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彷徨える哀愁

あらゆる動物の中でも、人間は一番厄介な動物なのかも知れない。
何故ならば、言語を持っているからだろう。
時に言葉は壁となり、気がつくと互いが傷つき合う関係に発展する。
そうなると言葉はもはや無意味な存在となり、どちらかが事実を受け入れない限り共存という二文字は存在し得ない。

人は勝手に線(ルール)を引き、身勝手に動き回るから容易に関係を保てないのだろう。
そんな中、ある映画を鑑賞していた。
原題は「The Hunter's Prayer」、邦題は「ザ・ボディガード」だ。
邦題で説明すると、かつてケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが共演した「ボディガード」を彷彿とされるが、紹介する作品はかなり程遠い物語だ。
どちらかというと、リュック・ベッソン監督作品の「レオン」に近いと思う。

簡単な概要を説明すると、大きな闇組織が金絡みである家族を殺害する。
本来であれば、家族の長である父親に対しスイスに留学中の一人娘を脅し、父親が闇組織から着服した金を奪おうと考えていた。
ところが物事はあべこべとなり、留学先の娘以外の家族が殺されてしまう。
次に組織が傭兵に下した命令は留学先の娘を殺す事だ。
この中に主人公であるサム・ワーシントン演じるルーカスも含まれる。
だが、ルーカスに迷いが生じる。
いざ娘を前にすると簡単に殺す事ができない。
それどころか、娘の前に立ちはだかる数名の傭兵達は容赦なく銃口を向ける。
迷いが覚めたルーカスは傭兵とは反対に娘を助けてしまう。

実のところルーカスには家族が存在する。
しかも一人娘が存在するのだが、実在の娘とは会話もした事がなければ会った事すらない。
写真でしか確認した事がなかっただけに、ルーカスが娘に想う気持ちは人一倍強かった。

気がつくとルーカスと標的にされた娘、名前はエラである。
エラと共にルーカスは組織から遠ざかる様に逃げまくるのだ。

エラ自身も最初はルーカスに対して心を開かなった事もあり、疑いの眼差しを向けていた。
道中、何度か逃げたりもした。
しかし、エラは良かれと思い電話を使い警察に助けを求めた。
良かれと思った事が裏目に出て、闇組織内に逆探知され反対に命を奪われる羽目となる。


一方のルーカスは一瞬だけエラを殺害しようと試みる。
その理由とは、闇組織のボスであるアディソンから家族を殺すと脅迫を受けていたからだ。
だがルーカスの迷いが解かれ、改めてエラと共に組織から遠ざかる。

組織はそう簡単に諦めていない。
アディソンはルーカスに懸賞金を賭け娘と共に殺害を命令する。
そんな中、ルーカスとエラは移動中に命を狙われる。
アディソンが仕向けた傭兵は腕利きのスナイパーだった。

ルーカスは致命傷までは負わなかったが、足を負傷してしまう。
限られた武器しか所有していなかったルーカスだが、元軍隊で鍛えられた肉弾戦で相手を仕留める。
ルーカスの目の行き届かない場所でエラは他のスナイパーから標的にされる。
殺害される一歩手前で阻止する事に成功する。

足を負傷したルーカスは数少ない信用できる仲間とコンタクトを取る。
そこでダニーという女性の仲間がルーカスの傷の手当てを行う。
ルーカスは安堵するも、この先もそう簡単には物事が進まない。
実はダニー自身もアディソンから命じられた懸賞金欲しさにルーカスに近づいたのだ。
更にダニーはエラを誘惑し、ルーカスは本当は殺し屋であると吹きかける。
この場から去った方が身の為だとエラに告げる。

エラは迷う事なくルーカスの元から離れる。
傷の手当てが済んだルーカスは辺りがきな臭いと感じる。
目の前にエラがいない事に不審に感じたルーカスはダニーに尋ねると、反対にダニーはルーカスの言葉から逃げる様に薬(ドラッグ)を勧める。
元軍人のルーカスはPTSD(心的外傷)を患っており、日常生活を保つに薬を乱用していたのだ。
そこに漬け込んだダニーはルーカスに薬を勧めたのだ。
余りにしつこくダニーが薬を勧める事を不審に感じたルーカスは、力づくで薬の注射針をダニーに向け事の真相を問い正す。

するとダニーはあっさりと答えた。
エラはこの場から去り、外ではスナイパーが命を狙っていると。

ルーカスの素早い感が働き、間一髪でエラはスナイパーから命を奪われる事から遠ざかった。
その足で二人はルーカスの隠れ家に向かう。
綺麗に整頓された部屋とは程遠い環境ながら、エラは壁に貼られた幼い少女の写真に目が止まる。
一方のルーカスだが、キッチンに入り薬による禁断症状が出てくる前に注射器を体に刺そうとしていた。
その場に居合わせたエラは、こんな事は正気ではない。
娘さんと会いたいのであれば、現実から逃げずに前進しなければとルーカスに問いただす。
流石のルーカスも幼いエラの言葉が心底から沁みた様で、薬から断とうと努力を重ねる。

やがてエラは、アディソンが家族を殺害した事に気づく。
薬から断とうと苦しむルーカスに向かいアディソンを殺害してほしいと願い出る。
報酬は家族の遺産を受け継いだので支払う事は可能だとも告げる。

ルーカスは苦しみながらエラを直視する。
エラの目の奥に浮かぶ真意は事実だと悟る。
以前にエラはルーカスに対しこんな事を尋ねた。
「どうして、殺し屋になんかなったの?」
その問いかけにルーカスは重たい銃をエラに渡し、安全装置を外した状態でルーカス自身の胸に当てる。
「あとは撃つだけだ、簡単だろう」とルーカスは答えた。
その後にルーカスは、「ただし、人を殺したら後戻りはできないぞ」と念を押す。

こういった事柄がエラの考えから遠ざかったかは判らないが、禁断症状と闘うルーカスを尻目に、銃を手に取ったエラはアディソンの居る場所へと向かう。

当然だが、エラは安易にアディソンを仕留める事ができなかった。
この先は作品を鑑賞して欲しい。
結末はどうなるか、いや、結末よりも過程にこそ事実が蠢くと思う。


物語は簡素でごくありふれた内容だが、中身は重厚でよくできた脚本となっている。
因みに主演のサム・ワーシントンは前回紹介したクライヴ・オーウェン同様、ダニエル・クレイグと007のジェームズ・ボンド役の候補として最終選考まで残った人物だ。
アクションはもとより、ルックスや体型を見るとハードボイルド向きの俳優だと思う。
もし、仮にサム・ワーシントンがジェームズ・ボンドを演じていたら…
クライヴ・オーウェンとは対照的なルックスなので、どちらかというとダニエル・クレイグ寄りのジェームズ・ボンドだろう。
妄想だけでも、そう考えるのも楽しいものだ。

興味を持った方々に是非ともレッツ!郷ひろみ!だな♪

きゃっ☆

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