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読書記録:私の初恋相手がキスしてた3 (電撃文庫)入間 人間 

【夏の幻の様な不確かな繋がりの中で私達が選んだ物】 



【あらすじ】

同居から始まる三角関係ガールズストーリー、ついに完結。


「というわけで、海の腹違いの姉でーす」

女子高生をたぶらかす魔性の和服女、陸中チキはそう言ってのけた。

姉妹だと知っていてお金で買っていたんだろうし、海は受け入れてシスコンまっしぐらだし。

これは、手遅れの初恋の物語だ。私と水池海。この不確かな繋がりの中で、私にできることはなにかあるのだろうか。

Amazon引用



登場人物紹介


同居から始まった三角関係に終止符を打つ物語。 


そもそも、始まりから不健全だった。
各々の思惑の元に集った彼女ら。
海を誑かす魔性のチキ。
それを受け入れてしまう海。
そんな二人を見ていると、心に疼くような痛みが走る高空。
全員が納得出来るハッピーエンドはあり得なくて。それぞれが自分本意に相手の事を省みずに欲望のままに動くしかない。
不確かな繋がりの中で、ようやく吹っ切れた様に歩み始めた彼女ら。
三角関係を締め括る、夏の終わりが何とも郷愁的で。
恋の切なさ、悲しさを越えた拗らせ方を果たす。
そんな中で、気付いた事。
愛情は金で買えるかもしれないが、それは、酷く虚しくないだろうか?
相手にとっては、あなたに興味があるのでなくお金の無心にする魂胆がある関係。

三人に共通しているのは、家庭からの愛に恵まれず
希薄だった事。
それを埋めようとして、不確かな曖昧な関係を育んだ。
醜悪な三角関係を繰り広げながら、もはや出遅れた恋愛が齎す悲喜こもごも。

寝取られて、心を奪われて脳が破壊される。
一番初めに優しさをくれた者に懐くように、間違っていても、変えられない末路がある。

情緒をぐちゃぐちゃに蹂躙しながら、己の欲望のままに選びとった愛のいく末の景色。

その結果、どういう景色が待っているのか?
まずはこの作品のタイトルをもう一度おさらいしておきたい。
「私の初恋相手がキスしてた」。
それは既に起きた事、過去形。
ではここから、空にとっての勝ち目というのは何処にあるのだろうか。
ここまで言ってしまえば、もう答えは察せられるかもしれない。

判明したシホと海の意外な関係。
それを理解しても尚、彼女は既に知っていたと妖しく、どこかからりと微笑んで。
心を揺らす海に何か不都合があるのか、と問いかけ。
海はその関係を受けいれて、新たな関係として姉と言うものを加えた事でシスコンまっしぐらに突き進んでいく。

そんな彼女を見ながらも結局は何も出来ず。
ふとした瞬間の逢瀬を重ねたり、三人で出かけたり
何でもない関係の上で。
積み重ねていくあやふやな時間。
その中、ふと海は将来についての考えを漏らす。
高空にとっては寝耳に水な考え方を。 

それはシホに愛される自分でいるうちに自分を終わらせるという事。
シホという存在に自分の全てを捧げているからこそ選べる、傍から聞いてるだけなら馬鹿じゃないかと言いたくなる答え。
だが難儀な生き方をしてきたからか海はこれ以外の
選択はないと、どこか心に決めたように宣う。

止める間もなく、海は高空達と暮らす家から去り、シホの元へ走り。
引き留める事も出来ず、見送る事もなく。
消化しきれない思いを抱えながらも、時間は過ぎていく中で。
シホからの招きに応じて、彼女達の元を訪ねた高空は、彼女の好みに応じて自分を変えた海と久々の再会を果たす。

気が付かない間に、自分の知らない怪物性を開花させていた彼女を見て。
自分の中で、何かが折れる。
心が墜落して、初恋の想いは何処か遠くへ飛んでいく。

そして、後輩や謎の宇宙飛行士との一瞬の邂逅の先に。
もう一人の怪物が目を覚ます。
悪に触れ、また悪へと気が付かない間に羽化していくのだ。

これは歪な愛の物語。
見送って手を振って、自分本意に選び取って、歩き出す愛の物語。
最後まで情緒をぐちゃぐちゃにされた果てにノスタルジックな感傷が胸を突き刺す。

終わったはずの夏の地平潮騒が何処からともなく、聴こえて来るのだ。









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