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24_「プロジェクト型学習」における評価 【山の日本語学校物語】

これは、とある町に開校した「山の日本語学校(仮名)」の物語です。ITエンジニアの専門日本語教育、プロジェクト型のカリキュラム、地域との連携などなど、新たな言語教育の実践とその可能性について、当時の記録をもとに綴っていきます。最後までお付き合いください。

この連載を始めるに至った経緯については、「00_はじめに」をお読みください。

前回(23回)では、1stプロジェクトのゴールであったプレゼンテーションを、「サービス内容」と「プレゼンテーション」の2つの観点から振り返った様子について書きました。同じ手順を辿って振り返りを行ったのですが、振り返りの内容は、各チームの関心にフォーカスされ、異なる観点で振り返りが行われていました。この振り返りにより、各チームのプロジェクトの捉え方が可視化されたように思いました。

今から考えれば、この振り返りこそ、学生によるプロジェクトへの「評価」であると捉えることができます。しかし、当時は、従来の「評価」に私自身が囚われており、「プロジェクト型学習」よって、学生が何を学んだのかを何らかの形で示さなければならないと考えていました。

今回は、1stプロジェクトで行った「評価」と、そこから考えたことについてまとめてみたいと思います。ただし「プロジェクト型学習」における「評価」をどう捉えるのかについては、私自身まだまだ悩んでいることも多く、本記事でも、スパッと答えが出せているわけではありません。あれこれと試行錯誤した様子をお伝えすることによって、「評価」とは何かを一緒に考えていただけたらと思います。

(「評価」は多義的で、人によってイメージするものが異なる言葉だと思います。本来なら「評価」を定義づけしてから説明すべきだと思いますが、当時、いろいろな形式、尺度の「評価」をごちゃ混ぜで行っていたので、あえて「評価」という曖昧な言葉のまま書いてみたいと思います)

1stプロジェクトの評価

1stプロジェクトを始める前に、「評価」について、私が学生にどのように説明したのかは、第8回「1stプロジェクトの始まり」の記事でも書いています。確認のため再度簡単に説明します。(詳しくは、第8回をご確認ください)

学生には、1stプロジェクトの開始時に、全体目標(ゴール)として以下を提示しました。

「みどり町」のためのITを使ったサービスのプロトタイプを考え、そのアイデアをプレゼンすること

そして、日本語教育の目標として、以下を設定しています。

自分の考えを相手にわかりやすく伝えることができる

「プロジェクト型学習」の目標が、「日本語でいいプレゼンをすること」という「日本語学習」のためのプロジェクトにならないように、あえて、上位目標として「サービスのプロトタイプを考え、そのアイデアをプレゼンする」という目標を設定した形です。

そして、目標と評価は、一体のものでなくてはならないという考えのもと、「日本語」だけの評価を避け、複数の観点から評価をすると伝えました。以下が学生に説明した評価基準です。

評価
① 日本語教育的観点:自分のアイデアをわかりやすく伝えることができたか
② IT教育的観点:現状から課題を抽出し、ITによる解決方法を考えることができたか
③ 地域的観点:ITによる解決方法が「みどり町」の現状に対して寄与できるもの
④ チームマネージメント:チームとして活動をしていたか

第22回で記したように、プレゼンテーション本番で、日本語教育関係者、地域住民、ITエンジニアを招いたのは、上記の①〜③の観点で評価を行うためです。

プレゼンテーションの評価方法

上記のように、プレゼンテーション本番では、3つの観点で「評価」が得られるよう、それぞれの立場からプレゼンを見てもらいました。そのため、ゲストには、それぞれの立場からの「評価」が得られるよう、評価表にあたるルーブリックを用意しました。具体的には、以下のようなものです。

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