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読書感想:隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない2 (ファンタジア文庫) 著餡月

【普通になりたい君がようやく見つけた本気になれる物】 


 

【あらすじ】
誰もが恋した元アイドルの、はじめての恋。



元アイドルのミルを“普通の女の子”にプロデュースする蓮は、次のステップは「これからのミルらしさを見つけること」。夏休みを共に過ごし近づくミルとの距離。一方で同級生の琴乃は蓮の変化に揺れていて!?

Amazon引用


元アイドルのミルを普通の女の子にするべく自主制作映画を撮り始める物語。


アイドルとは、象徴として生きねばならず、その期待がどこか重荷になる。
元アイドルのミルも、元を正せば、ごく普通の女の子。
そんな彼女の自分らしさを取り戻すべく、琴乃と冬華の力を借りて自主制作映画を撮り始める蓮。
挫折と失敗続きのその過程の中で、何度も互いの想いが行き違い、衝突を繰り返した。
しかし、そんな艱難辛苦を乗り越えた時に本気が詰まった夢の結晶として。

ミルは蓮への想いに気づきながらもはじめて抱く恋心に戸惑っていた。
新たなミルらしさを見つける為、蓮はミルと共に夏休みを過ごす。
プール掃除や、小旅行に花火。
ありきたりで、しかしかけがえのない思い出は一つずつ増えていき、彼らの青春を彩る宝石となる。

一方、同級生で親友の琴乃は、蓮の変化に揺れていた。
変わりゆく蓮との関係性に戸惑い、揺れる想いを抱えながらも。
遂に念願の映画完成に伴い、それぞれ彼女たちの蓮への想いが発露され、それに対して蓮は誠実に答えを出す。

琴乃のミルに対しての憧れと嫉妬、伝わらない蓮への恋心、色々な想いを全て受け止めて。
全員が全員、きちんと自分が本気になれる物、自分にとっての本物を探して追いかけて。
いつの間にか手に入れて、自分にとっての価値や何者にも縛られない、あるがままに好きであるという感情をようやく掴んだ。

蓮の変化、という物に心穏やかでいられる冬華ではなく。
そして同時に琴乃もまた心揺らさぬ訳がない。
彼に気付かれぬだけで、彼の傍で彼を見つめる事で、見つけていた気持ちが、いつしか憧れとなり、手の届かぬ物になっていく。
その事実が心に嵐を起こしていく。

期末テストも終わり、夏休みが始まる中。
今まで映画を禁止していた反動で四日もの徹夜をするという若者だからこその愚行の末。
見ているだけじゃ物足りないという思いの元、蓮はミルと琴乃に声をかけ。
ミルが見つけてきたコンテストに応募する為に、ミルを演者、琴乃を脚本として自主製作映画作成に挑む事となる。

そう、最初から決着はついていた。
焼け跡を更に焼いても、既に焼き付いた跡は消えない。
そして蓮とミルは、互いの心を既に焼き合っている。
もうあなたなしじゃいられない、君じゃなきゃダメみたい。
だからこそ、その結実は必然。
ありふれた、だが最幸の結果なのだ。

映像作りと平行して本当のミルを探す蓮。
その一方で押し付けられた人物像に不満を溜め込む琴乃。
そんな琴乃の不満の爆発をきっかけに、それぞれの想いをぶつけ合って確かめ合った友情と本気で作りあげた映像が、恋心を昇華させていく。

確実に積み重なってゆくかけがえのない思い出達。
ミルと出会ったことで蓮もまた確実に変わり始めて。
彼をずっと近くで見てきた琴乃や、彼の変容に気づいてしまう冬華の切ない想いを受け止めて。

たとえ、恋が実らなくても、彼女達が自分の幸せを自分の手で実らせる。
そして、輝くアイドルから普通の女の子になった彼女が自分の居場所を見つけ出す、最高のエンディングを迎える。
一度きりの青春群像の中、その導き出した幸せな結末が。

彼らの未来と行く末を照らし出すのだ。






 



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