金色のゴミ
人魚姫らが金の延べ棒を手に掴むとき、それは相手を殴るときである。
なにせ、硬いから。
人魚姫も頑丈だけれど、そんな人魚姫のアタマをがきーんと割れる可能性が高い。不死の特性がある彼女らは死なないが、痛いものは痛かった。流血もするし、脳みそを割られたら中身だってこぼれる。一時的に。
海のソラからこれがキラリと落ちてくると、人魚姫は、もがきながら沈む人間などは無視して金色の塊を回収する。人間たちは人魚姫を見るかもしれないが、守銭奴、などと思うかもしれないが、死の直前の蜃気楼のような1幕である。そして人魚姫はべつに守銭奴ではなかった。喧嘩道具が欲しいだけ。ここは、童話のなかではないのだ。
沈む人間たちには目もくれず、人魚姫たちは金やら宝石やら、硬いものを集める。
それらは、決闘場におかれる。
人魚姫たちの決闘場に。
ここでなんやかんやと殴り合うのだ。ファンシーだとか幻想的であるとか美しさ、そんなものとは無縁の彼女たちであった。
まぁ、現実を生きるとは、そういうことだ。
END.
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