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昭和30年代男 日本経済を愚痴る(7)

 カナダという国には、どのようなイメージがありますか?
 私は広い国土に雄大な自然あふれる豊かな大地を想像します。それは具体的にはカナディアンロッキーの山や湖であったり、あるいはナイアガラの滝のような、日本ではとても目にすることができない壮大な自然の風景であったりします。そしてトロントやバンクーバーのような高層ビルが林立する都会で働く人々ですら、住む家は広く緑豊かな芝生の庭があり、休日には近くの山にハイキングしたり、渓谷でカヤックなどをして、夜は家族そろってバーべーキューをしてキャンピングカーで眠る・・・。もちろん仕事は週二日は確実に休み、残業などありません。近年の日本もようやく休日出勤やサービス残業が少なくなり、私も50歳代半ばからは休日出勤や長時間の残業をしていませんが、それまでの私に比べれば、まるで夢のような毎日をすごしているようなイメージがあります。
 同じ北米大陸にあってもカナダはアメリカとは異なり、大きな工業製品を各地で製造していたり、生き馬の目を抜く金融業やIT関連企業が日々しのぎを削っているようなイメージもありません。もちろん現実にカナダで仕事をされている方々は相応に苦労されているとは思いますが、私はどうしても雄大な自然と隣り合った毎日を心豊かに送っているような想像をしてしまうのです。
 そんなカナダでの暮らしに憧れがあるのであれば、さっさと荷物をまとめてカナダに移住すればよかったじゃないか・・・と言いたくなった方も多かろうと思います。私自身、そう思います。
 それではなぜ、若い頃の私はカナダへ移住できなかったのでしょうか?
 私は20歳代で二度も転職しているのですから、若い頃に人生の節目とも言うべきタイミングがまるで無かったわけではないはずです。それでも日本を出ることができなかったのは、結婚が決まっていたから、英語力がなかったから、カルチャーギャップに適応する自信がなかったから・・・等々、多くの理由が考えられます。そもそも日本人なんだから日本で生活するのが当然であり、外国で生活することなど考えたこともないというのが偽らざるところでした。
 ですが、おそらくその根底にあったのは、世界最強の日本経済に裏打ちされた日本国内で、日本人として生活することほど経済的に優るものはない・・・という思想があったような気がします。日本経済が強かった時代だからこそ私は、自身が何度も転職を経験しているにもかかわらず、大手メーカー正社員の地位を投げうってカナダ法人の現地採用社員に転籍した知人の行動に驚いたのです。私も、カナダが素晴らしい国であり、ともすれば日本で働くよりも大らかに働けるような気がしていました。そんな労働環境が働ければどんなに「人間らしい」人生を送れるだろうと、羨ましく思ったものです。その知人にしても、だからこそ熟慮のうえでそのような結論を下したのでしょう。もちろん還暦を過ぎた今にして思えば「人間らしい人生って、日本国内では送れないのか? それでは還暦すぎまで日本国内で働いていたお前は人間らしい人生を送っていなかったのか?」と、ツッコまれればそんなことはないと断言できますが、さてさて・・・。


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