮かされてトランス状態だったとも思える自分から、冷静になりゆっくりと本来の自分を取り戻していく。夏の終わりはそんな感覚がするのです。「力を抜いてありのままの自分でいられる」、そんなところが好きなんだと思う。

#小説  #エッセイ #ポエム #哲学 #のようなもの

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