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草がちっともゆれなかったのよ。その上を蝶々がとんでいたのよ。

中原中也、「秋」からの引用です。
とても美しい。

私は子供の頃、とても勉強の出来ない子でした。

国語と社会は勉強してなくてもつねにテストでは100点を取ってましたが、算数、理科がいけない。
また、マンガが好きで、マンガ風の絵は得意にしてましたが、図画で求められる絵は描けませんし、壊滅的に図工がダメ。
体育は極度の運動音痴で、200メートルも走らせたら昏倒するので、別に病気でもないのに免除される時もありました。もちろん泳げません。
家庭科は、なまじ小学2年から祖母にみっちり料理を教えてもらい、5年生くらいでパイを焼いたり茶碗蒸しを作れましたし、4年生の時、電気ミシンを何年か習ったのである程度できる。授業で要領の悪い手順を強いられるのが嫌いで、家庭科の先生とはたいへん相性が悪かったです。

こういう子供は、学校社会ではみ出してしまいます。

全校生徒90人、私の学年は9人と言う学校だったので、まだ手厚い教育を受けましたが、これがマンモス校だったらどうなっていたのやら。

話は変わりますが、私は絵本が苦手です。
絵ばかりで、文章の少ない本を読むのがとても嫌いで、また、幼い頃から感動作品、というがダメでした。
私の学校は、図書館で、低学年までが借りられる本、中学年までで借りれる本がなど分かれていて、低学年の時の貸出カードは白いままでした。
だから、本の読めないお馬鹿さん扱いでした。
実際は、1年生の頃から高学年向きの小説や図鑑など図書館内で読んでいたのですが。

母は読書家で、またコレクターでもあります。
自分の部屋の四面を本棚で埋め、また本専用の部屋も持っていた人でした。
小説だけでなく、マンガも膨大な量を持ってました。
単行本もたくさんありました。そしておそらくですが、当時出ていた少女漫画誌はすべて増刊号含めて買っていたのではないでしょうか。
しかし、コレクターあるあるで、読まない雑誌もあります。でも買ってくる。
何ヶ月に一度は見直して、丁寧にスクラップブックを作って処分してましが、そのまま手付かずの雑誌もある。
私はそんな中で育ちましたが、保育園の頃はあまり本には興味のない子でした。絵本は嫌いだし。

小学生に上がった時、まず、いがらしゆみこのキャンディ・キャンディと、池田理代子のベルサイユのばらが与えられました。
なんでもいいので、本を読む習慣をつけさせたかったのでしょう。
キャンディ・キャンディは嫌いでしたが、ベルばらは好きです。いまだにその初版本を持ってます。

あとは、明らかに高学年用のギリシャ神話の本と、野尻帆影の星座の本。

読めない漢字だらけでしたが、これにはたいへんハマってしまい、何度も繰り返し読むようになります。

2年生の時、もう8歳になるのだからと訳の分からない理由で、マンガ雑誌の定期購読を勧められます。
当時は、子供にマンガを読ませるなんて、という風潮は強く、また大人になってもマンガを読むなんて、という見方も強い時代でした。
なかよしとりぼんが与えられ、どちらにするか決めなさいと言われました。
困惑しましたが、恋愛ものの多かったりぼんより、冒険ものの多いなかよしを選びました。

その時に連載されていた、星川とみの、地獄からの招待状に魅了されました。
確か、あさぎり夕が、きらら星の大予言を連載していたと思います。占いに対する興味はこの頃に植えつけられたのでしょう。

母はコレクターであるので、小説などは初版、希少本もあったので、絶対触らせてくれなかったですし、一度誤って触った時
「ここにはお前より大事な本があるから!」
と、ぶたれました。

でもマンガはオープンで、好きな時に貸出が出来ましたし、母が見繕ってお下がりをくれたりします。
新しいマンガは欲しがれば買ってくれるし、内容に制限はありませんでした。
10歳の時に、パタリロ!がアニメかされたのを記念に、当時の全巻プレゼントしてくれましたが、10歳児に与えるのはどうなんでしょうね。
私はまたはまり、母は単行本が出るたびに買ってくれました。
花とゆめもありましたが、私は基本的に単行本派で、まとめられるのを待ってました。

母は所謂24年組のマンガ家を崇拝していたので、竹宮惠子、萩尾望都、山岸涼子、木原敏江など揃えてました。

なぜか小学生の頃は萩尾望都が読めずに、それ以外の作家を読んでました。
山岸涼子の妖精王はとても素敵でしたが、上原きみ子の舞子の詩が好きだったので、アラベスクもよかった。メデューサ、天人唐草やキルケーは難しい。
竹宮惠子のアンドロメダストーリーズはとても好きで、また、細川智栄子の王家の紋章を与えられていたので、ファラオの墓も好きでした。風と木の詩はよくわからなかったですね。何してるんだろう?と。地球へ…は、今でも苦手です。
木原敏江は銀河荘なの!がお気に入りでした。摩利と新吾はやはり意味がわからない。
5年生くらいの時に、愛田真夕美のマリオネットが与えられて、結構ハードな世界観ですが、気に入りました。

図書館ではポーやコナン・ドイル、江戸川乱歩のジョブナイルや、四屋怪談などの怪談を好んで読み漁り、だんだん自分の嗜好がわかってきました。

5年生からお小遣いを与えられ、自分で本を買うことが出来ました。
最初に買ったのは、水木しげるも参加していた、妖怪図鑑、といった本であったと思います。
それからほとんど怪談、オカルト、心理学の本を買うようになってきます。
そのどれかの本で、ムーが紹介してあり、憧れたものです。

自分が買う活字の本にも制限はかけられませんでしたが、母が買うと言った本はことごとく趣味に合いません。
若草物語や、小公女ならまだ受け入れますが、感動作品は嫌いで、オカルト心理学の世界ととか読んでる私に、ベートーヴェンやナイチンゲールの伝記を勧めてくるのです。ありえない。
読んでみたかった、シェイクスピアやケルト神話などの本は退けられます。
まあ、蔵書にあったので、いつか私に払い下げる気でいたのでしょうが、言われなければわかりません。

そんな偏った読書生活は、中学生になって変わります。
当時部活に忙しくてしていて、少しマンガから遠ざかりました。
そうした頃、母は後の、弟の父となる男と付き合いだし、家に居なくなりました。

少し不安定になった私は、読書に癒しを求めました。
小学生の頃読めなかった、萩尾望都や佐藤史生、吉田秋生などがすらすら読めるようになります。

そうして、母のコレクションルームのダンボールをあけて、無作為に読みまくりました。

その中に、あったのですね。
JUNE。
今で言うBLの先駆者とも言える本です。
それが大JUNEから小JUNEまで、創刊号から最新刊まで全てありました。
経験的に、ダンボールに入っている本は、母の読まない本です。
予想ですが、創刊号からしばらく、竹宮惠子が表紙を描いていたのでとりあえず買ってみた。そのうち小説JUNEも刊行されたので収集してみた、そんなところだと思いました。
手垢もついてない美本でしたし、後で聞いたらその通りでした。

それまでもマンガで、同性愛を扱ってるものに触れたことはありますが、丸一冊男同士の恋愛の本はには驚きました。

そこから、吉原理恵子、榊原姿保美、森内景生など、まず伝奇的な作品に溺れました。
また、中島梓を美少年学入門や小説道場で好きになり、そこで栗本薫名義で真夜中の天使という作品がある事を知ります。
読んでみたいなー、と思っていたら、ありました。

母は、続編的な作品、翼あるものが竹宮惠子のイラストでそれを買い、繋がりで真夜中の天使も買ったんだろう。そうでした。読んでもなかった。

衝撃でした。

こんな作品があるのか?と思いました。
まだ14年でしたが、人生の根底を揺るがす作品でした。

それから、のめり込むようにJUNEのバックナンバーを読み漁り、別の小説も読みはじめました。
1日に2、3冊は読んでました。お小遣いが空になりますね。
そうして、さらに母のマンガコレクションを読む。子供の頃読めなかった作品が、頭にすらすら入ってきます。
母の持って小説はいまいち趣味が合わなく読みませんでしたが、ギリシャ神話、ケルト民話集、エッダ、アイルランド妖精譚など、読み耽りました。

栗本薫も買い出しました。
時の石、レダ、魔界水滸伝、ぼくらシリーズ、伊集院大介シリーズ、トワイライトサーガ、キャバレー…流石に全部は覚えてません。
魔界水滸伝にはハマりました。特に8巻が好きで、30回以上は読み返したのではないかな。
グイン・サーガはダメで、3巻ほど買って読むのだけど、読めなくて処分する、また買ってみる、を何回か繰り返して、読むのをやめました。

のちに、早川書房の雑誌ハイ!に掲載された外伝、マグノリアの海賊は読みましたが、ピンとこなかったな。
私はどうも、一部作品を除き、異世界ファンタジーはダメなようです。

言葉を読むのが好きになった私は、詩も読むようになります。
詩に触れていなかった訳ではないですが、小学生の頃の時の授業がつまらなすぎて、積極的には読んでなかったので。
北原白秋がとても好きで、断章、金の入日に繻子の黒は今でも誦じている部分があります。

そうして、やなせたかしが監修していた、詩とメルヘンという雑誌に出会い、私は一気に詩の世界にも虜になってしまいます。

小説ももちろん美しいですが、詩は短い分、言葉が研ぎ澄まされているように感じました。

我が家は独特の教育方針で、マンガ、アニメは全く制限がなかったのですが、何故か音楽番組を見ることは一切禁止されていて、詩、詞、というものに疎かった。
それが大量に読みはじめ聴きはじめ、染み込むのが間に合わず溢れるようになっても読み続けました。

そして今も、小説、マンガを読み続けてます。

子供に最初に与えるのは活字が好ましい。活字が読める子はマンガの理解力も高いが、その反対は難しいから、と書いてあるのを読んだことがあります。

私はなら、活字の本質を理解してないのかも知れないです。

でも、感情が動く、美しいと感じられるのなら、難しい事は抜きにしてもいいのではないかと思います。

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