食べて

道端で見つけた私の宝物たちです。

食べて

道端で見つけた私の宝物たちです。

最近の記事

  • 固定された記事

かりねこスペース一覧

借りてきた猫ズ スペース一覧表 個人的なものですので何卒。 2022年群像の夜「スワロウ」 20220722 群像の夜「形のない骨」 20220827 企画「第3回ラーメンズで死ぬ日」 20220903 かりねこラジオ「オツキミ」 20220910 かりねこラジオ「第2回ラジオ配信ごっこ」 20220914 群像の夜「リリーのすべて」 20220917 かりねこラジオ「第4回」 20221014 群像の夜「ブルーアワーにぶっ飛ばす」 20221

    • イヌのツブテ

       家の窓際で風に撫でられて1日を過ごしていた。北向きのその部屋は陽の当たりが悪く、晴れの日でも薄暗い。光とは呼べないような柔らかいグレーの明るさを感じながら、連続したスクエア柄の少し埃っぽいレースカーテンが揺れているのを眺める。私の家は古い平家の一軒家で、この部屋も畳だ。トタン壁の小さな工場が並ぶこの田舎町にぴったりな、インテリアに無頓着な極めて庶民的な家だ。ただ、何故か私はこの場所に洋画のような美しさを感じ、排他的な居場所を見つけている。彼らがこの家に来たのはそういうものが

      • 「日記」と数ヶ月のまとめ。

         年季の入ったリビングテーブルに、おかずがこんもりした大皿を並べる。今日の献立は、菜の花と豚肉の柚子胡椒塩胡椒炒め、ねぎがたっぷり入った卯の花、豆腐入りのひじき煮、生野菜サラダ、合わせのお味噌汁、それに昨日の残り物が2品。私好みのラインナップだ。弟がひじき煮を山盛り取り皿にのせて、どんどん口へ運ぶ。「豆腐がいい仕事をしている。」と、「うまっ、うまっ。」と鳥のように鳴きながら。  その豆腐は、下茹でをして、水を切って、きつね色に炒めてある。塩で茹でると、浸透圧で水が抜けるのだ。

        • +14

          2024.3.らくがき 絵

        • 固定された記事

        かりねこスペース一覧

          +17

          2024.3.らくがき 写真

          2024.3.らくがき 写真

          +16

          「確かなもの」と10月のまとめ。

           伸縮棒ネットの口を広げると15、6個の栗がごろごろと転がり落ちた。恰幅がよいスモーキーな赤茶色。まさに栗色だなぁ、と静かに思う。  半袖のTシャツにさまざまなカーディガンを着て緩やかに下がっていく気温に対抗していたが、今日は箪笥の奥からトレーナーを引っ張り出した。クリーム色の袖から今度は私が腕を出す。埃っぽさにひとつの秋を感じながら産直へ向かった。久しぶりの店内はどっさりと秋が敷き詰められている。私と、土地で繋がる人々が用意した野菜や果物には、スーパーのそれらとは違いどこか

          「確かなもの」と10月のまとめ。

          10月のらくがき。

          自分のためのアルバムです。 花はいいですね。 花 2023.10.07. フジバカマ 2023.10.14. リンドウ ブルニア フジバカマ 2023.10.14. リンドウ フジバカマ 2023.10.24 リンドウ(生け直し) 2023.10.28 キク アリアム リンドウ 2023.10.28 リンドウ ブルニア 絵 2023.10.07. 藤袴(抽象画) 2023.10.15. 竜胆 2023.10.24. 菊

          10月のらくがき。

          お菓子便 味一覧

          栗紅茶 手作りの栗餡と紅茶茶葉 栗餡3種全てに言えることだけれど ちょっと栗が少なすぎたかなあ。 私が思っていたよりも風味が薄い… もっとガツンと感じたかった…! 栗林檎 栗餡と、ブランデー漬け林檎のソテー 火を通しアルコールは飛ばしてます。 林檎は去年11月に青森で買った紅玉です。 秋の組み合わせだね。 栗コーヒー あまりにも栗餡が多すぎて 家にあるもので追加で用意した味。 インスタントコーヒーを混ぜました。 ちょっと良い牛乳と食べるのが良い。 紅茶フルーツ 初夏に

          お菓子便 味一覧

          「秋雨」と9月まとめ。

           私の後ろにぶら下がるモダンなシャンデリアの光が窓ガラスに映っている。葉を順番に赤く染めている桜の樹がちょうどそこにいて、真鍮のベルを飾られているようだ。今日は風がない。植物たちはおとなしく、時々雨の滴りに頷くだけだ。私もそういう大人になりたかった。と、今週のうまくいかなかったことを思い出す。ついでに先週のも。あれも、これも。それも、どれも。ため息でちょっとだけ自分が小さくなるのを感じる。赤ちゃんのほっぺみたいに丁寧に焼かれた生地としゃんと角を持ついちじくを重ねたミルクレープ

          「秋雨」と9月まとめ。

          「循環する営み」と8月のまとめ。

           はたちを過ぎた頃までは出かける際に必ずiPodとイヤホンを持っていた。自転車で砂利道を、二両編成の赤い電車で街へ、免許を取ってすぐには夜通し高速を走ってどこまでも100キロも500キロも1000キロも先へ。自分のだいすきを詰め込んだ小さなアルミニウムがあればあっという間だった。それ以外にも、芸術、花、絵、お菓子、そこにしかない何か、など、あれや、これや。名前のつかない小さな粒のような私のすきが溢れて溢れて。あっという間をあっという間に過ごしていた。ただ大人になってから蹴躓く

          「循環する営み」と8月のまとめ。

          日記と7月のまとめ。

          ▷spoon朗読 「優に救われてるの、ほんとうに。」 「朝起きて、今日も無事生きてるなと思う。」 「普通がいちばん。そう思うようになったわ。」 太陽に手を伸ばす木々を横目に、助手席で祖母がぽつりぽつりと言う。  災害級の暑さをキャスターたちが警告する日々。うだるような暑さ。茹で上がるという意味もそうだが、音が、この日本の夏の暑さを表すのにぴったりの言葉だといつも思う。この1週間、雑草たちが灼熱の日差しに項垂れていた。彼らの水分が蒸発しているのだろうか、あたりには蒸した葉のに

          日記と7月のまとめ。

          「みそひともじ」と6月のまとめ。

           無彩色の薄いカーペットが吸収する足音。天井に届きそうな本棚の所々で生じる木板を摺る音。筆記具が机を滑る音。紙と紙が優しくこすれる音。それをめくる音。控えめな言葉の交差。弦を張るような少しの緊張に身を任せ、私はここにいる。通い慣れているはずなのに、不思議と浮ついた自分を見つけるのだ。しかし彼は対照的にこの空間の一部となっていた。例えば、ここは学校の図書室で、彼はそこに置かれた「分厚い本を捲る男子生徒」の絡繰人形で、毎日、この時間、象牙色に塗られたコンクリートの壁と窓際にもたれ

          「みそひともじ」と6月のまとめ。

          フィクション「敵」と5月まとめ。

           ここで明らかな私と彼の分岐点が生じる。私のグラスで不安定に重なっていた氷が身を挺して時間の経過を告げるも、その声に耳を傾けたのは私だけだったのだ。氷は有能で、彼は無能だ。そう思いながら、私はプラスチック製の細いストローを指先で摘み、グラスの底のアイスティーと氷だったものを一撫でした。氷はもう一度時間について声を上げた。彼の気の抜けたジンジャエールがグラスに汗をかいて足元を濡らしている。私の視線を追いかけて、彼は言う。 「ああ、思ったより甘くてさ。」 「そうなんだ。ジンジャエ

          フィクション「敵」と5月まとめ。

          逃げたけど、楽はしなかったんだ。

           夜の高速道路を走り抜ける帰り道。君は2ヶ月先の話をし出した。今日が終わる寂しさから次の予定の提案をしようとしてるのだろう。これはおそらく、私の真似だ。君が私の内側の輪郭を触れ始めた頃、私は車を車線変更しひたすらに走り出した。フロントガラスとサイドミラー、そしてバックミラーに視線を動かすことで、立体的な景色を脳内に組み立てた。運転に集中していることを言い訳に、耳を塞いだのだ。君の声は少し遠くに聞こえた。何かを言う君に私は気のない返事をし続け、この突き当たりを無意味に先延ばしに

          逃げたけど、楽はしなかったんだ。

          猫と猫じゃない私。

          「あ、猫だぁ」 無邪気さが混ざる甘い声を吐息のように溢ぼす。少しひんやりした春の夜に、恋人が猫を見つけた。猫に話しかける恋人。その恋人に、猫があまり得意でない私が話しかける。 「すごい、嬉しそうな声だ。」 美味しいものを食べている時の声に似てるな、と思いながら言った。 「うんー、この辺りにはあんまりいないから。」 猫と私とのふたりに話をする恋人。私は「そうなんだ。」と言いながら彼女と交際を始めた頃までのこの半年強を思い返す。そして「私はそんなに嬉しそうに呼ばれたことないよ。」

          猫と猫じゃない私。

          読書体験を得た。〜空の怪物アグイー感想付き〜

           ひょんなことから友人に連絡をした。その友人とは10年前に 交流があったと言うか、友達の友達のような、どこかですれ違う顔見知りみたいなそういう関係。私は彼のことをよく知らなかった。仲が良い悪いでは表現にならないほどに接点がなかったのだ。それでもなんとなく、ふと思い出して連絡をした。10年越しの彼はとっても面白かった。瞬時に「この人は、私が求める層を知っている人だ。」と感じ取り、ぐぐいぐい、と本を薦めてもらった。大江健三郎の「大江健三郎自選短篇」だ。嗅覚で本能的に行動し、即日に

          読書体験を得た。〜空の怪物アグイー感想付き〜