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記事一覧

ハッシュタグの、隙間ーー『#ハッシュタグストーリー』(双葉社)

ハッシュタグでつなげられた四つの短編。麻布競馬場「#ネットミームと私」、柿原朋哉「#いに…

海老原豊
5日前
2

まじめにゆるく考えるーー東浩紀『ゆるく考える』(河出文庫)

(シミルボン2019年11月20日原稿の再録) SNS、とくにTwitterの可能性を信じていたころの連載…

海老原豊
6日前
7

「文化」は誰のものかーーカロリーヌ・フレスト『「傷つきました」戦争』(堀茂樹訳、…

筆者はフランスのジャーナリスト、評論家、映画監督。『シャルリー・エブド』にコラムも寄せる…

海老原豊
6日前
7

イノベーションは個人が起こすのではなく集団脳の累積的文化進化の結果である--ジョ…

面白い&分かりやすいので下巻もサクサク読めたぞ。分厚いが註がたくさんついているので、思っ…

海老原豊
13日前
4

小麦帝国の侵略--ジョージ・ソルト『ラーメンの語られざる歴史』(国書刊行会)

(2019年10月15日シミルボン掲載の再掲) 本書は今や日本の国民食となったラーメンが、どうや…

海老原豊
2週間前
3

ノンネイティブ・ロールモデルの不在--鳥飼玖美子『本物の英語力』(講談社現代新書…

(2019年10月11日シミルボン原稿の再録) つい先日、某有名ミュージシャンが、「日本人は6年…

海老原豊
2週間前
5

心霊写真としての自撮りーー大山顕『新写真論』(ゲンロン)読書メモ

カメラは撮る者と撮られるものに亀裂を入れる。あいだにあるのはレンズ。撮影者は神様のように、世界を切り取って提示する。撮影者の姿はできあがった写真には映り込まない。撮影者の特権性は撮影者の透明性である。むかしのカメラはテクノロジーとして未成熟であり、そのために使用者に習熟を求めた。筆者はスマホがカメラの完成形だと言う。スマホにはレンズ越しに世界を見る経験が必要ない。スマホのスクリーンに映ったものをスクリーンショット(スクショ)する。スマホは写真からカメラの特権性を剥奪した。誰で

YouTuberの遺伝子はあるのか?--安藤寿康『遺伝マインド』(有斐閣)書評

日本における双子研究の第一人者の筆者・安藤寿康による、遺伝研究の概説書である。「遺伝子研…

海老原豊
3週間前
2

人類のデバッグは可能か--ダミアン・トンプソン『すすんでダマされる人たち』(矢沢…

ジャーナリストのダミアン・トンプソンはデマ、フェイクニュース、陰謀論をひとまとめに「カウ…

海老原豊
3週間前
3

見えないものへの不安と透明化への欲望--日本SF作家クラブ編『ポストコロナのSF』…

(2021年7月13日シミルボン掲載の再録) いまやすっかり古くなった感もある言葉「新しい生活…

海老原豊
1か月前
3

神話国家日本の作り方--辻田真佐憲『「戦前」の正体』(講談社現代新書)評

「戦前(の日本)」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。私は太平洋戦争末期の暗い苦しい時代を…

海老原豊
1か月前
5

読んでも読んでも啓発されない自己ってなーんだ-ー牧野智和『日常に侵入する自己啓発…

(2022年3月13日シミルボン掲載の再録) 書店にいくと自己啓発コーナーを目にする。私自身は…

海老原豊
1か月前
7

神様の苦悩--野崎まど『タイタン』(講談社タイガ)

(2020年9月11日シミルボン掲載の再録) 時は2205年。人類はあらゆる仕事から解放された。そ…

海老原豊
1か月前
7

私たちがWEIRDである理由--ジョセフ・ヘンリック『ウィアード 上』(今西康子訳、白揚社)

上巻を読んだが、面白すぎるぞこの本。メモ的にわかったこと・考えたことを書いていく。 「ウィアード」とはWEIRD「風変わりな」を意味する単語だが、筆者はWestern(西洋), Educated(教育のある), Industrialized(産業化された), Rich(裕福な), Democratic(民主的な)の頭文字をとった人々のことを、指している。心理学などで、「人間の本性」として抽出された心理的傾向が、このWEIRDな人々にだけ見られるものではないか? というのが筆