猫と猫じゃない私。
「あ、猫だぁ」
無邪気さが混ざる甘い声を吐息のように溢ぼす。少しひんやりした春の夜に、恋人が猫を見つけた。猫に話しかける恋人。その恋人に、猫があまり得意でない私が話しかける。
「すごい、嬉しそうな声だ。」
美味しいものを食べている時の声に似てるな、と思いながら言った。
「うんー、この辺りにはあんまりいないから。」
猫と私とのふたりに話をする恋人。私は「そうなんだ。」と言いながら彼女と交際を始めた頃までのこの半年強を思い返す。そして「私はそんなに嬉しそうに呼ばれたことないよ。」