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コロッケとクロケット

ひさしぶりに地元のレストランでお昼ごはんをいただいた。いい天気だったのでテラス席はほぼ満席、いっぽう店内はガラガラだったので待ち時間なしで席に着くことができた。ありがたい。
 
ひんやりした風が吹いていても太陽が出ていれば絶対に半袖を着る!と心に決めている人が多いのか、その日も半袖やタンクトップやどこを見ていいやらわからない布少なめの服の人が町にあふれていた(七月中旬で最低気温は14℃、最高気温が23℃くらい)。
 
気苦労の多い一週間だった。ゆっくり過ごすことができる土曜は久しぶりだから嬉しくて、朝は寝床でだらだらと本を読んだ。朝食が遅かったので、昼時だったけどそんなに空腹じゃない。気分は鮭茶漬けとかざるそばだったけど、もちろんここにそんなものはない。ここは外国だから、ここにあるものを感謝しながらいただくしかない。
 
お好きな席へどうぞと案内された店内は薄暗い。メニューの文字は小さい。外国人をみて気を利かせて英語版のメニューを持ってきてくれることもない。でもオランダだからどのレストランでも店員は英語が通じるのがありがたい。なんとかメニューを解読して選んだのは、コロッケとポテトのセット。

これで11.50ユーロ。だいたい1780円くらい。

コロッケとポテトは、オランダ語では「クロケットとフリッツ」と言う。日本のコロッケと異なる点は、衣がやたらと頑丈なこと(噛むとサクッじゃなくてジャリッと鳴る)と、どの店で食べても中身はほぼ一緒なこと。どろっとしたクリームソースの中に牛肉の破片らしきものが含まれている。(マーストリヒトにあるクロケット専門のレストランには、専門にしているだけあって多様なクロケットがあった。)
 
日本のコロッケとオランダのクロケット、どちらが好きかと聞かれたら、迷いなく「日本のコロッケ一択です」と答える。サクサクの衣。じゃがいもの甘み。だけど、オランダのクロケットだって、量も(他のメニューに比べれば)ほどよいし、味も(謎なメニューを食べるのに比べれば)悪くない。
 
息子はハムとチーズのオムレツを注文した。日本のオムレツのような、美しく弧を描いたふっくらしたものは出てこない。初めて台所に立った子どもが頑張って作ってみましたと言われても納得できるくらいの、ハムとチーズと大量の卵を無造作に炒めたものが、食パン二枚の上にどんと積まれた状態で出てくる。え、どんなメニューにもお店のプライドとか思いを一応こめよう?とつっこみたくなる見た目だけど、息子は嬉しそうにしているから黙って見守る。まぁ、おいしければいいか。

コロッケもオムレツも、もとはフランスで生まれたらしいけど、行きついた国によってさまざまな進化を遂げている。自分の国のものが一番だと思うのは当然なことだけど、他の国のものも尊重して「それもありだよね」と思える心の余裕をもちたいところです。つくづく。

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